2013年10月9日水曜日

在特会の街宣行動 京都地裁判決要旨

 在特会の街宣行動等について下した京都地裁判決の要旨が、8日付の京都新聞に載りました。
 それによると被告たちの行為は人種差別撤廃条約1条1項で定義されている「人種差別」に当たるとし、2条1項および6条の要請に基づいてそれらの行為は禁止され、被害者には効果的な保護および救済措置、差別の結果被ったあらゆる損害に公正かつ適正な賠償が確保されなければならない、としています。
 そして賠償額は人種差別行為に対する効果的な保護および救済措置となるような額を定めなければならず、無形損害の金銭評価は高額なものとなる、とされました

 きわめて明快な判決であり、児童や教職員を畏怖さ業務を妨害し、名誉を損な法行為には、表現の自由などは紛れ込む余地がないことも明らかにされました。

 なおヘイトスピーチ判決に対しては、新聞各紙は8日だけでも下記のような社説を掲げ、在特会の行為の反社会性を糾弾しています。

ヘイトスピーチ  差別許さぬ当然の判決        毎日新聞
ヘイトスピーチ  「言論の自由」 守るには         東京新聞
ヘイトスピーチ  司法からの強い戒め         朝日新聞 
ヘイトスピーチ判決 条約違反の人種差別だ      沖縄タイム
ヘイトスピーチ  憎悪の連鎖を断ちたい            南日本新聞
ヘイトスピーチ  表現の自由を越えている         高知新聞
ヘイトスピーチ  言葉の暴力を断ち切ろう          徳島新聞
ヘイトスピーチ  反感増幅の連鎖断ち切れ        山陰中央新報 
ヘイトスピーチ  差別あおった責任は重い         神戸新聞 
ヘイトスピーチ  差別する自由などない             京都新聞 
ヘイトスピーチ判決  憎悪の連鎖断ち切りたい    岐阜新聞 
ヘイトスピーチ  許さない社会合意を                信濃毎日新聞
ヘイトスピーチ  増悪の連鎖を断ちたい             茨城新聞 
 
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在特会訴訟、京都地裁判決の要旨
京都新聞 2013年10月8日
 京都朝鮮学園が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などに対し、損害賠償と街頭宣伝禁止を求めた訴訟で、京都地裁が7日、言い渡した判決の要旨は次の通り。

 3度の示威活動および映像公開行為はいずれも、児童や教職員を畏怖させ、通常の授業を困難にし、学校を世間の好奇の目にさらし、学校で平穏な教育事業を行う環境を損なった。原告の学校法人としての業務を妨害するもので、それに伴って行われた発言は原告の名誉を損ない、不法行為に該当する。

 人種差別撤廃条約1条1項は「人種に基づく区別、排除、制限など、あらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権および基本的自由を享有することを妨げる」行為を「人種差別」と定義する。2条1項および6条は、わが国を含む締結国に「すべての適当な方法により、いかなる個人、集団または団体による人種差別も禁止し、終了させる」ことを求め「管轄下にあるすべての者に、裁判所を通じてあらゆる人種差別の行為に対する効果的な保護および救済措置を確保し、差別の結果被ったあらゆる損害に公正かつ適正な賠償または救済を求める権利を確保する」ことを求めている。

 示威活動が行われた経緯や、朝鮮学校を「日本からたたき出せ」「ぶっ壊せ」と言い、在日朝鮮人を「ゴキブリ」「ウジ虫」と呼ぶ活動での発言内容に照らせば、在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図のもとに示威活動および映像公開行為をしたと認められ、1条1項にいう人種差別に該当する。

 これらの名誉毀損(きそん)行為は、授業中の学校近くで拡声器や街宣車を用い、著しく侮蔑的、差別的な多数の発言を伴い、条約が禁ずる人種差別に該当する。「もっぱら公益を図る」目的で行われたと評価することができず、違法性ないし責任が阻却される余地はない。

 示威活動と映像公開行為は密接に関連し、民法の共同不法行為だ。また、在特会などは使用者責任も免れない。その結果、在特会や示威活動で主要な役割をし、映像公開行為に関与した被告は、原告に生じた損害につき連帯して賠償する責任を負う

 賠償すべき損害はスピーカー損壊などの経済的損害のみならず、業務妨害と名誉毀損で生じた無形損害全般に及ぶ。人種差別となる行為が損害を発生させている場合、裁判所は条約上の責務に基づき賠償額の認定を行うべきと解される。賠償額は人種差別行為に対する効果的な保護および救済措置となるような額を定めなければならず、本件の場合、無形損害の金銭評価は高額なものとならざるを得ない。

 無形損害に対する賠償額は1回目の示威活動及び映像公開行為から生じたものが550万円、2回目と3回目で生じたものが各330万円と評価するのが相当である。