2013年10月24日木曜日

文科省の教科書是正要求は撤回されるべき

 沖縄県八重山地区の竹富町が、中学校公民教科書の選定を巡る不明朗さから、町の有志の寄付を仰いで独自に東京書籍版を採用していることに対する文科省の度重なる介入の問題について、23日、八重山毎日新聞が「撤回されるべき是正要求」の社説を掲げました。

 社説は、八重山の教科書問題は、中国漁船の巡視船衝突による尖閣問題で、領土ナショナリズムが急激に台頭する中で起きており、それは偶発的でなく、八重山をターゲットに意図的に仕掛けられたものという見方があること、そして沖縄としては異例なことに八重山地区は、保守色の強い人々の往来や活動が目立つようになってきていることを紹介し、文科省の介入は、政治的思惑に基づく圧力と脅しであり、県・町の両教委は堂々と受けて立ち、逆にその不当性を追及すべきだと述べています

 文科省の力の入れ方を見ると、八重山地区を、平和志向の強い沖縄に保守的な教科書を採用させるための橋頭堡に位置づけようとしていると思わせます。特に沖縄県教委には、教委の主体性を守って文科省の介入を阻止することを望みたいものです。
     竹教委はあくまで「教科書の採択権は地教委にある」とする見解で沖縄県教委の対応を見守るとしているということです。
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社説 撤回されるべき是正要求
八重山毎日新聞 2013年10月23日
県教委と竹教委は国の脅しに屈するな
■文科省はなぜそこまで
 竹富町教育委員会が地区協議会の答申と異なる教科書を使用しているのは教科書無償措置法に違反しているとして文科省が18日、県教育委員会に地方自治法に基づいて是正要求したが、違法確認訴訟まで示唆した要求は政治的思惑に基づく圧力と脅しであり、両教委は堂々と受けて立ち、逆にその不当性を追及すべきだ。

 しかし、なぜ文科省はそこまでするのかと思う。そもそもこの問題は、中学の公民教科書に保守色の強い育鵬社版を採択したい玉津博克石垣市教育長の八重山地区採択協議会の規定無視や意図的な運営に端を発したものだ。
 竹教委は、その後の3市町教委の全教育委員による採決での育鵬社版否決を受け、地方行政法に基づき東京書籍の教科書を採択して使用してきた。そこに何らの瑕疵(かし)や違法性はないは専門家の見解だ。しかし文科省が教科書無償措置法の対象から除外したため住民から寄付された教科書を生徒たちに無償で配り2年目に入った。
 民主党政権はこれを容認したが、自民党政権は違法性を強く唱え、今回是正要求の強硬措置に踏み切った。

■育鵬社版でも是正要求?
 そこには「私を右翼の軍国主義者と呼んでもいい」と中国側を挑発した安倍首相の政治的思惑が見て取れる。それが恣意(しい)的な採択の経緯や教科書無償措置法と地方教育行政法の二つの法律の矛盾も無視しての、今回の保守色の強い育鵬社版教科書の強要だ。
 仮に石垣市教委や与那国町教委が現在と逆に東京書籍版、竹教委が育鵬社版を採択していたら、それでも文科省は竹教委に対し是正要求しただろうか。

 八重山の教科書問題は、中国漁船の巡視船衝突による尖閣問題で、領土ナショナリズムが急激に台頭する中で起きており、それは偶発的でなく、八重山をターゲットに意図的に仕掛けられたものとの見方があるのも確かだ。
 同問題を機に、本土のタカ派などから「偏向」批判される沖縄のマスコミの中にも、新聞の販売戦略として従来方針から一変、本土のメディアなどと通じて中国脅威論や尖閣危機を強烈にあおる保守色を前面に打ち出したメディアが登場、県内でも異例なことに八重山は保守色の強い人々の往来や活動が目立つようになってきた。そういう中での違法確認訴訟提起もにおわす今回の異例の是正要求には、やはりタカ派的安倍政権の政治的思惑を感じる。

■許すべきでない政治介入
 この是正要求は従わなくとも罰則はないが、果たしてこの圧力に県教委がどう対応するかだ。竹教委の委員はあくまで「教科書の採択権は地教委にある」として文科省に疑問を呈し、県教委の対応を見守るとしているが、両教委ともこの脅しともとれる国のやり方に屈するべきでないし、教育に政治介入を許すべきでないだろう。
 特に“一強多弱”の与野党勢力を背景に集団的自衛権行使容認や特定秘密保護法案の制定など、「積極的平和主義」を前面に掲げ、戦争する国に突き進む安倍政権に不安を感じている人は少なくないはずだ。そういう中で教育への政治介入を許してほしくない。