赤旗日曜版の29日号に、TPPに関する元大蔵省財務官 榊原英資氏の見解が載りました。
榊原氏はTPPに「慌てて飛び乗る必要などない」、「米大企業の要求をそのまま主張するのが米政府だ。それで当然と思っている。いま日本は断固守るべき国益を考えるべきだ」と述べています。
20年前の「日米構造協議」でアメリカと激しく渡り合っ人だけに、同じくTPPの本質=アメリカの本当の狙いを語るにしても説得力があります。
以下にしんぶん赤旗日曜版の記事を紹介します。
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「TPP秘密主義」 大企業と一体の米政府
青山学院大学教授、元大蔵省財務官 榊原英資
しんぶん赤旗日曜版 2013年9月29日号
TPPの本質は、アメリカが環太平洋という枠組みで、アジアの成長の果実を享受するための経済協定です。
他方、いま日本は輸出の20%が対中国で、対米輸出は15%です(2011年)。日本の最大の経済的パートナーは中国です。日本はTPPがなくてもすでに東アジア経済圏に入っていて、その果実を享受しています。ですから、TPPに、日本がいま慌てて飛ぴ乗る必要などないのです。
TPPは関税引き下げ交渉だと思っている人が多いですが、それは違います。アメリカはアメリカ型の貿易ルールを広げるのがねらいです。政府調達(公共事業入札)、知的財産、金融サービスなど実に21もの交渉分野があり、関税はその一つにすぎません。21分野でのアメリカの対日要求は、一言でいえば、「日本の制度をアメリカ化しろ」ということです。
私は約20年前、大蔵省の国際金融局次長として、「日米構造協議」で、保険分野の交渉を担当しました。アメリカ政府の要求は、巨大保険会社AIGの要求そのもので、AIGと交渉するようなものでした。日本では大企業と政府の“癒着”と批判されますが、アメリカは「AIGの利益はアメリカの国益。代弁するのは当然」という考えに徹しています。私の交渉相手だった役人はその後、AIGに“天下り”しましたが、それほど“一体”なのです。
いま、アメリカは、日本が地方の公共事業の発注で、地元の中小建設会社を優先するのは差別だと言っています。しかし、地元中小企業優先をなくせば地方の建設会社はつぶれてしまいます。
農業や郵貯・簡保でも同じです。日本は島国で、へき地や離島もある。銀行なら支店をおかないところがたくさんある。ですから郵便局をなくすわけにはいきません。
いまのTPP交渉は極端な秘密主義です。そこで、アメリカは産業界の要求をどんどんぶつけてきます。それが当然と思っています。
これにたいし、日本が断固守るべきものは何か、アメリカに何を要求するのか、という国民的議論が大事なのに、それが議論されていません。
「赤旗」は取り上げても (笑い)、多くの新聞が取り上げない。そんな状態でTPPに乗るよりも、東アジアとの経済協力を進める方が大事だと私は思います。