2023年1月24日火曜日

オミクロン株のファクターX 中国・日本での感染爆発と医療崩壊(世に倦む日々)

 当初のコロナ(アルファ株)では日本を含む東アジアでは相対的に穏やかに経過し、その要因について山中伸弥氏が提唱したファクターXが話題になったほどでしたが、現在は逆でコロナ(オミクロン株)が猛威を振るっているのは中国と日本です。日本では既に医療崩壊が起きていて、死者は1日当たり500人という猛烈な数になっていますが、政府は何もせずメディアも話題にしていません。
 それだけでなく政府は春にはコロナを2類から5類に下げるということまで決めています。それには医学的あるいは社会(学)的に意味があるので、それは専門家を中心に十分に検討すればいいのですが、政府にとって都合がよいからという発想は許されません。
 世に倦む日々氏が「オミクロン株のファクターX  中国・日本での感染爆発と医療崩壊」という記事を出しました。この記事はワクチンは効かないのではないかと提起した前回の記事(⇒(1月18日)知事会も医師会も担当相も出ない第8波 - 死屍累々~の後編に当たるものです。
 同氏は「日本の政府とマスコミと御用専門家は、 被害を過小評価する言説をマスコミとネットで撒き散らしている。~ 政府とマスコミと専門家は、頭がアメリカ人なのであり、日本とアメリカでは事情と前提が違うという意識と観点がまるでない。オミクロン株は日本人にとって弱毒性のウィルスとは決して言えない。これほど死者数を出し、全国で救急搬送困難事態を惹起させているのだから、軽視してよい感染症ではない」と述べ、何もかもアメリカに準じればいいという考え方を批判し、もしも今年アメリカで死者数が増加する新変異種が出現すれば、また日本でも騒ぎ始めるだろうと皮肉っています
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オミクロン株のファクターX - 中国・日本での感染爆発と医療崩壊
                         世に倦む日日 2023年1月22日
前回、ワクチンは効かないのではないかと書いた。この疑念をタイトルに入れて記事にすることは多少の勇気を要する問題だった。ワクチンの効果を疑う意見を上げると、途端に「反ワク」のレッテルを貼られ、「陰謀論者」だと断罪されて一方的に攻撃対象にされる。そういう思想環境が固まっていて、ワクチンについては絶対に懐疑の念を抱いてはいけない、躊躇を口にしてはいけないという強制的圧力の空気がある。タイトルに「ワクチンは本当に効くのか」と書いたので、右翼や左翼から誹謗中傷のリプライ・ラッシュが来るかもしれないと気を揉んだ。だが、それは杞憂に終わり、無視と放置だけで済んでいる。一方、最近になって、専門家の中でもワクチンの効果を疑問視する者が現れ始めた

例えば、城戸康年は18日のMBSの記事の中で、「3回接種していれば十分で、4、5回目のあきらかなメリットは明確でない」と発言している。従来の定説を覆す主張だ。また、岡田正彦は16日の女性セブンの記事で、「ワクチンを接種すればするほど、コロナにかかりやすくなる可能性は否定できない」という(異端的な)見解を示している。さらに、小島勢二も「ワクチンの接種回数が増えると感染しやすくなる」と断じている。米国のWSJも同様の報道をしたようだ。英国ではもっと早い時期から、ブースター接種がコロナに対する免疫力を薄めていると喝破した専門家がいて、EUの医薬品規制当局も、その流れの中で「ブースター接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れがある」と1年前に警告している。

■ 中国と日本で空前の感染爆発はなぜ?
私は一つの仮説を思いついていて、それはオミクロン株の特性と人種の免疫属性の相関関係である。コロナウィルスは登場する変異株によって特性を持ち、その感染の規模や症状の度合は人種・民族によって異なっていた。3年間を振り返ると、素人ながらその事実経過に思い当たる。現在、オミクロン株が猛威をふるっているのは中国と日本だ。日本は過去最高の死者数を出していて、WHOの集計で、昨年12月26日から今年1月1日までの週間死者数は世界第2位、週間感染者数は第1位となっている。死者数1位は中国だろう。北京大の研究チームが、感染者数の累計が人口全体の6割となる9億人に達したというデータを出し、先週からずっと話題になっている。この1か月間の死者数は6万人。だが、これは病院で死んだ数にすぎず、実際はもっと多い。

