2019年12月5日木曜日

中村哲さんが銃撃され死亡/「中村医師は偉大な友人」アフガン大使館声明

 アフガニスタンで長年、農業用水路の建設など復興に携わってきた医師の中村哲さんが4日、東部ナンガルハル州を車で移動中に何者かに銃撃され、病院で手当てを受けていましたが、死亡しました。
 中村さんはアフガニスタンで農地の再生などに取り組んでいる福岡市のNGO「ペシャワール会」の現地代表の医師です。35年前、パキスタンのペシャワルに赴任したのをきっかけにパキスタンと隣国のアフガニスタンで医療支援を行ってきました。
 16年前からは干ばつで苦しむアフガニスタンの人たちを助けようと用水路の整備など、農地の再生にも取り組んできました。
 アフガニスタンのガニ大統領はこうした活動を高く評価し、中村さんを名誉国民と認め、ことし10月に市民証を授与していました外国人が名誉国民として認められた、アフガニスタンで初めての人した。
 2003年には「アジアのノーベル賞」とも言われアジアの発展に貢献した人や団体に贈られるフィリピンのマグサイサイ賞を受賞ました。

 現地で活動している国連のアフガニスタン支援団はツイッター声明を発表し、「広く尊敬されている日本の中村医師が殺害されたことはおぞましく、糾弾する。アフガニスタンの弱い立場の人々を助けるために人生をささげた、彼に対する愚かな暴力だ」と非難しました。
 東京にあるアフガニスタン大使館はホームページに日本語で声明を出しました。
 声明では「中村医師が病院で亡くなられたニュースを聞き、大変悲しみに包まれています中村医師はアフガニスタンの偉大な友人であり、その生涯をアフガニスタンの国民の生活を変えるためにささげてくださいました彼の献身と不断の努力により、灌漑システムが改善され、東アフガニスタンの伝統的農業が変わりました」とその功績をたたえています。

 NHKの2本の記事を紹介します。
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アフガニスタン 医師の中村哲さん銃撃 複数の男らの犯行か 
NHK NEWS WEB 2019年12月5日
アフガニスタンで長年、農業用水路の建設など復興に携わってきた医師の中村哲さんが、4日、何者かに銃撃され死亡したことについて、現地では追悼の声が相次いでいます。これまでのところ犯行声明は出ていませんが、銃撃は、複数の男らによる犯行の疑いが強いことが地元の警察への取材で分かりました。
アフガニスタン東部のナンガルハル州ジャララバードで4日、福岡市のNGO、「ペシャワール会」の現地代表の医師、中村哲さん(73)が車で移動中に、何者かに銃撃されました。中村さんは、病院で手当てを受けていましたが、その後、死亡が確認されました。
地元の警察などによりますと、この銃撃で、中村さんや、一緒にいた運転手や警備員など合わせて6人が死亡したということです。

中村さんは長年、農業用水路の建設など復興に携わりながら、地元の人たちとも積極的に交流を続けてきたことから、現地では追悼の声が相次いでいます。
現地時間の4日夜、ジャララバードでは追悼集会が開かれ、多くの人たちがろうそくに火をともして中村さんの死を悼むとともに、功績をたたえました。
農業をしている40代の男性は、「中村さんは、私たちの農地を洪水から守るために数え切れないほどの支援を続けてくれた。彼が亡くなったことを聞き、悲しい思いでいっぱいです」と話していました。

一方、今回の銃撃について、これまでのところ犯行声明は出ていませんが、その後の調べで、銃撃は3人から4人の複数の男らによる犯行の疑いが強いことが地元の警察への取材で分かりました。男らは、1台の乗用車に乗って中村さんたちを待ち伏せし、銃撃したあと、再び同じ車に乗って逃走したということです。
警察は、中村さんをねらった計画的な犯行の疑いもあるとみて、詳しく調べています。

