2023年1月11日水曜日

11- 連載【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】#5~#8

 共同通信の編集委員兼論説委員の佐藤大介氏が日刊ゲンダイに、【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】を12回にわたって連載しました。連載開始が12月20日号で、終了したのが1月8日号でした。

 全12編を4編ずつ3回に分けて紹介します。今回はその2回目 #5~#8です。
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【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】#5
韓鶴子総裁が暮らす「博物館」は信者の“聖地” その下に総工費500億円超の巨大施設を建設中
                           日刊ゲンダイ 2022/12/24
 ソウル中心部から車で1時間半ほど。緑が生い茂った山々の姿を横目に見ながら道を進んでいくと、前方の山腹にある西洋の宮殿のような建物が目に入ってきた。旧統一教会が2006年に建設した「天正宮博物館」だ。「博物館」という名称ながら、教団の韓鶴子総裁が暮らす場所にもなっている
 周辺には教団本部のほか、合同結婚式を行う「清心平和ワールドセンター」や病院、全寮制の学校など、教団の関連施設が点在している。京畿道加平郡の一帯は、教団の重要施設が集中する、信者にとっての「聖地」だ。
 看板に「ヘブン・G・バーガー」と書かれた教団経営のハンバーガーショップが目印の道を入っていくと、信者が修練を行う「HJ天宙天寶修錬苑」がある。「HJ」とは、教団が「真の父母様が下さった言葉」として多用する「孝情」という言葉の韓国語読み「ヒョジョン」を意味している。
 博物館の下では「天地鮮鶴苑」の建設が進んでいた。教団の紹介動画によると、「聖殿」やホール、美術館などを備えた地下4階、地上3階の巨大施設で、2023年5月の完成を予定している。これまでにかかった工費は約3000億ウオン(約300億円)に達しており、完成までにはさらに約2000億ウオン以上がかかるとも言われているが、その資金には、日本を中心とした信者からの献金が充てられている
 修練施設のエリアに進むと、広い駐車場が整備され、信者たちが集うスタジアムや宿泊施設が立っていた。驚いたのはデパートもあることだ。衣料品や日用品などが売られており、コンビニも併設されている。訪れていた信者は「加平に住んでいても、ソウルと変わらない買い物ができる」と満足そうだ。
 加平郡は人口6000人ほどの自然豊かな農村で、大きな工場などは見当たらない。一方、教団経営の病院やカフェなどは信者以外でも利用が可能で、郡内に住んでいる信者も多い。多くの人が教団施設を訪れることから、ソウル中心部を結ぶバスも多く運行しており、住民の男性は「私は信者ではないが、教団があることで集落が潤い、暮らしが便利になっているのは確かだ」と話す。
 付近を走る道路は交通量が少なく、教団施設の建物だけが目立ち、辺りは別世界のような雰囲気だ。だが、教団は確実に周辺の地域に根を張っていた。 (つづく)
                     (共同通信編集委員兼論説委員・佐藤大介)

【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】#6
渡韓した日本人信者が口にした教団批判 現在の合同結婚式はマッチングアプリと化している
                          日刊ゲンダイ 2022/12/27
 京畿道加平郡にある旧統一教会の本部では、韓国に住む日本人の男性信者に会い、周辺の施設を案内してもらいながら話を聞いた。
 男性は1980年代に日本で入信し、その後に渡韓。教団の関連団体に所属するなどして、生活を送っている。合同結婚式で韓国人の女性と結ばれ、子どもを含めて家族全員が信者だという。
 男性は、日本で合同結婚式や高額献金が問題とされていることに対し「強制されることはなく、結婚の相手が嫌であれば断れるし、献金も自発的な意思に基づいている」と反論した。
 合同結婚式は、現在はマッチングアプリのようなシステムで相手を選ぶ形になっており、「より理想的な形での出会い」が可能になっていると説明する。
 教団のあり方が批判されている現状に対しては「日本は、信教の自由がない全体主義国家になってしまったのか」と強い不満を示したが、一方で「教団内部にはびこっている問題も少なくない」とも話す。その「問題」とは「献金主義と見せかけの成果主義だ」と言う。
 男性は「日本の信者の中には、献金額が高ければ高いほどいいという考えが根強い。それでは、ただの集金組織だ」と言い切る。また、韓国内でも合同結婚式に参加する日本人女性の相手を確保するため、支部組織が「教義も知らない男性を“にわか信者”に仕立て、新たな信者を獲得した実績にしている」と批判した。
 そうした形で入信した男性は、結婚が目的で教義についてはほとんど理解せず、飲酒や喫煙の禁止も守らないケースが多いという。
 男性が仕事に就かず、日本から渡ってきた女性が働いて家計を支えるなど「妻となった女性に過度な負担を強いていることがあるのも事実だ」と打ち明けた。
 男性は、日本での教団への締めつけに反発しながらも「今回を、教団が刷新する機会と捉えるべきだ」と話す。韓国内に住む日本人信者の間にも、そうした考えを持つ人は少なくないという
 教団施設内にある駐車場には何台かのマイクロバスが止まっており、信者たちが集まっていた。日本語で会話をしている人たちもおり、話しかけると日本から来た信者だと言う。記者と名乗った上で、日々の暮らしについて尋ねてみた。日本人信者は、一様にやや困惑した表情を浮かべたが、そのうちの1人が「私たちは幸せに暮らしています」とだけ話し、ほかの信者と共にバスへ乗り込んでいった。=つづく
                     (共同通信編集委員兼論説委員・佐藤大介)

