2019年12月17日火曜日

日本の賃金水準は世界の劣等国

 日本に中国人(や、かつては韓国人)をはじめとする外国人が大挙して押しかけるのにはいろいろな理由があるのでしょうが、最大の理由は日本の物価の安さです。
 逆に外国の学生が日本への就職を拒否するのは日本企業の桁外れともいうべき賃金の低さです。
 外国人から見ると日本の物価が安いのは、日本人の賃金が諸外国に比べて低いからに他なりません。それなのに日本では所得格差が増大中で、1千万人を超える労働者の年収は200万円に達しません。
 そんな状況下であるにもかかわらず、政府は低所得者が介護施設などを利用する際の負担額を月2万2000円年間26万4000円上乗せする案検討しているということです。では消費増税は何のために行ったのでしょうか。その一方で大企業にはまたしても優遇税制を打ち出しています。

 LITERAが「主要先進国で日本だけ実質賃金マイナスに・・・」の記事を出しました。
 賃金が年々上がっているのは何も主要先進国に限りません。その点でも日本は「世界の孤児」というべきでしょう。
 これまで何度も紹介して来ましたが、東京新聞の「日本、続く賃金低迷 97年比 先進国で唯一減」のグラフを敢えてもう一度掲げます。
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主要先進国で日本だけ実質賃金マイナスに玉川徹が「もう先進国じゃない」・・
それでも安倍政権は介護保険の負担増で国民追い詰め
LITERA 2019.12.16
 いったい「社会保障の充実」という消費増税の理由は何だったのか。厚労省は本日16日、一部の低所得者が護施設などを利用する際の負担額を増やす方針などを打ち出した介護保険制度改正案を社会保障審議会に示したからだ。
 たとえば、この介護施設利用時の負担増では、年金などの収入が年120万〜155万以下の低所得者でなんと月2万2000円を上乗せする案が検討されているという。月に2万2000円ということは年間26万4000円の上乗せとなる。単純計算でも月に10万円で暮らす高齢者に年間約26万円も負担増を迫るというのである。
 それでなくても消費増税によって低所得の高齢者の生活は大きな痛みを強いられている。なのに、増税の理由だったはずの「社会保障の充実」とはほど遠く、むしろ死活問題に直結する額の負担を強いるとは、はっきり言って鬼畜の所業ではないか。

 しかし、当の安倍首相はそんな国民の痛みなどまるで無視。11日に開かれた「年末エコノミスト懇親会」で挨拶に立った安倍首相は、こう言い放った。
「どうかここにおられるエコノミストのみなさんは、デフレマインドを払拭していただいて、もう今日このあとから、もう一杯飲みに行こうという感じで、もう年末に向けてどんどん財布のひもをグッと開いていただきたい。それによって来年の収入も増えていく。この好循環を回していきたいと思います」
 ようするに、安倍首相は「デフレマインドを払拭するためには財布のひもを緩めろ」と言うのである。あくまで「ここにおられるエコノミストのみなさん」に向けた発言とはいえ、消費増税によって国民に負担を強いておいて、挙げ句「財布のひもを緩めろ」とは、まったくふざけているとしか言いようがない。「デフレマインドを払拭」したいのであれば増税など実行すべきではなかったし、むしろ財布のひもを緩めてほしいのなら、いまからでも消費減税を検討すべきだ。

 実際、消費増税が国民の生活に大きな打撃を与えていることは、総務省が今月6日発表した10月の家計調査の結果からもあきらかだ。2人以上世帯の1世帯当たり消費支出(物価変動を除いた実質)は、前年同月比で5.1%減。マイナスに転じるのは11カ月ぶりで下落幅は3年7カ月ぶりの大きさ。前回の消費増税時(2014年4月)は4.6%減だったから、今回の増税は前回以上のインパクトになっているのだ。
 だが、安倍政権は消費増税の影響をまったく認めず、西村康稔経済再生担当相は「台風の影響」などと述べ、安倍首相は国民の生活も顧みずに「金を使え」と迫る。これでは現実を無視した無能総理だと自ら宣言しているようなものではないか。
 しかし、安倍首相のふざけた言動はこれだけにとどまらない。この期に及んで、さらに大企業優遇を打ち出したからだ。
 というのも、12日に決定した2020年度の与党税制改正大綱では目玉のひとつとして「オープンイノベーション促進税制」の創設を掲げたが、これは大企業が設立10年未満などの条件を満たしたベンチャー企業に1億円以上を出資した場合、出資額の25%を減税するという。さらに、次世代通信規格である5Gを整備する企業などにも投資額の15%を税制控除するというのだ。