治療にあたった病院の担当者 
  (中 略)
10年来の親交の知人「今後、どう中村先生の遺志をつなぐか」 
中村哲さんと10年来の親交がある福岡県朝倉市の徳永哲也さん(72)が4日夜、NHKの取材に応じ、「あれだけ命をかけてアフガニスタンの復興にかけている人をなぜ殺すのか、全く理解できません。悔しくてたまりません。こんなことは絶対にあってはならない」と話しました。
  (中 略)
母校の九大の学長「理不尽さに憤り」 
中村哲さんは、昭和48年に九州大学医学部を卒業し、平成26年から九州大学高等研究院の特別主幹教授として、年に1回のペースで大学で講演会などを行い、ことしも8月5日に講演していました。

九州大学の久保千春学長は「成し遂げた事業の壮大さに強い感銘を受けるとともに、これまでの経験を通して感じた思いを、率直に丁寧に語られる姿に温かで誠実な人柄を感じてまいりました。現地の復興のために尽力してこられた先生がこのような形で命を落とされることは痛恨の極みであり、その理不尽さに憤りを禁じえません。九州大学教職員・学生を代表し心からご冥福をお祈りいたします」とするコメントを出しました。

国連特別代表「功績は大きく、日本人として誇り」 
国連アフガニスタン支援団のトップを務める山本忠通事務総長特別代表は、NHKの電話インタビューに対し、「まさか彼のような人が攻撃を受けるなんて思ってもおらず、驚くとともに腹が立った。亡くなられたのは、大変な損失だ」と述べ、中村さんの死を悼みました。
また、アフガニスタンの復興にあたる中村さんの姿勢について、「どうすればアフガニスタンの国民がよりよい人間らしい生活ができるかを考え、『困難な人たちを助けたい』という純粋な気持ちが伝わる仕事をしてきた。アフガニスタンの人たちは中村さんを非常に尊敬していて、親しんでいた。功績は大きく、日本人として誇りに思う」と振り返りました。
そのうえで山本代表は、「中村さんは非常に謙虚であるとともに信念の強い人だった。中村さんが残した具体的な方法や、現地の一般の人たちを巻き込んで、一緒になって開発を進めるという考えは根づいていると思うので、それが受け継がれ、さらに広がっていくことを期待したい」と話していました。

10月に現地で活動の様子を取材 
  (中 略)
人道援助関係者の死傷者が増加 
国連によりますと、アフガニスタン国内で死亡やけがをしたり、誘拐されたりした人道援助関係者の数は、ことし8月の時点で合わせて91人に上り、去年1年間の76人をすでに上回っていました。このうち、ことし死亡した人は、27人に上るということです。
先月24日には、首都カブールで国連の車両をねらった爆発があり、アメリカ人1人が死亡しました。


「中村医師は偉大な友人」アフガニスタン大使館声明 
NHK NEWS WEB 2019年12月4日
東京にあるアフガニスタン大使館はホームページに中村さんとガニ大統領が並んでうつった写真とともに日本語で声明を出しました。


声明では「中村医師が病院で亡くなられたニュースを聞き、大変悲しみに包まれています」としたうえで、「中村医師はアフガニスタンの偉大な友人であり、その生涯をアフガニスタンの国民の生活を変えるためにささげてくださいました。彼の献身と不断の努力によりかんがいシステムが改善され、東アフガニスタンの伝統的農業が変わりました」とその功績をたたえています。
そして「アフガニスタン国民と政府は中村医師の功績に敬意を表し、ご家族、同僚の皆様、ご友人、そして日本国民の皆様に謹んで追悼申し上げます」と結んでいます。

安倍首相「本当にショック」  
  (中 略)
JICA「痛恨の極み」 
中村哲さんが取り組んでいたかんがい事業に、一時、関係していたJICA=国際協力機構は、「現地に入り込み、長年にわたって地域住民と信頼関係を築き、アフガニスタンの発展と住民生活の向上のために尽力され、着実な成果をあげてこられた中村医師が、このような形で落命されたことは誠に痛恨の極みであり、襲撃を行った犯人に対して怒りを禁じえません。JICAは中村医師のアフガニスタン支援に対する遺志を受け継ぎ、今後もアフガニスタンの発展と平和のために引き続き貢献してまいります」とするコメントを発表しました。

米 臨時代理大使「日本人の善意」 
  (中 略)