【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】#7
本拠地・韓国では想像もつかない「サイビ宗教」と日本の政治の結束
                          日刊ゲンダイ 2022/12/28
 安倍晋三元首相が銃撃された事件は、韓国はもちろん、世界各国に衝撃を与えた。しかし、その後の世論の関心は、日本と韓国で大きな開きがある
 日本では、旧統一教会と政界との結びつきが連日報道され、内閣支持率にも大きな影響を与えている。一方で、韓国ではこうした問題は注目されず、メディアを通してもほとんど話題になっていない

■似て非なるカルト
 この温度差は、旧統一教会に対する社会の見方の違いからきている。キリスト教の影響力が強い韓国社会では、旧統一教会の教義は「異端」とされ、一般的な宗教団体としては認知されていない
 個人崇拝や多額の献金を要求する新興宗教を、韓国では「サイビ宗教」と呼ぶ。「サイビ」を漢字で記すと「似而非」。「宗教とは似て非なるカルト集団」という意味合いだ。韓国社会で旧統一教会は、まさに「サイビ宗教」として認識されている。
 多くの韓国人にとって理解できないのは、なぜこうした「サイビ宗教」が、安倍元首相をはじめとした大物政治家と関係を持ち、自民党とのパイプを築くことができたのかという点だ。とりわけ安倍氏は、日韓関係において韓国内では「有名人」だったことから、その人物の背後に「サイビ宗教」が存在したことに驚きを示す声も少なくない
 韓国では、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念された2020年2月、南部の大邱市で感染者が急増し、全国的な広がりを見せる事態となった。この原因となったのが、キリスト教系新興宗教「新天地」の集団感染だ。信者に感染者が出たにもかかわらず検査を拒否し、集団礼拝にも参加したことが発覚したが、教団側はこうした情報を公開しようとしなかった。
 1984年に創設された「新天地」は、教祖を「救世主」とあがめ、韓国内に約20万人の信者を持つ。旧統一教会と同様、既存のキリスト教団体からは「異端」として排除されており、信者がのめり込んで家庭崩壊に至るなど「サイビ宗教」の典型とされている。
 韓国では「新天地」が政権と癒着しているということはない。「サイビ宗教」と政界が結びつくことなど、韓国人にとっては「想像もできない話」(韓国メディアの記者)なのだ。
 だが、韓国内で旧統一教会は宗教団体として認識されていない一方、別の形での存在感を示している。それが企業活動だ。 =つづく
                     (共同通信編集委員兼論説委員・佐藤大介)

【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】#8
韓流ブームの火付け役「冬ソナ」の聖地・龍平リゾートは“教団の聖地”だった
                          日刊ゲンダイ 2022/12/29
 2018年に冬季五輪が開催された平昌は、北朝鮮との軍事境界線まで車で40分ほどの韓国北東部、江原道にある。平昌五輪でスキー大回転などの競技が行われた龍平リゾートは、旧統一教会が所有していることは日本ではあまり知られていない。
 龍平リゾートは1975年に開業したが、経営悪化によって売却され、2003年に旧統一教会系の企業の手に渡った。日本で大ヒットし「韓流ブーム」の火付け役となったドラマ「冬のソナタ」では、ペ・ヨンジュンとチェ・ジウがレストランで食事をするシーンを龍平リゾートで撮影しており、日本からファンが殺到する「聖地」となった。
 その一方、龍平リゾートにあるホテルの売店には、旧統一教会の教祖である故・文鮮明氏の筆による揮毫が掲げられていた。ホテルなど龍平リゾートの施設には数多くの信者が働いており、教団にとっても「聖地」であったことがうかがえる。
 このほか、教団は高麗人参や炭酸飲料「メッコール」を製造、販売する会社や学校などを運営しており、一時期はサッカーチームを所有していたこともある。
 また、1962年に文鮮明氏が創設した小中学生の女子児童・生徒による舞踏団「リトルエンジェルス」は、各国の政治家や著名人の前で公演し、1970年代には日本公演の際に日本の皇族も鑑賞しており、教団側はこうした過去を実績として対外的な宣伝にも利用してきた。

■献金などを元手に韓国で企業展開
 韓国紙の記者は、韓国での旧統一教会について「宗教団体というよりも、さまざまな事業を展開する企業体というイメージが強い」と話す。ソウル市内には教団の所有する複数のビルや土地があり、相当の資産を有していることがわかる。
 旧統一教会に20年以上所属していたという50代の元信者の韓国人女性は「教団は日本で集めたカネを韓国に運び、それを資金にして数々の企業を設立し、水面下で社会に浸透していった」と指摘する。
「韓国を拠点として各国へ進出し、世界を支配しようとする。教団が考えていることは『帝国主義』そのものだった」
 女性は、苦々しい表情を浮かべながら、そう話した。=つづく
                     (共同通信編集委員兼論説委員・佐藤大介)