2013年10月22日火曜日

首相が結論ありきの私的諮問機関を多用 +

 東京新聞が21日、「核心知っておきたいこと」として首相の私的懇談会を取り上げました。
 いま機能している、
 集団的自衛権を行使できるよう憲法解釈の変更を議論する安保法制懇安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)、
 それを「国家安全保障戦略」に取り込もうとする安防懇安全保障と防衛力に関する懇談会)、
 あるいは特定秘密保護法案併せて成立を目指している日本版NSC(国家安全保障会議の創設に関する有識者会議
 などは、いずれも首相が強い意欲をもって実現しようとしている『国防力強化』を課題にするものですが、これらはすべて首相の私的諮問機関であり、その人選は首相が行っています。(上記の青字は略称)
 
 そこでは当然首相が望むままの結論が得られ、細部に至るまで首相の意向に沿ったものになります。
 問題はそれを第三者機関による決定と装うことができる点で、公明党代表「首相の私的諮問機関だから、政府の取り組みでもなければ、与党の取り組みでもない」とくぎを刺したように、一般には公正な第三者機関の意向とか、政府乃至自民党の総意によるものと勘違いされることです。

 牧原東大教授は、安倍首相はそうした諮問機関に、自分と意見の近い人だけを入れていて、世論を反映するものになっていないと指摘しています。
 まさに安倍首相の誠実さが問題とされています。

 +「有識者懇、武器三原則見直し明記 「国家安全保障戦略」概要まとめ」を追加
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【核心】 首相、私的諮問機関を多用 結論ありき 偏る人選
 東京新聞2013年10月21日18:30 
 安倍晋三首相が憲法解釈の変更など重要な政策課題を私的諮問(しもん)機関に委ねるケースが目立っている。メンバーは首相の主張に近い有識者が選ばれ、結論はおのずと意に沿ったものとなる。それを根拠に首相がやりたい政策を正当化する手法だ。
法的な根拠のない私的懇談会が事実上、政策決定を担うやり方に疑問の声が上がっている。 (後藤孝好)

■安倍政権の主な私的諮問機関 
・安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会
・安全保障と防衛力に関する懇談会
・国家安全保障会議の創設に関する有識者会議
・ふるさとづくり有識者会議 
・少子化危機突破タスクフォース

■法的根拠なく政策決定 
 代表例は、集団的自衛権を行使できるよう憲法解釈の変更を議論している私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」だ。 
 首相の私的諮問機関は、首相の求めに応じて学者や専門家が議論し、意見をまとめて報告する。同じ有識者会議でも、法令に基づく審議会と違って法律の根拠はない。政府は「意見交換の場」と位置づけるが、首相の決裁でつくられるだけに、政策決定と無縁であるはずはない。 

■指針関係なし 
 人選も首相の意のまま。審議会には委員の意見、学識などが公正かつ均衡(きんこう)の取れた構成にするという指針があり、それに基づき委員が選ばれる。それでも事務局を務める役所に都合のいい人選になっているとされるが、私的諮問機関にはこの指針すら適用されない。
 安保法制懇のメンバー14人は全員、講演や論文で集団的自衛権の行使を容認する考えを明らかにしている。世論調査では行使容認に反対する意見が多いのに、安保法制懇は首相と同じ賛成派で固められた。国民の多様な意見を反映する場にはならず、賛否を公平に議論する会議の運営は望めない。 
 また、審議会の指針では、役所出身の委員への起用はできる限り避けると規定されているが、安保法制懇には外務省と防衛省・自衛隊のOBが4人も入っている。 

■謝礼は税金 
 ちなみに、私的諮問機関は法的な裏付けがないのに、メンバーには会合ごとに謝金1万~2万円と交通費が税金から支払われる。担当者は「私的な懇談会とはいえ、審議会などと同等に重要な意見を聞く場なので、出席者には審議会に準じた謝金を支払っても問題ない」と説明する。 
 安倍政権は安保法制懇のほか、国家安保戦略や防衛大綱の見直しを話し合う「安全保障と防衛力に関する懇談会」や日本版「国家安全保障会議(NSC)」を創設するための会議を設置。安倍色を前面に出した政策の具体化を進めている。 
 こうした手法に、与党内から警戒感も出ている。公明党の山口那津男代表は集団的自衛権の行使容認に向けて議論を進める安保法制懇について「首相の私的諮問機関という位置づけだから、政府の取り組みでもなければ、与党の取り組みでもない」とくぎを刺す。 

【国民的合意得られず  牧原出・東大教授】 
 有識者会議のあり方について、東京大先端科学技術研究センターの牧原出(いづる)教授(政治行政システム)に聞いた。 

─重要な政策決定で私的諮問機関を使うことに問題はないか。 
 「法令上の機関ではなく、正当性は低いが、首相が自らのアイデアを具体化する時、官邸には専門スタッフがいないので、他にやりようがないという現状はある。これまでの政権では、バランスが取れた人材を選ぶことが多かったが、安倍首相は自分と意見の近い人だけを入れている」 

─偏ったメンバーの私的諮問機関では世論を反映できない。 
 「結論ありきに見えるのは問題だ。憲法解釈を変えるような問題では、どうやって国民的な合意をつくるかが問われる。進め方が性急に見え、これでは国民の支持はあまり高まらないのではないか」 

─どんな手法が望ましいのか。 
 「与野党が合意して国会に設置した有識者による東京電力福島第一原発の事故調査委員会は一つのやり方だ。議論の場は広がっているが、今の政権はいろいろな可能性を試す方向にはかじを切っていない」 


有識者懇、武器三原則見直し明記 「国家安全保障戦略」概要まとめ
東京新聞 2013年10月21日
 安倍首相が設置した有識者による「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・北岡伸一国際大学長)は21日、外交と安全保障の包括的な指針となる「国家安全保障戦略」の概要をまとめ、武器や関連技術の輸出を原則的に禁じる「武器輸出三原則」の見直しを明記した。中国や北朝鮮の軍事力増強を脅威と位置付け、領域保全強化や海上安全保障の確保を打ち出した。
 基本理念として、「積極的平和主義」を掲げた。
 政府は今後、概要を基に与党や関係省庁と調整して最終案をつくり、12月に新防衛大綱とともに閣議決定する。(共同)