2019年12月7日土曜日

07- 共通テスト 国・数の記述式は見送りへ/衆院憲法審の開催見送り

 2020 年度開始の大学入学共通テストにおける国語と数学への記述式問題導入に関しては、約50万人の答案を短期間で公平に採点するのは不可能といった批判が相次いでいるため、政府は5日、導入を見送る方向で最終調整に入りました。
 この件では立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党の4党は、すでに導入の中止法案を国会に提出しており、自民党も5日午後文部科学部会で、受験生らに不安が高まっているとし、安心して試験に臨める体制を早くつくるよう求める決議文を、文科省に提出することを決めました。

 「自らの力で考えをまとめたり、相手が理解できるよう根拠に基づいて論述したりする思考力・判断力・表現力を評価することができる」からというのが記述式を導入する理由なのですが、そうした能力を「公正に」評価できる方策がないのであれば絵に画いた餅です。文科省は「やらないよりはやった方がいい」ということで突き進んできたということですがそれこそ暴論であって話になりません。

 それとは別に、衆院憲法審査会は5日、今国会最後の定例日を迎えましたが、与野党間の調整がつかず、開催は見送られました。 「桜を見る会」をめぐる問題が拡大したことも審査会が開かれなかった要因です。
 衆院憲法審は今国会中、審査会メンバーによる9月の欧州視察をテーマに、これまで計3回の自由討議を実施しまし
 しかしおよそ憲政とは無縁の暴政を強行している安倍政権の下で、憲法改正に向けた憲法審査会が粛々と開かれるなどはあり得ないことです。国民投票法改正案の審議一つとって見ても、与党には公正な投票を実現しようとする誠意などまったく見られません。
 与党は来年1月召集の通常国会で仕切り直しを図ろうとするでしょうが、スムーズに進むとは思われないし、またそうすべきでもありません。

 東京新聞と時事通信の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
共通テスト 記述式見送りで調整 理念に現実追いつかず
東京新聞 2019年12月6日
 二〇二〇年度開始の大学入学共通テストを巡って政府は五日、先月の英語民間検定試験に続き、国語と数学への記述式問題の導入についても見送りに向けた最終調整に入った。五十万人分に上る答案を公平に見ることはできないと、教育関係者や高校生からの風当たりは強まっていた。高い理念を掲げてきた文部科学省は打開策を示せぬまま、瀬戸際まで追い詰められた。

▼防戦
 「問題の解決に向けて努力しているが、受験生の不安を解消できるか、どこかできちんと判断しなければならない」。五日の参院文教科学委員会。萩生田(はぎうだ)光一文科相は、記述式の導入に反対する野党議員の質問に神妙な面持ちで答弁した。
 英語民間試験の導入見送りが決まった先月一日以降、野党は記述式に次の焦点を合わせた。「五十万人分の採点をミスなく終わらせることができるのか」「自己採点が正確にできなければ受験生は出願先も選べない」-。高い公平性が求められる入試の採点を、民間企業に委ねることの是非も国会審議の場で追及した。
 防戦一方の文科省。ある幹部は「採点ミスをゼロにするのはほとんど不可能。野党の指摘は当たっている」と明かす。

▼外堀
 実は官邸側も記述式問題導入については後ろ向きだった。懸念を抱えたまま導入に踏み切って受験生らの混乱を招けば、新たな政権のリスクにつながりかねないためだ。官邸主導で行った英語民間試験の見送りが「世論から一定の評価を受けた」(政府高官)との感触を得たことも大きい。
 関係者によると、政権幹部は文科省幹部に対し「受験生が納得できる仕組みが作れないなら見送りも検討するように」と指示していたという。官邸筋は「冬休みに入る前に受験生を安心させてやるべきだ」と指摘する。
 官邸と連動するように、与党の動きも加速。公明党の斉藤鉄夫幹事長は五日午後に萩生田氏との面会を急きょ入れ、記述式の導入延期を求めた。公明党幹部は「関連予算が入った二〇二〇年度予算が閣議決定される前に流れをつくるべきだ」と述べた。
 自民党も提言をまとめ、六日に萩生田氏に提出する方向で、外堀は埋まりつつある。

▼変容
 「自らの力で考えをまとめたり、相手が理解できるよう根拠に基づいて論述したりする思考力・判断力・表現力を評価することができる」。文科省は記述式導入の意義を繰り返し強調し、マークシート式の大学入試センター試験からの変革を示す象徴として位置付けてきた。
 一方、同省や大学入試センターも採点の難しさは早くから認識。国語では解答の条件をいくつも設定して正答の幅を限定し、短い文章を記す出題を検討していた数学も、試行調査の低正答率などを受けて方針を変更し、主に数式で答えさせることにした。政府の教育再生実行会議が一三年に「知識偏重の一点刻みの試験からの脱却」を掲げた理念は薄らぎ、出題は変容していったが、「やらないよりはやった方がいい」(同省幹部)と突き進んできた。
 既に学校で記述式対策に取り組んでいる東京都の高校二年の男子生徒(16)は、導入見送り検討の報道を受け、こうつぶやいた。「英語の民間検定試験も記述式もやらないなら、今のセンター試験と何ら変わらない」


衆院憲法審、開催見送り 最後の定例日、「桜」余波も
時事通信 2019年12月06日
 衆院憲法審査会は5日、今国会最後の定例日を迎えたが、与野党間の調整がつかず、開催は見送られた。首相主催の「桜を見る会」をめぐる対立も影響したとみられる。与党は来年1月召集の通常国会で仕切り直しを図るが、野党は対決姿勢を強めており、国会論議の環境を整えるのは容易ではない。

 衆院憲法審は今国会中、審査会メンバーによる9月の欧州視察をテーマに、これまで計3回の自由討議を実施した。与党側はこの流れを定着させるため、5日も審査会の開催を目指したが、野党側と折り合えなかった。
 与野党は5日、それぞれ幹事懇談会を開き、今後の対応を協議。ただ、いずれの会合でも、審査会見送りの責任を相手に押し付ける声が上がるばかりで、与野党の憲法論議が進展する兆しは見えないままだ。
 「桜を見る会」をめぐる問題が拡大したことも、5日の審査会が開かれなかった要因になったとみられる。野党側は、安倍晋三首相に国会で説明責任を果たすよう求めているが、与党側は拒否。今国会の会期末を9日に控え、与野党の攻防が激化しているためだ。
 自民党関係者は「野党側が『今の雰囲気では審査会を開ける状況にない』と言っている」と指摘。これに対し、立憲民主党の福山哲郎幹事長は記者団に「今国会でわれわれは憲法審査会に出てしっかり議論した」と反論した。
 与党は、今国会成立を断念した国民投票法改正案と併せ、通常国会で改めて衆院憲法審の議論を進めたい考え。ただ、野党は引き続き「桜を見る会」をめぐる問題を追及する構えで、先行きは見通せない。