 こうした措置を「内部留保を投資に回させるため」だの「中国や韓国に出遅れている5Gを国家戦略に」などと言うが、内部留保を溜め込む大企業も、やはり大企業である携帯大手も現時点で十分優遇されている。現に、ソフトバンクグループが2018年3月期の決算で連結純利益(国際会計基準)を1兆389億円も計上しながら、税務上の欠損金計上という合法的な“租税回避”をおこない、法人税がゼロ円だったことが発覚、ネット上でも話題となったが、日本ではこのほかにも研究開発減税などの租税特別措置によって多くの大企業が法人税を優遇されている。なのに、こうした大企業をさらに優遇しようというのである。
 本サイトでも繰り返し指摘してきたが、消費税の税率を上げつづける一方、安倍首相はアベノミクスの成長戦略として法人税率をどんどん引き下げてきた。大企業が税の優遇を受け、2018年度の内部留保は463兆1308億円と安倍政権下で過去最高を更新しつづけている反面、その穴埋めをお年寄りや子どもにまで課せられる消費税で強いる。これが安倍首相のやってきたことだ。

日経新聞も、『モーニングショー』では玉川徹も指摘した、日本の賃金の“後進国”ぶり
 そうして、安倍政権がどんどん大企業だけを優遇し、国民に負担を強いているうちに、日本の国民の生活レベルは、先進国から完全に取り残されてしまった。
 今月12日に日本経済新聞電子版は“アメリカの住宅都市開発省の調査が、サンフランシスコで年収1400万円の4人家族を「低所得者」に分類した”と衝撃的なニュースを伝えた。日本では年収850万円超でマスコミは「高所得者」と表現し、年収200〜300万円以下が「低所得者」と呼ばれるが、それがサンフランシスコでは1400万円でも低所得者になる……。頭がクラクラとしてくる話だが、記事によると日本人の給料は諸外国と比べても安く、たとえば「システム開発マネージャーの年収」だけを見ても、2007年を100として2017年を指数化して比較したところ、タイが210、インドが183、中国が176、アメリカでも119であるのに対し、日本は99で微減しているというのだ。

 だが、これはIT業界にかぎった問題ではない。きょう放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でもこの日経記事をもとにして特集を組んだのだが、そこでは安倍首相が絶対に語らない、重要な指摘がなされたのだ。そう。実質賃金の問題だ。
 番組では経済協力開発機構(OECD)加盟国の実質賃金の推移を紹介したのだが、1997年を100とした場合の2016年の指数では、上位からスウェーデンが138.4、オーストラリアが131.8、フランスが126.4である一方、日本は89.7。経済が成長するどころか衰退し、実質賃金は1997年よりマイナスに転じているのである。

 安倍政権は「いざなぎ景気超えの景気回復」だの「今世紀最高水準の賃上げがおこなわれた」だのと声高に喧伝してきたが、現実は生活実感に近い実質賃金が上がることもなく、他国が経済成長するなかで衰退しつづけている。さらに忘れてはいけないのは、昨年1月からは「毎月勤労統計」の調査手法を変更することで実質賃金を高くはじき出す“アベノミクス偽装”を施したという疑惑まであることだ。
 ようするに、安倍首相の詭弁にごまかされているうちに、この国は庶民の賃金が伸びず消費が冷え込み景気が悪化、そこに消費増税……という悪循環から抜け出せなくなっているのである。
 しかも恐ろしいのは、このまま日本が他国から見た「安い国」化が進んだときのことだ。『モーニングショー』では10月31日放送回でもさまざまなデータをもとに「日本はもはや先進国ではない」と特集を組んだが、きょうの放送でも玉川徹氏が“日本というのはもう先進国じゃない”と指摘した上で、日本が実質賃金で「一人負け」状態にあることを示すデータを指して「先進国じゃないって具体的に我々にどんな悪いことがあるのかと言えば、ひとつはこういうこと。日本だけが豊かではない。もしくは貧しくなっている。こういう状況」とコメント。さらに「長期的にみれば、このまま日本の地位が低下していけば円だって下がっていくわけですよね」として、こんな未来を予測した。

「日本はあらゆる資源を世界から輸入している国ですよね。で、給料が仮に変わらなくて、円だけがもし半分になったら、輸入品が倍になるってことですよ。そうすると物価は倍になると考えていいと思います、簡単に言えば。給料が変わらないのに物価が倍になったら、ようするに使い出が半分になるということですよ。このときに多くの日本人はたいへんな思いをするわけです」
 この玉川氏の話を極論だと果たして言えるだろうか。こうした最悪の未来を回避するには、賃上げによって消費を回復させること、そして消費減税によって経済を早急に立て直すほかない。しかし、増税後に「財布のひもをグッと開け」などと言い、大企業優遇をつづける安倍首相にはそんな考えはまるでない。ほんとうにこのままでいいのか。財布の中身を見て、国民はよくよく考える必要があるだろう。 (編集部)