政府は10日、核兵器の非人道性と不使用を訴えるため、有志国が国連の場で調整を進めている共同声明に賛同して署名する方針を固めました。
田上長崎市長は8月の長崎平和宣言で、次のように世界に訴えて波紋を呼びました。
「日本が、核不拡散条約(NPT)再検討準備委で提出された核兵器の非人道性を訴える共同声明に署名しなかったのは、核兵器の使用を状況によっては認めるということに他ならない。それは二度と、世界の誰にも被爆の経験をさせないという、被爆国としての原点に反する(要旨)」
日本は、昨年のNPT再検討会議第1回準備委で初めて提案された核兵器の「非人道性」を訴える共同声明に、検討時間が足りないという理由で賛同しませんでした。今年4月の第2回準備委でも、事前にスイスなどから賛同を求められましたが、やはり米国の「核の傘」に依存する日本の安全保障政策と相いれないとして賛同しませんでした。
それとは別に、1995年以降、核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連決議が採択されていますが、日本は一貫して棄権してきました。
今回賛同に転じたのは「声明に拘束力はない」からという、極めて後退的な理由からですが、それでも一歩は前進したといえます。
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政府、核不使用声明に初署名へ 従来方針を転換
東京新聞 2013年10月11日
政府は10日、核兵器の非人道性と不使用を訴えるため、有志国が国連の場で調整を進めている共同声明に賛同して署名する方針を固めた。同趣旨の声明はこれまで3度まとめられているが、日本が同調するのは初めて。米国の「核の傘」に依存する日本の安全保障政策と相いれないとして署名を拒んできたが、声明に拘束力はないと解釈することで有志国側との調整にめどが立ったことから方針転換した。政府筋が明らかにした。
被爆地・広島出身の岸田外相は核軍縮推進へ強い意欲を表明している。14年には広島で関連の国際会議が予定されていることも踏まえ、反対姿勢を続けるのは望ましくないと判断した。(共同)
核不使用声明 日本賛同せず 「なぜだ」鬼気迫る市長
東京新聞 2013年8月10日
(前 略)
■納得できない
「なぜ賛同できないのか。その理由をお聞かせいただきたい」
四月二十四日、スイス・ジュネーブ。国連欧州本部の応接スペースで田上市長は天野万利(まり)・軍縮会議政府代表部大使に詰め寄った。この日、核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会は共同声明を七十カ国超の賛同で採択したが、日本は賛同せず。田上市長と松井一実(かずみ)・広島市長を前に、大使はこう釈明した。
「『いかなる状況下でも核兵器を使用してはならない』という部分が、日本の安全保障政策と合致しない。全ての賛同国に理解を得るには時間切れだった」
「それは違う。いかなる状況でも核兵器を使用しないことが人類の利益であることは、被爆地としては当然だ。説明は納得できない」。即座に切り返した田上市長は、その後も三十分以上、政府の姿勢を問いただす。同席した市幹部は、普段は冷静でにこやかな市長の鬼気迫る表情に驚いた。
田上市長はこの二日前、大使に声明への賛同の可能性を尋ねていた。昨年も同様の声明が提案されたが、日本政府には直前まで声がかからず「検討する時間がなかった」として賛同を見送ったためだ。今年は事前に説明を受けている。大使はこの時「まだ最終結論に至っていない」と述べたが、市長は「今回こそは」と期待していた。それだけに不賛同を知り「がっかりした。と同時に、問いたださなくてはと思った」と振り返る。
(後 略)