2013年10月16日水曜日

国民一人800万円の借金は大ウソ

 原子力工学者であり優れた文明批評家である武田邦彦教授(工学倫理)が、消費税増税のキャンペーンとしてNHKが「現在国民一人当たり800万円の借金を背負っている」と解説したことに対して、とんでもないごまかしで、それは「国民が政府に貸し付けている額」だと怒りのブログを書いています。
 教授は常々 NHKが政府にゴマをすって、政府の言い分をあたかも真実であるかのように報道していることに対して、公共の報道機関がそれでいいのかと批判しています。

 通常、政府の出す赤字国債を銀行が買うが、その原資は国民の預金なので、結局は国民が国債を買っていることになる。政府は、国債の償還費や利払いも、結局国民のふところ(=税金やあらたな国債など) で賄っている。
 要するに政府には自前の資金というものはなく手元の金は全部使い切るので、すべて国民の預金や税金で国債の購入やその利払いを重ねた結果、国民に対する借金が1,008兆円に積みあがったという論理です。
 そのようにして政府は借金の踏み倒しを繰り返しながら、自分たちの利権はちゃんと拡張してきたとも述べています。

 政府にはそのことをキチンと自覚させ、先ずは埋蔵金が保有できる会計システムを改め、官僚の天下り先=シロアリ増殖用の予算配分をやめさせることが、借金問題解決のスタートになります。
 以下に教授のブログを紹介します。
(青字部分をクリックすると音声版が聞けます)
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 「国民一人800万円」の借金?!
武田邦彦 2013年10月15日
 人間、穏やかなのが大切だが、時にはカッとなるのも悪くない.
 「日本国の赤字は1008兆円。国民一人あたり800万円の借金」という放送があった。政府の増税に応援する意図がハッキリしているが、NHKのいい加減な放送もここまで来ると倫理違反というより犯罪だろう.
 「日本国の対外資産、つまり外国に対してもっている債権は300兆円」で、借金などない。これは政府も発表し、NHKも報道している.
 ところが、「対外純資産」とか「赤字国債」というのは何となく難しいので、国民が相互の関係を良く理解できない、あるいは良く理解できる番組を作らないで、ごまかし、政府にゴマをすることができる。
 借金を背負っているのは「日本国」ではなく「日本政府」で、国債を中心に1008兆円の借金と言われている.これも「埋蔵金」などの資産を差し引いているかも不明だが、一応、これを政府の借金ということにしておこう。でも、これは「政府の借金」であり、「国の借金」ではない。
 さらに、日本の国民は借金を背負っているのではなく「債権」、つまり「お金を貸している」立場だ.外国には一人あたり約200万円、そして日本政府には約800万円を貸し付けている。「貸しているお金」がいつ「借金」になったのか!
 NHKの人の良さそうな顔をしたアナウンサーが、「国民一人あたりの借金は800万円!」と言うのだから騙される国民の責任にはならないだろう。今度の消費増税は、奇妙なものなので、それを隠蔽することを政府からNHKが求められたのだろう。
 政府の借金1008兆円が、国民の借金になるためには、「政府は借りた金を返さず、踏み倒すのが当然だ」という前提がいる。つまり、この20年、次のように進んだ。

1) 政府が国民に「節約」を呼び掛ける、
2) 国民がそれに応じて「節約」をする、
3) 「節約」をするとお金が余るので銀行に預金する、
4) 国民が節約しているので銀行は民間に貸し出すことができない、
5) 銀行は政府の「国債」を購入する、
6) 政府はお金を天下り先に配る、
7) 銀行は償還期限の来た国債を政府に買い戻してもらう、
8) 政府はもともとお金を使い切っているので、国債を買い戻すお金はない、
9) 消費税を5%から10%にして国民からお金をとる、
10 国民は自分が貯金したお金をもう一度、税金として払う、
11 このトリックはNHKがいるかぎり国民をごまかす事ができる。

 ということになっている。これが今回の消費税の増税だが、本当の事が判ると国民が怒るだろう。だから、NHKを使って「国民一人あたり800万円の借金」という正反対のことを言わせた。
 なぜ、我々はこんなNHKに受信料を払わなければならないのだろうか?
(10月14日記)