オミクロン株は東アジアで感染爆発を起こしている。オミクロン株BA.5が従来株にない感染力の強さを持ち、抗体をすり抜けやすい性質を持っている点は、昨年7月のマスコミ報道でも言われていた。ハーバード大と米FDAは、この株に対応するワクチン開発を勧告していて、ファイザーとモデルナは秋までに準備したことになっている。実際、そうだったのだろうし、その結果、一定の予防効果があり、今冬のコロナ感染はアメリカやヨーロッパではさほど深刻な被害にならなかった。オミクロン株の毒性が低かったこともあり、欧米では特に脅威ではない状態になっている。しかし、中国と日本では過去にない感染爆発が起きて死屍累々の惨状なのだ。BA.5の後に出た新変異種BQ.1系の凄まじい感染力の結果であり、毒性が低くても医療崩壊を起こし、膨大な高齢者の死者数を積み上げている

■ 3年間の変異種発生と人種・民族の感染パターン
欧米と日本とのこの違いは何なのか。何に由来するのか。私は、ファイザーとモデルナの手抜きに見える。日本政府のミスとも言える。日本人の十分な治験がないまま製品出荷されているため、現行のワクチン接種では日本人の身体にBQ.1系に対応する抗体をよく作れていない、あるいは、BQ.1が抗体をすり抜ける程度が東アジア人の場合高いのだろう。素人だから言えるアバウトな直観と着想だが、この推理と論点を置けば、中国と日本の感染爆発の理由を簡単に説明できる。コロンブスの卵だ。ファイザーとモデルナの手抜きと言っても、もともとBQ.1の治験の時間もないのに、確実に地球上の全人種に効くワクチンを作れと注文する方が無理に違いない。岡田晴恵が言っていた「ワクチンは国防です」の言葉が重く響く。パンデミックのウィルスと言っても、各変異種の症状や被害は人種・民族で異なるのだ。

不正確を恐れず、大雑把に整理すると、2020年の最初の流行で猛威をふるったのはアルファ株であり、アメリカとヨーロッパで深刻な被害を出した。感染者数も死者数もアメリカが飛び抜けて多かった。この禍により、トランプは大統領再選を阻止された。東アジアの感染の程度は軽かった。翌21年に厳しい犠牲を出したのは、強毒性のデルタ株に襲われたインドである。デルタ株はインド株と呼ばれた。酸素ボンベの奪い合いとか、ガンジス河畔の火葬光景とか、恐ろしい地獄絵が目撃された。そして3年目、昨22年は世界のどの地域も比較的平穏で、コロナ(オミ株)の弱毒化が言われ、WHOも出口が展望できたと楽観論を口にする状況になった。だが、年末になり、日本と中国で感染爆発と医療崩壊が起き、過去最高の死者数が報告されている。3年間のコロナ禍の中で、日中は最も甚大な被害に直面した。

■ ファクターX論の消滅、mRNA防疫とウィズコロナへの一元化
オミクロン株と東アジア人との相性があるのではないか。そう考えれば一つの合理的な説明となる。人種・民族の生体形質や免疫属性とコロナウィルスの関係性の問題については、1年目はずいぶん分析と試論が提起された。専門家や権威が持論を上げ、大学研究機関が学説を出し、マスコミが連日かまびすしく報道した。池田信夫がBCG説を出し、山中伸弥が「ファクターX」説を唱えた。池田信夫の説は、BCG接種を義務化していた東アジアと東欧でコロナの死亡率が低いという指摘で、同じドイツ内でも旧東独地域で感染率・死亡率が低いという分析は関心を惹いた。山中伸弥のファクターX論は、①マスク着用率の高さ、②コンプライアンス意識の高さ、③遺伝子的背景、④免疫学的特性が上げられ、本人による③と④の具体論の展開はなかったが、小林弘幸が「メモリーT細胞」という「交差免疫」論を提唱している。

