2023年1月31日火曜日

ウクライナ=正義 ロシア=悪魔 の見立ては事実誤認(植草一秀氏)

 ウクライナ戦争ではウクライナがNATO諸国に武器の提供を求め、現在、世界最優秀とされる欧米の戦車が最終的には100台以上提供されようとしています。ウクライナは他にもロシア国内に到達する長距離砲を求めているし、いずれ戦闘機が供給される可能性もあります。要するにいまやNATO対ロシアの戦争に様変わりしています。

 西側は、去年の2月24日ロシア軍がウクライナとの国境を乗り越えて侵攻したことは絶対に許されない「悪」であるとして、どういう経緯があったのかを論じるのは「双方に責任がある」という間違った論建てだとして無条件で排撃されてきました。
 その結果トルコなどを除いて仲介出来る国はない有様で、ウクライナ国民がどれほど困窮を極めていても「正義の戦争」は貫徹されなくてはならないということに『結果的に』なっています。
 まさか『正義』を貫くためには核戦争になることも厭わないというのではない筈です。西側が一糸乱れず徒党を組んでいればそれでいいというようなことでもありません。

 本当は日本はロシアとも一定の信頼関係があったので、仲介役も出来たかもしれないのですが、よりによって岸田首相が対ロシア軍事同盟であるNATOに参加したいかのような言動を行った以上、そんな資格は勿論ありません。
 植草一秀氏が「ウ=正義 ロ=悪魔 見立ては事実誤認」とする記事を出しました。それは現下の日本の「言論空間」では勇気のいることなのですが、植草氏は一貫してその主張を貫いています。
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ウ=正義 ロ=悪魔 見立ては事実誤認
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年1月30日
ウクライナがNATO諸国に対して武器提供を執拗に求め、NATO諸国がこれに応じる図式が構築されている。
日本のメディアは欧米によるウクライナへの武器供与に賛同する報道を展開する。
ウクライナが正義でロシアが悪である図式に基づく報道。
戦争は人力と装備力によって勝敗が決せられる。
とりわけ重要な意味を持つのが装備力。
ウクライナの装備がウクライナによる自前の装備でないなら現在の戦争はウクライナとロシアの戦争ではないということになる。
ロシアとNATOの戦争である。
NATOが全面的に武器供与を行うならロシアは厳しい状況に追い込まれる。
そのことが戦争のエスカレーションを招く蓋然性が高い。
ロシアが厳しい状況に追い込まれるなら核兵器使用も検討対象になるだろう。
NATO全体を敵として戦うことになればロシアは総力戦に移行せざるを得ない。
ウクライナ戦争が核戦争に移行すればその影響は計り知れない。

『原子力科学者会報』の研究者たちが毎年、世界終末時計の針の位置を決めている。
世界の終末が午前零時。
本年1月24日、午前零時までの残り時間が90秒とされた。
2022年までの2年間は残り時間が100秒とされた。
2023年の残り時間90秒は過去76年間で最も破滅に近付いたことを意味する。
NATOのスタンスはウクライナ戦争を終結させることではなく、ウクライナ戦争を拡大させる方向を目指すもの。
その延長線上に世界の滅亡が視界に入る。

ウクライナが正義でロシアが悪魔であるなら、総力を結集して悪魔退治を行うというのも理解は不可能でない。
しかし、過去の歴史的経緯を踏まえるなら
ウクライナ=正義、ロシア=悪魔 の図式はまったく成り立たない。
戦乱が勃発した原因の多くはウクライナが負っている。
問題解決のために全面的な武力行使に踏み出した点でロシアは批難されるべきだが、戦乱勃発までの経緯においてはウクライナの不正義、不正が際立っている。
また、問題解決にあたってはウクライナの国情を考慮することが不可欠だ。
米国元国務長官キッシンジャー博士の指摘が正鵠を射ている。
ロシア=悪、ウクライナ=正義の図式でロシアを殲滅するまでNATOが戦乱拡大を推進する方針は大きな誤りである。

冷戦終焉に連動してウクライナが独立した。1991年のこと。
ウクライナは独立して31年余の時間しか保持しない。
この期間に2度の政権転覆があった。
2004年と2014年である。
いずれも親ロシア政権が破壊され親米政権が樹立されたもの。
この政権転覆を工作したのは米国であると見られる。
2004年は大統領選挙が不正選挙であったとアピールされて再選挙が強要され、結果が覆されたもの。
2020年の米国大統領選がやり直しされてトランプが当選を果たしたと考えればわかりやすい。
再選挙に向けて親米候補ユシチェンコの顔がただれた。
ダイオキシン中毒によるものだった。
ユシチェンコ陣営は親ロ勢力による謀略と主張したが、実際はユシチェンコ陣営の自作自演だった疑いが強い。

2014年には暴力革命によってヤヌコビッチ政権が破壊された。
暴力革命を主導したのは米国と米国の支援を受けたウクライナ・ネオナチ勢力だった。
ウクライナ・ネオナチ勢力は第二次大戦後に戦争犯罪追及を受けるべき存在だったが対ロシア攻略を重視する米国が戦争責任を追及せずに温存したものである。
政権転覆後のウクライナ非合法政府はウクライナ国内のロシア系住民に対する人権侵害、暴虐行為を展開した。この結果として内戦が勃発。
内戦を終焉させるために2015年にミンスク合意が締結され、ドンバス地域への自治権付与が決定されたが、このミンスク合意を踏みにじったのがゼレンスキー大統領である。
これらの経緯を踏まえずに、ロシア=悪、ウクライナ=正義の見立てですべてを論じるのは根本的な誤り。
NATOの無制限・無尽蔵の武器供与は戦乱のエスカレーションを招く主因になる。
この誤りを正すことが最優先課題である。

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