2013年10月27日日曜日

秘密保護法反対の社説ばかり

 25日の特定秘密保護法の閣議決定を受けて、26日の社説は秘密保護法反対で埋まりました。
 目についたものだけでも下記の通りです。 

秘密保護法案 国会は危険な本質見よ                  毎日新聞
NSC法と秘密法 「一体」が危険浮き彫りにする              しんぶん赤旗
特定秘密保護 この法案に反対する                     朝日新聞
秘密保護法案 廃案にすべき「悪法」だ暗黒社会を招きかねない 琉球新報
秘密保護法案を閣議決定 国民の懸念踏まえ審議尽くせ      西日本新聞
秘密保護法案提出 民主主義を危うくするな               徳島新聞
特定秘密保護法案 保障されぬ 「知る権利」               中国新聞
秘密保護法案 民主主義の根幹が揺らぐ                 山陽新聞
秘密情報収集 自由の侵害に歯止めを                   京都新聞
特定秘密保護法案 拭えない 「知る権利」 侵害             福井新聞
特定秘密と情報公開 チェックの仕組み整えよ              岐阜新聞
秘密法国会へ 議会政治が危うくなる                     信濃毎日新聞
特定秘密保護法 行政の恣意に懸念残る                 神奈川新聞
特定秘密と情報公開 検証の仕組みを整えよ              茨城新聞
秘密保護法案提出 国会の良識が問われる               岩手日報

 琉球新報と朝日新聞の社説を紹介します。
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社説 秘密保護法案 廃案にすべき「悪法」だ 暗黒社会を招きかねない
琉球新報 2013年10月26日
 あまりに問題の多すぎる法案だ。政府は特定秘密保護法案を閣議決定し、国会に提出した。だがこれは国民を目隠しし、国民主権を根底から壊しかねない。成立させてはならず、廃案にすべきだ。
 問題は、何が特定秘密に当たるか、閣僚など「行政機関の長」が恣意(しい)的に決められる点だ。
 確かに、法案の別表は「外国との交渉内容のうち国民の生命、領域保全その他の安全保障に関する重要なもの」などと対象を列挙する。だが何が「重要」か、なぜ「重要」なのか、国民には点検のしようがない。これでは恣意的運用を排除したとは到底言えない。

単なる努力義務
 有識者会議で統一的な運用基準を作ると政府は強調する。だが有識者を選ぶ段階で批判的な識者は排除されるだろう。恣意的指定に歯止めがかかるとは思えない。
 併せて審議される情報公開法改正案で、秘密指定が適切かどうか裁判所が内々に見て判定する「インカメラ審理」を規定するから、透明性は確保したと政府は主張する。だが裁判所は、「統治行為論」の名の下に政府決定の追認を繰り返してきた。全権委任の対象になり得るのか
 政府はまた、法案に「知る権利」や「報道・取材の自由」の記述を追加したと強調する。だがそれは単なる努力義務にすぎない
 報道機関の行為が「不当でない限り正当な業務」とするというが、何が「不当」か決めるのは政府だ。恣意的運用はいくらでも可能である。事実、森雅子担当相は、沖縄返還密約を暴いた時のような行為は処罰対象と公言した。恣意性を告白したようなものだ。
 従来の国家公務員法の守秘義務規定は罰則が最大懲役1年だ。法案はそれが10年となる。行政内部の善意の告発者に対する萎縮効果は計り知れない。
 「不当でない限り」という条件は「違法性阻却事由」である。無罪の要件になるというだけであり、逮捕も家宅捜索もありうる。報道機関を家宅捜索すれば告発者の身元を示す資料が国の手に渡る可能性がある。内部告発者を萎縮させるには十分であろう。
 何しろ日本は密約の「実績」にはこと欠かない。隠蔽(いんぺい)圧力が強まる秘密保護法ができれば、時の政権や官僚に不都合な事実が今以上に隠蔽されるのは間違いない。
 そもそも政府は公僕の集合体であり、政府の情報は国民の共有財産であるはずだ。情報がなければ正しい判断もできない。秘密保護法は国民主権の基盤も壊すのだ。

市民社会への威嚇
 さらに問題なのは、市民社会への威嚇になっている点である。
 空証文にせよ「報道の自由」は法案に記されたが、NPOや市民団体が行政情報に接近する行為は何ら保護されていない
 例えば、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間基地配備計画について、17年前に政府は知っていながら米側に隠すよう求め続けた。それを示す「高見沢文書」は、市民団体が米国の公文書から見つけ出したが、そのような行為すら「秘密保護法違反」に問われかねない。その意味でこの法案はまさに「政府保護法案」であり、「国民監視法案」なのである。
 情報が闇から闇に葬られかねないのも問題だ。今も防衛秘密は、秘密解除した例が制度創設以来1件しかなく、秘密のままの廃棄は直近5年間で約3万4千件に上る。期限が来れば自動的に文書を公開する仕組みがないからだ。秘密保護法案も同様なのである。
 そもそも法案が必要なのか。政府が事例として挙げた過去の情報漏えい事件は、いずれも現行の法体系で防止できた。日弁連の提言する通り、むしろ情報管理システムの適正化を急ぐべきであろう。

