2023年1月26日木曜日

ゼレンスキー大統領の周辺にアメリカの巨大金融機関が集まった背景 

 NATOからウクライナに供与されている武器の7割が闇市場に横流しされているといわれるほど、ウクライナ政権は汚職体質に染まっていて、反汚職体質の度合いは世界で122位とされています。

 あまりにも遅きに失しましたが、ゼレンスキー大統領はようやく汚職対策に着手したようで、24日にはウクライナ政府高官が相次ぎ辞任しました。同氏は許可された業務以外の目的で当局者が出国することを禁止しています
 この汚職について早くから指摘していた櫻井ジャーナルは26日、「ゼレンスキー大統領の周辺にアメリカの巨大金融機関が集まった背景 」という記事を出しました。
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ゼレンスキー大統領の周辺にアメリカの巨大金融機関が集まった背景 
                         櫻井ジャーナル 2023.01.26
 キエフ政権のウォロディミル・ゼレンスキー大統領がブラックロックを率いるラリー・フィンクと結びついたのは昨年9月のことだと言われている。ウクライナは兵器のほか「復興資金」を西側政府から提供されているが、その資金の使い道に関するアドバイスを受ける契約をブラックロックと結んだという。
 このブラックロックはバンガードやステート・ストリートと同じように、1970年代から始まった金融規制の大幅な緩和によって誕生した銀行ではない金融機関、いわゆる「闇の銀行」のひとつ。メディアやシリコンバレーのハイテク企業を含むアメリカの主要500社の9割近くを支配している。
 汚職問題で厳しい状況にあるゼレンスキー大統領だが、今月下旬、ブラックロックのほか、JPモルガンやゴールドマン・サックスと協力関係にあることを明らかに​した。アメリカの実業家に対し、軍事だけでなく建設、通信、農業、輸送、IT、金融、そして医療の分野でウクライナと手を組むすべての人が大儲けできると訴えている。だからカネをよこせということだ。
 しかし、この売り込みには大きな問題がある。ゼレンスキー大統領を含むクーデター派が今後もウクライナを支配する、クーデター体制が維持されるという前提で成り立つストーリーだからだ。かつて欧米の銀行は乗っ取り屋に資金を提供する際、ターゲットの会社が保有する資産を担保としていた。乗っ取りが成功すると、その乗っ取られた会社の資産を骨の髄までしゃぶり尽くそうということである。乗っ取りに失敗したなら、出したカネは戻ってこない。
 ウクライナでの内乱は2010年から始まったことは本ブログでも繰り返し書いてきた。その年に選挙で選ばれたビクトル・ヤヌコビッチを排除するため、アメリカのバラク・オバマ政権はクーデターを計画したのだ。
 その計画は2013年11月に始動、翌年の2月にヤヌコビッチ政権はアメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチによって倒された。そのクーデター体制をヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民は拒否、東部のドンバスでは内戦が始まるのである。
 アメリカ/NATOはキエフ政権の軍事力を増強するために「ミンスク合意」で時間稼ぎした。この合意について​アンゲラ・メルケル元独首相​は昨年12月7日、ツァイトのインタビューでウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったと語っている。メルケルと同じようにミンスク合意の当事者だった​フランソワ・オランド元仏大統領​もその事実を認めた。
 そして昨年春にアメリカ/NATOはドンバスで大規模な攻撃を始める予定だったと言われているが、その直前にロシア軍が動いた。ミサイルなどでウクライナの軍事基地や生物兵器の研究開発施設を破壊したのである。
 ウクライナの軍や親衛隊は住宅地に攻撃拠点を築き、住民を人質にしたが、開戦から1カ月ほどでウクライナ側の戦闘部隊は壊滅、ゼレンスキー政権の内部ではロシアと話し合う動きが現れた。​それを止めるためにイギリスのボリス・ジョンソン首相(当時)が4月9日にキエフへ乗り込んだ​。4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。
 その後、ロシアのウラジミル・プーチン政権はアメリカ/NATOやキエフ政権が話し合いで解決する意思がないことを悟り、9月21日に「部分的な動員」を実施すると発表、集められた兵士のうち約8万人は早い段階にドンバスへ入り、そのうち5万人は戦闘に参加、現在、20万人から50万人が訓練中だという。動員の発表があった直後にドンバス、ヘルソン、ザポリージャを統括する指揮官としてセルゲイ・スロビキン大将が任命された。
 ウクライナ軍はソレダルにある岩塩の採掘場を利用して全長200キロメートルという「地下要塞」を築いていたが、そのソレダルをロシア軍が制圧、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長をウクライナにおける軍事作戦の統合司令官にするという発表があった。スロビキンは副官になるが、ドンバス、ヘルソン、ザポリージャでの作戦を指揮することに変わりはない。この頃からロシア政府は戦いの相手をNATOだと明言するようになるが、そうした認識に基づくのだろう。
 1月上旬、​コンドリーサ・ライス元国務長官やロバート・ゲーツ元国防長官はウクライナ国内の経済は混乱状態で、何百万人もの国民が逃げ出し、インフラは破壊され、鉱物資源、産業能力、かなりの農地の多くがロシアの支配下に置かれ、ウクライナ軍の勝利は難しいとする論説を発表した​。こうした状況を打開するにはウクライナに対し、速やかに対する軍事物資の供給を劇的に増やさなければならないとしている。
 そうした中、ウクライナへ戦車の供給するという話が持ち上がるのだが、アメリカやドイツは嫌がる。アメリカは自国の主力戦車「M1エイブラムズ」の無様な姿を晒したくなく、ドイツはウクライナの戦争へ引き摺り込まれることを嫌ったと見られている。そうした中、積極的だったのはポーランドとイギリス。イギリスは自国の主力戦車である「チャレンジャー2」の提供を申し出るが、これはドイツに「レオパルト2」を提供させるための催促だったと推測する人は少なくない。ポーランドのエリートは歴史的に反ロシア感情が強く、イギリスに従属してきた。今でもポーランドはロシアの崩壊を望んでいる。
 戦闘能力や供給ラインの問題でウクライナが最も欲しがっていたのはレオパルト2のようだが、こうした戦車が提供されても戦況が大きく変化することはないだろう