2023年1月22日日曜日

報道されないウクライナの闇/NATOを東へ拡大させたのは米国

 いま西側では「ロシアは悪」「ウクライナ側は正義」であるとして、正義の側が終戦に合意することはあり得ないし、国土を一部分譲することもあり得ないという考え方が支配的です。

 目下、ドイツが持っている世界最優秀といわれる戦車をウクライナに供与すべきかどうか、関係者は悩んでいるようですが、仮に供与されてウクライナ側が一時的に有利になったとしても、それで勝敗が決することはありません。
 中国は動けないようだし、日本は完全にNATO寄りになっているので、停戦や終戦を仲介する国家は不在です。米国もゼレンスキーも正義の戦争を主張しているので、この戦争は延々と続くことになります。
 それで本当にウクライナ国民(とロシア国民)はいいと思っているのでしょうか。そしてウクライナ側が正義だと本当に言えるのでしょうか。事態の成り行きを冷静に考えるためには、単に「他国侵攻は絶対悪」と決めつけるのではなくそれなりの歴史的経過について、冷静に見直すことは欠かせません。
 ロシアを敵視する軍事同盟であるNATOの東側への一貫した拡大が、プーチンの心理にどう作用したのかについても、プーチンが持ったであろう恐怖感に内在して考えてみることも必要でしょう。
 植草一秀氏と櫻井ジャーナルのブログを紹介します。
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報道されないウクライナの闇
                植草一秀の「知られざる真実」 2023年1月20日
ドイツのピストリウス国防相が1月20日、ウクライナに対するドイツ製の戦車「レオパルト2」の供与について「いつ決定できるかはわからない」と述べ、現時点で判断しないことを表明した。賢明な判断である。一歩進めて、武器供与しないことを決断するべきだ。

ウクライナの戦争を拡大しようとする勢力と収束させようとする勢力が存在する。
正しい判断は戦争を終結させる方向に事態を進展させることだ。
ウクライナに対して無制限、無尽蔵の武器供与を続けることは戦争を終結させるのではなく、戦争を拡大させることを目指すもの。
軍事産業は戦争拡大を希求するが、これによって犠牲になるのは戦地の市民と戦地に送られる末端の兵士である。武器供与を拡大し、戦争を拡大させることを誘導する者は、すべて、我が身を安全な場に置いている。
我が身をリスクに晒さず、軍事産業が獲得する巨大な不労所得のおこぼれを頂戴することが目指されている。醜悪な人々だ。

ウクライナ戦争の図式をロシア=悪、ウクライナ=善と見立てるのは間違いだ。
特別軍事作戦を始動させたことでロシアは批難されるべきだが、ロシアの行動を誘導した点でウクライナと米国も批難される必要がある。
ロシアが絶対悪でウクライナが絶対善なら、ロシアを殲滅することが正しいと言える余地はある。
しかし、事実は異なる。軍事作戦を始動させた点でロシアは批難されるべきだが、この点を除けば悪いのはロシアではなくウクライナである。

今回の戦乱が始動する前に、ウクライナでは内戦が生じていた。
この内戦を収束させるために「ミンスク合意」が制定された。2015年のこと。
東部のドネツク、ルガンスクの両地域に高度の自治権を付与する。このことにより内戦を収束させる。これで合意が成立した。
合意成立に関与したのはウクライナ、ドネツク、ルガンスク、ロシア、ドイツ、フランス
である。合意は国連安保理で決議された。合意は国際法の地位を獲得した。

2019年4月に大統領に選出されたゼレンスキーはミンスク合意履行による東部和平確立を公約に掲げた。
しかし、和平案に対してウクライナの民族主義者=ネオナチ勢力が強く抵抗した。
2014年の暴力革命によって樹立された非合法政府はロシア系住民に対する人権侵害、残虐行為を展開した。

2013年11月21日から2014年2月21日にかけて、ウクライナの首都キエフにあるマイダン広場で大規模デモが組織された。
当初は平和デモであったが途上から暴力的行為が創作された。暴力革命を企画・演出したのは米国と見られている
その米国がウクライナ民族主義勢力=ネオナチ勢力と結託して暴力革命が挙行された。
2014年2月21日にウクライナ政府とEUとの和解が成立した。
年内大統領選実施などが決定されデモは解散される運びだった。

