2023年1月21日土曜日

敵基地攻撃で自滅招いた日本 9条の力で「戦争前夜」阻止を 笠原十九司さん

 しんぶん赤旗が「2023 焦点・論点」のコーナーで、歴史学者(中国近現代史、日中関係史)の笠原十九司・都留文科大学名誉教授に日本の侵略戦争の歴史とその教訓について聞きました。

 笠原氏は、いま岸田首相が進めようとしている敵基地攻撃能力の保有大軍拡は、無惨な自滅の道を歩んだ戦前の誤りを繰り返すもので、戦争の歴史に無知な首相と批判し、日本に敵を作らせているのは米国であり、台頭してきた中国を封じ込めるための米国の戦略に日本は無批判に従属しているのであると指摘しました。岸田政権は危険な暴走政権だとも。
 笠原氏は、かつ中国・南京への渡洋爆撃で開始した対中侵略と、それに続く真珠湾基地攻撃で開始した対米戦争の二つの暴走の歴史を振り返り、敗戦後新しい憲法をつくる際、当時の幣原喜重郎首相が提案した「戦争放棄」「軍備の廃止」に連合国軍最高司令官のマッカーサーが共鳴し憲法9条の原案が出来た経過を明らかにしました。
 そして日本は9条の理念に立って平和外交をすすめ、東南アジア諸国連合や東アジアの諸国とにの友好関係を深めて平和と安全を守らなければならないと述べました。
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2023 焦点・論点 侵略戦争の歴史とその教訓
敵基地攻撃で自滅招いた日本 9条の力で「戦争前夜」阻止を
         歴史学者・都留文科大学名誉教授 笠原十九司さん
                       しんぶん赤旗 2023年1月20日
 「新しい戦前になるかもしれない」。岸田文雄政権が踏み出した敵基地攻撃能力の保有、GDP2価をめざす大軍拡に危惧の声が広がっています。日本が侵略戦争に突き進んだ歴史の教訓からどう見たらいいのか、歴史学者(中国近現代史、日中関係史)の笠原十九司都留文科大学名誉教授に聞きました。(伊藤紀夫)

  かさはら・とくし 
    1944年、群馬県生まれ都留文科大学名誉教授。学術博士(東京大学)。著書
    は『南京事件』『日本の治安戦-日中戦争の実相』『海軍の日中戦争-アジア太
    平洋戦争への自滅のシナリオ』『日中戦争全史(上・下)』『憲法九条と幣原喜重
    郎』など多数

 -13日の日米首脳会談で岸田首相はパイデン大統領に「専守防衛」をかなぐり捨てる安保政策の大転換を表明し、米軍の指揮下で自衛隊が敵基地攻撃で攻めこむ協力に踏み込みましたね。
 岸田政権は危ない暴走政権です。日本に敵を想定してつくらせているのは米国です。台頭してきた中国を封じ込めるための米国の戦略に、日本はどっぷり従属しています
 最も危険なのは、敵基地攻撃です。いまの世界では、敵基地攻撃はミサイル攻撃、先制攻撃です。最悪の場合は核ミサイル攻撃につながります。こんな危険なことを無節操にどんどん進めています。それも一片の閣議決定で、国会の審議もしないで決めて、日米首脳会談で米国との新たな軍事協力まで宣言してしまう。その危険性に国民が早く気づいて岸田政権を倒さないと、日本は危うくなる。日本の滅亡にもつながる事態だと憂えています。

 -歴史の教訓から今回の事態をどう見ていますか?
 アジア太平洋戦争は、日本による敵基地攻撃から始まりました。日本は侵略戦争で、二つ敵基地攻撃をやっています。第1は1937年8月15日からの南京渡洋爆撃で、第2は41年12月8日の真珠湾攻撃です。
 戦争の前史は、軍備増強・拡大で、そのために仮想敵をづくることです。戦前、日本社会は天皇の統帥権を利用した軍部が強権支配をした時代でした。軍人は特権を享受するためにも軍備を拡大して強大な国になるという幻想を国民に与え、莫大な税金を軍事費につき込んだのです。
 日中戦争では臨時軍事費があり、戦争が終わるまで続きました。通常の軍事予算もあり、両方を使って軍備を拡張したのです。岸田政権がやっている大軍拡・増税も同じ論理です。
 戦前、陸軍と海軍は勢力争いで対抗して軍拡競争をし、陸軍がロシア・ソ連を仮想敵とする北進、海軍が米国と英国を仮想敵とする南進の方針をとっていました。36年8月の国策変更までは北進論という陸軍中心の戦略でしたが、海軍の南進論も入れて南北併進という北にも南にもいく戦略に変更しました。
 南進論を採用された海軍は、軍縮条約で軍艦が制限されて航空兵力中心の時代だとして、米国を仮想敵にIして航空兵力を強化していきます。開発を進めていた長距離爆撃機が36年にでき(九六式陸上攻撃機)、南洋諸島の陸上基地を使って米国の基地を攻撃することが可能になります。
 日中戦争の発端となった37年7月の盧溝橋事件は、海軍にとって長距離爆撃機一を使える格好のチャンスでした。しかし、陸軍は華北に戦闘をとどめようとし、同年8月に上海で和平交渉が始まります。その流れを阻むために海軍は上海陸戦隊の中隊長を犠牲にした謀略まで行い(大山事件)、反中国感情をあおって、南京渡洋爆撃に踏み出し、日中全面戦争に突入していきます。
 大虐殺が行われた南京攻略戦の前に戦略爆撃、まさに敵基地攻撃があったのです。海軍は40年に完成した長距離爆撃機を護衛できる高性能の戦闘機ゼロ戦も使って連日、都市爆撃を行いました。国際的な強い批判にもかかわらず馬耳東風で強行した都市爆撃は、対米戦に向けたパイロットの実戦訓練だったのです。
 アジア太平洋戦争の開戦は真珠湾攻撃で、まさに不意打ちの敵基地攻撃から始まりました攻撃の理由は「自存自衛」で、石油や鉄などの資源供給を断って日本を封鎖する米国から自国を守るために米国を攻撃するというもので、これが敵基地攻撃の典型なんです。
 今、岸田政権も敵基地攻撃能力保有について「自分の国は自分で守る」と同じことをいっています

 -この危険な暴走を止めるうえで、憲法9条の役割が大事ですね。
 日本が敗戦後、新しい憲法をつくる際、幣原喜重郎首相が提案した「戦争放棄」「軍備の廃止」に連合国軍最高司令官のマッカーサーが共鳴し、憲法9条ができました
 〝核兵器の増強に各国が狂奔し、悪魔の原子爆弾による戦争で人類は滅ぴるかもしれない。それを阻止するために、いまは笑われるかもしれないが、日本は軍備を持たない、戦争しないと世界に宣言して、その歴史的使命を日本が果たす
これが幣原の憲法9条に込めた願いです。
 ロシアによるウクライナ侵略など緊張が高まる今こそ、日本は9条の理念に立って平和外交をすすめ、東南アジア諸国連合(ASEAN)や東アジアの諸国とにの友好関係を深めて平和と安全を守らなければならない時です。
 ところが今、無残な自滅の道を歩んだ戦争の歴史に無知な首相が、敵基地攻撃能力の保有、大軍拡に突き進んでいます。
 かつて西ドイツのワイツゼッカー大統領は「過去に目を閉ざす者は現在も見えない」といいました。日本が過去にやった戦争の歴史に目を閉ざして同じ過ちを繰り返してはなりません
 「戦争前夜」にしないことが、いま一番大事なことだと思います。