2023年1月8日日曜日

国際社会はウクライナと米国に圧力強めよ(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題のブログを出しました。日本ではウクライナ戦争については、ロシアが「絶対悪」でウクライナが「絶対善」であるという見方が支配的になっていて、ロシアにも言い分があると言おうものならそれは「どっちもどっちだという誤った主張」と排斥されます。それにもかかわらず植草氏(や一部の人たち)は敢然と、「ロシアにも言い分がある」と主張してきました。

 日本の言論界の雰囲気は、開戦=他国への侵攻は絶対悪であるからそれを行ったロシアには何の言い訳も許されないというものです。
 日本では7月に山上徹也容疑者による安倍元首相の殺害事件がありました。言うまでもなく(正当防衛を除いて)あらゆる殺人は絶対悪です。しかしこのケースでは容疑者の動機に理解を示すことが許されていて、現にマスコミもそれに沿った報道をしたし、殺害の動機を詮索したりそれに一定の理解を示すことに特に批判は出ませんでした。
 それはしかし「ロシアへの対応とは異なるダブルスタンダード」と言えるのではないでしょうか。「どっちもどっちだ」というのは誤った主張だと言う側の根底には、「ロシアは悪いに決まっている」という「信念」に近いものがありはしないでしょうか。
 植草氏の主張には説得力があります。
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国際社会はウと米に圧力強めよ
                植草一秀の「知られざる真実」 2023年1月 7日
戦争報道で重要なのは基本スタンス。二つの立場がある。
第一は戦争終結を最優先する立場
戦争終結を最優先することは、何らかの意味での妥協の余地があることを肯定すること。
第二は一方の主張を頑なに押し通そうとする立場
戦争が生じているのだから、双方に主張がある。
双方が主張を頑なに押し通そうとすれば戦争は終結しない。
日本における報道は後者である。
ウクライナが絶対正義、ロシアが絶対悪という図式でしか報じない。
この立場が導くのはウクライナ完全勝利まで戦争を遂行するというもの。
これは戦争抑止ではなく戦争推進だ。

第二次大戦中の大本営と同類のもの。
問題解決に武力を用いた点でロシアは批難されるべきだ。
しかし、ウクライナが絶対でロシアが絶対悪という見立ては正しくない
戦乱を本格化させた点でロシアが非難されるべきだが、戦乱を本格化させることを意図的に誘導した点でウクライナと米国が非難されるべきである。
ロシアが行動に踏み切るまでの時点ではウクライナや米国の悪辣さが際立っている。

そもそも戦争をする必要はなかった。
しかし、この世には戦争を必要とする勢力が存在する。
戦争を必要とする勢力が戦争を創作している
同時に、戦争が発生するかも知れないという状況が人為的に創作されている
実際に戦争が生じるときに犠牲になるのは戦場の市民と戦争の前線に送り込まれる末端兵士だ。

戦争を創作する者は常に安全な場に自分の身を置いている。
ゼレンスキーも同じ。原発の図式と共通している。
ウクライナの戦乱を考えるには、1991年のウクライナ独立の時点にさかのぼる必要がある。
ウクライナは独立してから33年しか時間が経過していない、独立国としては歴史の浅い国。
三つの重要な歴史的経緯がある。
第一は、ウクライナ国境線に合理性が乏しいこと。
ウクライナはかつてソ連邦の1共和国だった。
ソ連邦がひとつの国であり、共和国の国境に強い意味はなかった。
都道府県や市町村の境界のようなものだ。
第二は、冷戦終結時に旧ソ連が最重視したことがNATOの東方不拡大であったこと。
1990年の東西ドイツ統一交渉の際、米国はNATO東方不拡大をソ連に確約した。
NATO東方拡大はソ連の軍事的脅威。
米国はソ連の意向を汲みNATO東方不拡大を確約した。
昨年のウクライナ戦乱勃発の主因はこの問題にある。
第三は、2004年と2014年にウクライナ政権転覆があり、その後遺症としてウクライナ内戦が勃発し、内戦を収束するためにミンスク合意が締結されたこと。
戦乱収束への努力は講じられてきた。
この努力を水疱に帰す行動を示したのは誰であったのか。
この点を考察することが重要だ。

ウクライナの北西部と南東部は著しく異なっている。
別の国と表現した方が正確かも知れない。
この点を踏まえて、キッシンジャー米元国務長官が
「ウクライナで一方の地域が他方の地域を支配しようとすれば、必ず分裂か戦争になる」
と述べた。
そもそも国の成り立ちに無理があることを認識することが問題解決のカギを握ることになる。
ロシアが戦乱収束に向けて一つの提案を示している。
この提案を検討もせず、戦乱拡大に突き進んでいるのがウクライナと米国だ。
国際社会は、戦乱早期収束に向けての協議を開始するようにウクライナと米国に圧力をかける必要がある。

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