 法成立後は、例えばテロ対策が名目の公共事業は、税金の使途として妥当か検証できなくなる。原発事故も秘密にされかねない。そんな暗黒社会を招来しそうな法はやはり「悪法」と呼ぶほかない。

社説 特定秘密保護―この法案に反対する 
朝日新聞 2013年10月26日
 安倍政権はきのう、特定秘密保護法案を閣議決定し、国会に提出した。 
 法案は、行政府による情報の独占を許し、国民の知る権利や取材、報道の自由を大きく制約する内容だ。その影響は市民社会にも広く及ぶ。 
 政権は、いまの国会での成立をめざしている。だが、与党が数の力を頼みに、問題だらけの法案を成立させることに強く反対する。 
 北東アジアの安全保障環境の悪化に対応するため、国家安全保障会議(日本版NSC)と呼ばれる外交・安保政策の司令塔を新たにつくりたい。そこで米国などと機密情報を交換、共有するためには、秘密保全の仕組みが必要だ――。これが、政府・与党の言い分だ。 
 安全保障には国家機密が伴うだろう。そうした機密を守るために、自衛隊法などが改正されてきた。 
 今回の法案で示された秘密保護のやり方は、漏洩(ろうえい)を防ぐという目的を大きく踏みはずし、民主主義の根幹を揺るがすおそれがある。 

■市民も無関係でない 
 具体的にみてみよう。 
 まず、特定秘密に指定され、保護される情報の中身。防衛、外交、スパイを念頭にした「特定有害活動」の防止、テロ防止の4分野が対象だ。法案の別表には、分野ごとに4~10項目が列挙されている。 
 限定されているようにも見えるが、例えば防衛分野には、「防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報」との項目がある。「その他の重要な情報」と判断すれば、何でも指定できてしまう。しかも、何が指定されたのか、外から検証する手立てはない。 
 2007年には陸上自衛隊の情報保全隊が、自衛隊のイラク派遣に反対する市民らの情報を集めていたことが明らかになった。こうした個人の情報が、知らぬ間に特定秘密にされてしまう可能性だってある。 

 いったん特定秘密に指定されてしまえば、将来にわたって公開される保証がないことも大きな問題だ。 
 特定秘密の指定期間は最長で5年間だが、何度でも延長することができる。特定秘密を指定するのは、外相や防衛相、警察庁長官ら「行政機関の長」とされているが、何を指定し、どれだけ延長するかは実質的には官僚の裁量に委ねられる。 
 与党との調整で、30年を超えて秘密指定を続けるときは内閣の承認が必要との条件が加わった。それでも、第三者がチェックする仕組みはない。 
 要するに、情報を握る役所がいくらでも特定秘密を指定でき、何を指定したか国民に知らせないまま、半永久的に秘密を保持することができるのだ。 

■立法府の活動も制約 
 情報から遠ざけられるのは、行政を監視すべき国会議員も例外ではない。議員が特定秘密の提供を求めても、審議の場を「秘密会」とし、内容を知りうる者の範囲も制限される。疑問を感じても、同僚議員に訴えたり、秘書らに調査を命じたりすれば、処罰されかねない。 
 政府は、特定秘密も情報公開請求の対象になるという。ただ、何が指定されているかわからなくては、公開請求すること自体が難しい。 
 数々の批判を受け、安倍政権は「国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならない」との一文を条文に加えた。 
 取材についても、「法令違反または著しく不当な方法によるもの」でなければ「正当な業務」だと規定した。 
 公明党は、これによって国民の権利には配慮したというが、まったく不十分だ。 

■まやかしの知る権利 
 「知る権利」を無理やり条文に入れ込んだものの、単なる努力規定で、実効性はない。「不当な取材方法」とは何かもはっきりしない。 
 特定秘密を扱う公務員や防衛関連企業の社員らは、適性があるかどうか個人情報をチェックされる。特定秘密を漏らせば最長で懲役10年が科せられる。故意でなくても罰せられる。 
 不正に特定秘密を得たり、漏らすことをそそのかしたりした者も、報道機関の記者に限らず罪に問われる。 
 社会全体に及ぼす威嚇効果は極めて大きい。ふつうの情報の開示でも、公務員が萎縮してしまうおそれが強い。 

 民主党はきのう、「知る権利の保障」を明記した情報公開法改正案を再提出したが、この法案は昨年末にいったん廃案になっていた。閣議などの議事録を保存し、一定期間後に公開するための公文書管理法の改正も手つかずだ。 
 政府がもつ情報は、本来は国民のものだ。十分とは言えない公開制度を改めることが先決だ。そこに目をつぶったまま、秘密保護法制だけを進めることは許されない。