これに抵抗したのが米国である。米国はネオナチ勢力を動員し、2月22日未明、デモの最中に警官とデモ隊29名を射殺。民衆を暴徒化させた。
その後群衆が国会を占拠し、ヤヌコビッチ大統領が国外に逃避した。
暴力革命によって樹立された非合法政府は2月23日に「ウクライナ民族社会」の設立を発表。
その内容は、ロシア語を使用するすべての者からウクライナ民族社会の正当な権利を有するメンバーという地位を剥奪すること、彼らを市民権及び政治上の権利において差別すること、などだった。

ウクライナ政府はロシア語系住民が多数を占める東部ドンバス(ドネツク、ルガンスク)地域に対して軍事攻撃を展開。
これに対してドネツク、ルガンスク両地域のロシア系住民が抵抗して内戦が勃発した。
この内戦を収束するためにミンスク合意が制定され国連安保理で決議された。
この「ミンスク合意」を踏みにじったのがウクライナと米国である。ウクライナと米国はロシアが軍事行動を始動するようにミンスク合意を踏みにじる行為を拡大させた。
その結果として生じたのがウクライナ戦争だ。この経緯においてはウクライナと米国が悪である。
このことを踏まえて戦争拡大ではなく、戦争の早期収束を最優先課題に位置付けて問題処理を進めるべきだ。戦争拡大を推進する米国主導の世論誘導は完全な誤りだ。

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ロシアとの戦争を予期しながらNATOを東へ拡大させた米国の支配層
                         櫻井ジャーナル 2023.01.22
 岩塩の採掘場を利用して築かれた全長200キロメートルという「地下要塞」があり、戦略的に重要な位置にあるソレダルを制圧したロシア軍は次の目標としてバフムート(アルチョモフスク)に狙いを定めているようだ。その間にキエフ政権側の軍事拠点を破壊、アメリカ/NATOは兵器の追加供給を強いられている
 そのアメリカ/NATOは現在、ロシア軍の新たな軍事作戦がいつ、どのような形で始まるかを気にしているはずだ。ウラジミル・プーチン露大統領は昨年9月21日に部分的な動員を実施すると発表、集められた兵士のうち約8万人は早い段階でドンバス入りし、そのうち5万人は戦闘に参加、さらに20万人から50万人が訓練中だという。

 朝鮮戦争で休戦後に設定されたようなDMZ(非武装地帯)を考えている人もいるようだが、兵器の能力が飛躍的に進歩していることを考えてもそうした形の決着は考えにくい。DMZの幅を100キロメートル単位に広げてもネオ・ナチが存在している限りロシアは納得しないと推測する人は少なくない。

 ウクライナでの戦闘は2010年の1月から2月にかけて実施された大統領選挙でアメリカと一線を画す立場のビクトル・ヤヌコビッチが勝利したところから始まる。
 この結果を懸念したアメリカ政府は7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)をキエフへ派遣、彼女はヤヌコビッチに対し、ロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、西側の植民地になることを望まないヤヌコビッチはこの要求を拒否した。そこからバラク・オバマ政権のクーデター計画が始まったと言われている。
 その計画が指導したのは2013年11月、翌年の2月にネオ・ナチがヤヌコビッチ政権を倒した。このクーデターが始まるのは2013年11月。キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で行われたカーニバル的な集会が始まりだ。
 12月になると集会への参加者は50万人に達したと言われているが、人が集まったところでネオ・ナチのグループが活動を始める。2月18日頃から棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めたのだ。この年の2月7日から23日にかけてロシアのソチでは冬期オリンピックが開催されていた。

 クーデターを仕掛けたのはアメリカのバラク・オバマ政権にほかならない。その際、混乱を話し合いで解決しようとしたEUについて国務次官補だったビクトリア・ヌランドはウクライナ駐在アメリカ大使のジェオフリー・パイアットに対し、電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしている。アメリカ政府は暴力でヤヌコビッチ政権を倒そうと決めていたのだ。
 アメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチはクーデターでキエフを制圧したものの、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民は反発し、クリミアはロシアと一体化する道を選び、ドンバスでは内戦が始まった

