2013年10月31日木曜日

NSC法案審議 いまなぜ「戦争司令部」なのか

 元国務長官大統領補佐官を務めたコンドリーザ・ライス氏の回顧録には、9.11同時テロ(2001年)のあと、アフガニスタンへの攻撃やイラクへの侵略を強行したアメリカNSCでの議論が生々しく綴られてるということです。
 大統領が全ての決定権を持ち、世界中の要人の電話を盗聴し、各地で戦争や謀略まがいの紛争を起しているアメリカにとっては、緊急な討議が出来て大統領の政策決定に役立つNSCの制度は合っているのかもしれませんが、日本はそうした戦争司令部的な組織を必要としていません。

 総理大臣が一刻を争って物ごと決めなければならないというような事態はあり得ないのに、なぜ日本にもNSC(国家安全保障会議)を創設しなくてはならないのでしょうか。日本には既に「安全保障会議」もあるし、危機に対応する「内閣危機管理監」官邸に常駐するシステムになっています。
 新たに首相を含む4人のメンバーによる日本版NSCを作り、アメリカの要求に基づいて「秘密保護法」を作ってその内容をベールで隠そうとしているのは、アメリカの最新の軍事情報が得られるようにしようという意図にほかなりません。より深くアメリカに従属して行けば、いつかは抜き差しならない事態に立ち至る惧れは十分にあります。安倍首相はむしろそれを望んでいるのかも知れません。
 日本版NSCが『戦争司令部』と呼ばれる所以です。

 30日付のしんぶん赤旗の主張を紹介します。
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主張 NSC法案審議 いまなぜ「戦争司令部」なのか
しんぶん赤旗 2013年10月30日
 アメリカのブッシュ前政権で国家安全保障担当大統領補佐官や国務長官を務めたコンドリーザ・ライス氏の回顧録が話題です。2001年9月11日のアメリカ「同時テロ」のあと、アフガニスタンへの攻撃やイラクへの侵略を強行したアメリカの国家安全保障会議(NSC)での議論が生々しくつづられています。まさに「戦争司令部」そのものです。日本でもアメリカのNSCをまねた「日本版NSC」を設置しようという法案の審議が始まりました。いったい、いまなぜ日本に「戦争司令部」をつくろうというのか。

アメリカをまねて
 日本版NSC設置法案の趣旨説明と質疑がおこなわれた先週の衆院本会議で、日本共産党の赤嶺政賢議員は、「現代版の大本営、戦争司令部をつくろうというのか」と、安倍晋三首相を追及しました。安倍首相は否定しましたが、「戦争司令部」をつくるのでなければ「日本版NSC」は必要ないし、国民の目、耳、口をふさぐ秘密保護法と一体で同法案を成立させようとする安倍首相が、アメリカといっしょに「海外で戦争する国」をねらっているのは自明のことです。

 「日本版NSC」は、「防衛」や外交など「安全保障」の基本方針を検討するために、首相、官房長官、外務、防衛の「4大臣会合」を定期的・機動的に開催、安全保障担当の首相補佐官や「国家安全保障局」を新設して、官邸主導で、「外交・安全保障政策の司令塔」役を果たせるようにしようというものです。まさにアメリカにあるNSCの“焼き直し”です。

 日本にはいまも「安全保障会議」があり、首相以下の閣僚が「防衛」問題を協議しているほか、北朝鮮のミサイル発射など「重大緊急事態」にも対処することになっています。地震や台風など自然災害や大事故に対しては、「内閣危機管理監」が首相官邸に常駐しています。安倍首相は「日本版NSC」設置の目的を、「官邸主導で」「機動的に」対処するためといいますが、それだけならいまの体制を強化するだけでもいいはずです。現にこれまでの自民党政権でも、安倍政権以外では「日本版NSC」の設置が問題になりませんでした。

 問題は安倍政権が、「日本版NSC」の設置だけでなく、「国家安全保障戦略」の作成や「集団的自衛権行使」の検討など、日本の軍事力を強化し日米軍事同盟を強化する路線を前のめりで進めていることです。安倍首相が「厳しさを増す安全保障環境に対処するには、首相官邸の司令塔機能を強化するのが不可欠」と繰り返しているように、「日本版NSC」も日本の「軍事強国」化を支えるのがねらいです。そんな「日本版NSC」を「戦争司令部」と呼ばずにいったいなんと呼べばいいのか。

戦争への道阻止するため
 「日本版NSC」をつくり、秘密保護法を制定して、安倍政権がアメリカから手に入れようとしている最新の軍事情報は、日本が海外で「戦争する国」にでもならない限り必要としないものです。アメリカのNSC同様、「日本版NSC」も戦争体制そのものです。
 憲法で戦争を放棄した日本が、「日本版NSC」のような戦争体制をつくること自体、憲法を踏みにじるものです。戦争への道を阻止するために「日本版NSC」法も秘密保護法も廃案にすべきです。