2019年12月18日水曜日

18- 採点業務61億円受注 ベネッセ子会社はまるで幽霊会社

 大学入学共通テストでの国語と数学の記述式問題について萩生田文科相は17日、当初予定していた再来年1月からの導入を見送ることを正式に発表しました。そして今後の扱いについては、「期限を区切った延期ではない。英語の民間試験と違い、全くまっさらな状態から対応していきたい」と述べました。
 一方で英語の民間試験については「延期」に留まっていることを明らかにしました。英語の民間試験の方が先に問題を指摘されて土壇場で延期が決まったという経過がありますが、指摘事項がクリアされる見込みはあるのでしょうか。

 ところで白紙化された「大学入学共通テスト」の国語・数学記述式の案件につては、実は大学入試センターは、その採点業務を「学力評価研究機構」と2023年度まで約61億円に上る業務請負契約を既に締結済みでした。
 それは解約するしかないし、国が関与していることなので何とか治まるものと見られますが、日刊ゲンダイが、20175月に資本金24億円で設立された「学力評価研究機構」について調査したところ、殆ど実体のない幽霊会社(ベネッセと実質的に一体)であることが分かりました。

 NHKと日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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大学入試 英語技能評価や記述式充実策など 1年めどに結論 
NHK NEWS WEB 2019年12月18日
新たな大学入試で、英語の民間試験に続き、記述式の問題も再来年1月からの導入が見送られたことを受けて、文部科学省は、英語のいわゆる4技能を評価する仕組みや、記述式試験の充実策などを検討し、今後1年をめどに結論を出す方針です。

大学入学共通テストでの国語と数学の記述式問題について萩生田文部科学大臣は、17日、「受験生の不安を払拭(ふっしょく)し、安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点では困難だ」と述べ、当初予定していた再来年1月からの導入を見送ることを発表しました。
そのうえで、今後の扱いについては、「期限を区切った延期ではない。英語の民間試験と違い、全くまっさらな状態から対応していきたい」と述べました。
これを受けて、先に導入が延期された英語の民間試験と合わせて、再来年1月からの大学入試改革の2つの柱の実施は見送られることになりました。

一方で、文部科学省は、英語の民間試験で評価するとしていた「読む」、「聞く」に加え、「話す」、「書く」のいわゆる4技能や、記述式の問題で思考力や判断力、それに表現力を評価する重要性に変わりはないとしています。
このため、大臣のもとに年内に設置する会議で、英語の4技能を評価する仕組みや、記述式試験の充実策などを検討し、今後1年をめどに結論を出す方針で、見送りに至った経緯を検証し、受験生の不安を払拭できる制度を構築できるのかが課題となります。


採点業務61億円受注 ベネッセ子会社はまるで“謎の秘密結社”
日刊ゲンダイ 2019/12/16
「大学入学共通テスト」の国語・数学記述式問題。17日にも延期発表の見通しだが、採点業務は発注済みだ。大学入試センターはベネッセの100%子会社「学力評価研究機構」と2023年度まで約61億円に上る業務請負契約を締結してしまっている。そこで、巨額の税金が支払われ、採点という公的業務を担う同機構を取材しようとしたところ、とんでもない“幽霊会社”の実態が浮かび上がってきた。
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 学力評価研究機構のHPによると、創立は2017年5月で資本金2・4億円。代表取締役社長は服部奈美子氏だ。
 先月、服部社長がベネッセの商品企画開発本部長を兼務していることがバレた。採点業者の社長として知り得た情報を、親会社の本部長の立場で受験ビジネスに生かせば鬼に金棒。「利益相反」「秘密漏洩」との猛批判を受け、今月1日付で兼務を解消している。
 ベネッセ広報は先月21日の本紙の取材に、兼務解消について「学力評価研究機構は他の教育事業系グループ会社から独立して事業を遂行する体制となるため」と説明していた。
 先週13日午前、独立した機構に直接、取材しようと、HPにある問い合わせ先に電話をすると「学力評価研究機構です」と応対した。
 ところが具体的な取材に入ろうとすると、機構の担当者は「広報窓口はベネッセの広報です」と、ベネッセの連絡先を告げたのだ。不可解に思いつつ、“別会社”であるベネッセ広報に質問すると、書面で回答が来た。 

■“別会社”「ベネッセ」が直接取材を拒否
 ――機構の社員数やベネッセとの兼務は?
 「社員数全体や構成については、公表しておりません」
 ――ペーパーカンパニーとの声がある。
 「ペーパーカンパニーではございません。多くの社員が業務を行っています」
 ――機構のオフィスは西新宿の三井ビルとのことですが、何階の何号室ですか。
 「お取引先・関係者以外には非公開とさせていただいています」

 オフィスのフロアすら言えないとは一体どんな会社なのか。まるで戦前の秘密結社である。なお、取引先である大学入試センターも「社員数は把握していません」(総務課)とのことだった。
 同日午後4時ごろ三井ビルを訪問すると、総合案内の入居企業を表示したパネルに機構の社名は見当たらなかった。仕方なく同じビルに入るベネッセの新宿オフィスに向かうと、ベネッセ広報の電話番号メモを手渡された。結局、機構の社員には1人も会えなかった。
 利益相反や守秘義務違反などの懸念をかわす際には、ベネッセと機構が「別会社」だと強調するのに、機構への直接取材には、ベネッセがしゃしゃり出る。二枚舌の極みである。この矛盾については次のように答えた。 
 ――別会社のベネッセが広報窓口という点に納得がいかない。見解は?
 「学力評価研究機構に回答を確認の上、ベネッセHD広報が窓口として回答をしています。お問い合わせにきちんと対応するための体制であり、適切な対応と認識しています」

「グループ会社から独立」どころか、機構がベネッセと一体なのがよく分かる。「共通テスト」からベネッセを完全に外した方がいい