しんぶん赤旗に「日本経済の三つのゆがみ」という記事が載りました。
「アベノミクス」とその根幹である「異次元金融緩和」は無惨な破綻を来たしました。その真っただ中にいても、4月に退任する黒田総裁では「わが身可愛さ」だけなので正しい打開策は期待できません。いまはただ、渦中の栗を拾うことになる後継者の手腕に期待するしかありません。
日本経済の第一のゆがみは、いうまでもなく異常円安を引き起こした「異次元の金融緩和」の無残な失敗です。第二のゆがみは構造的な貿易赤字で、その根幹には新自由主義に基づく生産拠点の海外移転=産業の空洞化があります。これは30年~40年前から警鐘が鳴らされていた問題ですが、21年以降恒常的な貿易赤字となってその弊害が顕れました(添付グラフ参照)。
そして第三のゆがみは小泉・竹中政権以降、新自由主義にもとづく労働法制の規制緩和を連続的に推し進め非正規労働者を拡大した結果、「賃金が上がらない国」になっていることです。
安倍政権はそのいずれにも深く関わってきたし、竹中平蔵氏はいまも政府会議委員に起用されて主体的に振る舞っているようですが、先ずはこの惨状を由来させた諸政策へのキチンとした反省を行うべきでしょう。
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物価高騰 痛み増幅 日本経済三つのゆがみ
しんぶん赤旗 2023年1月18日
40年ぶりの物価高騰が国民の暮らしに重くのしかかっています。賃金と経済が低迷していることが、物価高騰の痛みを増幅しています。根底には日本経済の構造的なゆがみが横たわっています。 (杉本恒如)
2022年10月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比3・6%上昇しました。第2次石油危機の影響が残っていた1982年2月以来、40年8ヵ月ぶりの高い上昇率となりました。2022年11月の実質賃金は前年同月比3・8%減となり、食品や電気など幅広い品目の値上がりに賃金の伸びが追い付かず、家計が圧迫される状況が浮かび上がりました。
長期的にみても、実質賃金は12年の年404・6万円から21年の384・4万円へ大きく落ち込んでいます。賃金と経済の長期低迷のうえに物価高騰が襲い掛かる、戦後かつてない深刻な事態です。根本には、弱肉強食の新自由主義とアベノミクスがもたらした日本経済の三つの構造的ゆがみがあります。
「異次元緩和」で異常円安
金融政策失敗
第一のゆがみは、異常円安を引き起こした「異次元の金融緩和」の無残な失敗です。
アベノミクスは「第1の矢」に「異次元の金融緩和」を据えた金融頼みの経済政策でした。 「デフレ(持続的な物価下落)は貨幣現象だから、市場に貨幣を大量供給すれぱ解決する」という「リフレ派」理論を背景に、日銀が国債や株式などのリスク性資産を買いあさり、持続的な2%物価上昇をめざしました。
しがし、非正規雇用の拡大や消費税の大増税で投資を冷え込ませながら金融を緩和しても、貨幣は実体経済に回らず、経済の好循環は実現しませんでした。米国が物価抑制のための利上げに転じる中、日米金利差が拡大して異常円安が進み、輸入物価が高騰。賃金と経済が低迷する下で物価だけが全般的に上昇するという異常事態を招きました。
日銀は22年12月の金融政策決定会合で政策修正に追い込まれ長期金利の上限をO・25%からO・5%へ引き上げると発表しました。「異次元緩和」路線の完全な行き詰まりが露呈した格好です。
金融頼みの経済政策から、内需を活発にして実体経済を良くする経済政策へ、抜本的に転換することが急務となっています。
人件費削り製造業空洞化
貿易赤字構造。
日本経済の第二のゆがみは、構造的な貿易赤字です。 22年11月の貿易収支は2兆290億円の赤字でした。11月としては、比較可能な1979年以降で最大の赤字となりました。
一般的に、自国通貨安は輸出を有利にします。1ドル=1OO円から150円へ円安が進めば、同じ1ドルで商品を輸出しても円での受取額が50円増えるからです。値引き販売をすれば、輸出数量の拡大も見込めます。
ところが、異常円安が進んだ22年に貿易赤字はむしろ拡大しました。過去30~40年間にわたり、大企業が生産拠点を海外に移転してきたからです。
資本の自由を最優先する新自由主義は「貿易・投資の自由化」を至上命令とします。その狙いは、低賃金・低税率のタックスヘイプン(規制・租税回避地)へ生産拠点や利益を移してコストを劇的に削減し、人件費と法人税負担を切り下げる「底辺への競争」を世界に広げることです。
日本の財界も、国境を越えた「最適地主義」と、国内での「総額人件費管理」(1995年、日経連『新時代の「日本的経営」』)を組み合わせ、国内外で人件費削減を推し進めました。自公政権は「自由貿易・投資」政策などで大企業の海外移転を後押ししました。
その結果、日本の製造業は「空洞化」しました。かつて輸出産業の花形だった電気機器は22年11月に1306億円の貿易赤字となっています。携帯電話などの通信機は2795億円、パソコンなどの電算機類は1833億円の貿易赤字です。
自公政権が食料とエネルギーの海外依存を進めたことも、貿易赤字を拡大しました。
貿易赤字は円安の重大要因となり、輸入物価を押し上げる悪循環をもたらしています。
労働法緩和で非正規拡大
上がらぬ賃金
日本経済の第三のゆがみは、「賃金が上がらない国」になっていることです。自公政権は新自由主義にもとづく労働法制の規制緩和を連続的に推し進め、非正規労働者を拡大しました。これが「賃金が上がらない」原因となっています。
物価高騰で国民の暮らしと中小企業の営業が大きな困難に陥っている責任は、ロシアのウクライナ侵略などの外的要因だけに求められません。新自由主義とアベノミクスがつくりだした日本経済の構造的なゆがみが危機の根源にあります。
日本共産党は22年11月、「物価高騰から暮らしと経済を立て直す緊急提案」(別項※)を発表しました。物価高騰から暮らしと営業を守る緊急対策であると同時に、日本経済の構造的ゆがみをただし、「やさしく強い経済」を実現する抜本的な改革提案となっています。
※ 共産党の緊急提案の柱
・大企業の内部留保に時限的課税を行い、大企業でも中小企業でも政治の責任で賃上げを |
グラフ 貿易収支の推移/実質賃金の推移
下記のURLをクリックしてください。
最初に「貿易収支の推移」が表示され、下にスクロールすると「実質賃金の推移」が表示されます。
https://drive.google.com/file/d/19fYxzlYNlv4ryEsTmyIg-fzavm1DSMkC/view?usp=sharing