 そのドンバスでの戦闘を停止するという名目でドイツやフランスを仲介者とする停戦交渉が行われ、ウクライナ、ロシア、OSCE(欧州安全保障協力機構)、ドネツク、ルガンスクの代表が2014年9月に協定書へ署名している。これが「ミンスク合意」だが、キエフ政権は合意を守らず、2015年2月に新たな合意、いわゆる「ミンスク2」が調印された。
 この合意について、アメリカの元政府高官を含む少なからぬ人が時間稼ぎに過ぎないと批判していたが、それが事実だとうことがここにきて明確になった。ンゲラ・メルケル元独首相​は12月7日にツァイトのインタビューでミンスク合意はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったと語ったのだ。メルケルと同じようにミンスク合意の当事者だったフランソワ・オランド元仏大統領​もその事実を認めた。

ウクライナの議員として議会でクーデター計画の存在を指摘したオレグ・ツァロフ​は昨年2月19日、緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出している。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らしたのだ。
 キエフ軍の作戦はロシア語系住民を狙った「民族浄化」で、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を虐殺しようとしているとツァロフは主張、SBU(ウクライナ保安庁)がネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行するともしていた。
 ツァロフがアピールを出した3日後にロシアのウラジミル・プーチン大統領がドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始、航空基地を破壊されたと言われている。同時に​ウクライナの生物兵器研究開発施設も狙われた​。

 西側ではミンスク合意をアメリカ/NATOの時間稼ぎだと考え、プーチン政権を「甘い」と批判んする人もいた。その判断が正しかったことをメルケル元独首相やオランド元仏大統領は認めている。プーチン政権もどこかの時点でそれを認めざるをえなくなったのだろう。プーチン政権のアメリカとつながっている勢力はドンバスの問題でも「バランスの取れた取り組み」を主張し、西側に戦争の準備をする余裕を与えて事態を悪化させた。「特別軍事作戦を始動させたことでロシアは批難されるべき」で、ミンスク合意を尊重するべきだと今でも主張する人がいるが、それならばメルケルやオランドの発言をどう考えるのかを明らかにするべきだ。

 現在、ウクライナでNATO軍とロシア軍が本格的に軍事衝突する可能性が高まっている。短期的に見れば2010年の大統領選挙から始まるのだが、中期的に見ると1990年の約束が大きな意味を持つ。西側諸国はNATOを東へ拡大させないと約束していたのだ。
 例えば東西ドイツが1990年に統一される際、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で国務長官を務めていたジェームズ・ベイカーはソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領やエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと語った。その事実の記録をジョージ・ワシントン大学のナショナル・セキュリティー・アーカイブは2017年12月に公開している。
 またドイツのシュピーゲル誌によると、アメリカはロシアに約束したとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っているほか、ドイツの外務大臣だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年2月にシェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約したという。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)

 しかし、アメリカ/NATOは勢力圏を東へ拡大させ、ウクライナに到達。そうした中、ジャック・シラク仏大統領の外交顧問を務めたモーリス・グルドー-モンターニュはウクライナをNATOへ受け入れることがモスクワにとって微妙な問題だと指摘、ヨーロッパにおける戦争の原因になる可能性があると警告している。ところがオバマ政権はウクライナでクーデターを実行、国を乗っ取った

 オバマ政権で副大統領だったジョー・バイデンは2021年1月から大統領を務めているが、就任して間もない頃からプーチン大統領を愚弄、挑発、経済戦争を仕掛けてきた。
 その年の12月7日にプーチン大統領とオンライン会談を実施した際、プーチン大統領はバイデン大統領に対してNATOの東への拡大は止めるように求めたが、バイデンはウクライナのNATO加盟へロシアは口を出すなという態度を示した。
 同じようにEUのジョセップ・ボレル外務安全保障政策上級代表(外相)は自分たちのことを決める権利を持っているのは自分たちであり、ロシアは口をはさむなと言っている。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長もロシア政府の要求を拒否している。