が、コロナ禍が2年目に入ると、そうした問題への科学的関心は急速に衰え、mRNAワクチンを打てば感染予防は大丈夫という結論になり、ウィズコロナでコロナと共生することが唯一の解だという帰結になって行く。米国製のmRNAワクチンが世界標準のコロナ予防策となり、英米発の知見と対応モデル(ウィズコロナ)が普遍的だという態度に一元化された。その結果として、現在の5類引き下げとか、屋内でもマスクを外すことを推奨という、あり得ないネオリベ政策への移行が現実になっている。要するに、アメリカと同じにすればいいという認識と思考だ。コロナの新変異種はアメリカから入るものであり、その発症態様や重症度や感染力もアメリカでのそれが日本人でも同様に再現されるのであり、したがって防疫政策もアメリカと同じ内容をやればいいという判断と決定があり、われわれはそれを実行している。

■ 日本の政府・マスコミ・専門家による被害の過小評価
人種・民族で免疫属性が異なり、同じウィルスでも被害の度に差があるという発想が消えている。パンデミックの対応や予防を、アメリカに合わせるという考え方が先にあって、だから(植民地らしく)すべてアメリカと同じにアライン 一直線に並べるするのだ。日本ではこれほど空前の死者数を出しているのに、アメリカではオミ株の被害がさほど深刻でないため、日本の政府とマスコミと御用専門家は、「風邪と同じだ」と言うのであり、被害を過小評価する言説をマスコミとネットで撒き散らしている。コロナ対策で発言する政府とマスコミと専門家は、頭がアメリカ人なのであり、日本とアメリカでは事情と前提が違うという意識と観点がまるでない。本来、オミクロン株は日本人にとって弱毒性のウィルスとは決して言えない。これほど死者数(1日500人)を出し、全国で救急搬送困難事態を惹起させているのだから、軽視してよい感染症ではない

だが、御用専門家たちは弱毒性だと平気で言い、嘗てない救急搬送困難の現状を「コロナと共生する新しい日常」だと平然と言う。私には、この態度は非科学的狂気にしか見えず、カルトと言うほかない。報道1930は、ウクライナ戦争が始まる前は、デイリーのコロナ報道を始めの30分間やっていた。ウクライナ戦争が始まってからは、ウクライナ戦争の(ニュースではなくプロパガンダの)時間を30分入れ、コロナについては報道をやめた。おそらく、アメリカでコロナの感染禍が減って関心がなくなったからであり、アメリカの状況に合わせた報道編成にしているのだろう。死者数が過去最高になっても、それは高齢者が持病の悪化で死んでいるのだから仕方ない、という冷酷な見方で済ませている。一昨年は、ひなたクリニックの田代和馬の訪問診療にスポットが当たり、保険証を持っているのに病院で治療を受けられず、自宅で命を落とす高齢者の悲劇が繰り返しテレビで紹介された。

今回は、一昨年よりも多い数の高齢者が、医療から見捨てられて自宅で死んでいる。それは間違いない。なぜなら、病院のキャパは同じで、病床が満床で入院を拒否されているのだから、過去最高のコロナの死者を出しているということは、一昨年以上にコロナ患者が自宅で命を落としているということを意味する。だが、その事実が報道されない。正視されない。テレビの話題にならない。公論に上がらない。無視され、捨象され、平常視されている。5類移行を正当化し、積極推進する論者の声ばかりがマスコミを埋めている。たぶん、今年アメリカで死者数が増加する新変異種が出現すれば、また日本でも騒ぎ始め、政府の対応が変わってマスク着用を言い出し、報道1930がコロナのニュースを定番に据え直すだろう。中国で9億人が感染者となり、その中の無症状者が春節で海外に出ているのだから、どこかでまた想定外の新変異種が生まれておかしくない。