12日発売の週刊文春が、和泉洋人首相補佐官が今年8月に京都大学iPS細胞研究所を訪問した後、同行した厚生労働省の大坪寛子官房審議官と共に私的な京都市内観光をしていたと写真付きで報じました。
文春オンライン(https://bunshun.jp/articles/-/18634)によれば、「週刊文春」は2人が京都で山中教授に要求したiPS細胞研究の予算削減案、大坪氏が和泉氏の威を借りて関係各所の人事や予算に介入した疑惑、そして山中教授が「週刊文春」の直撃に語った「オープンな場で健康・医療政策の意思決定を行うべき」などについて6ページにわたって特集しているということです。
ここで山中氏が言及しているのは、内閣官房の健康・医療戦略室のナンバー2である大坪氏が、山中教授が中心になって進めているiPS細胞の備蓄事業に対して年間10億円の国費投入の打ち切る可能性を突如打ち出した件で、山中氏によれば国費の投入によって商業ベースでは数千万円レベルに値する純正iPS細胞のサンプルを、僅か10万円程度で各研究機関などの提供できているということです。それを勝手に打ち切るとは官僚の横暴を絵にかいたような話です。
これについては役人の間でも問題になり、最終的に、竹本直一科学技術担当相が6日の閣議後記者会見で、「少し別の動きもあったという話は聞いているが、当初の予定通り2022年度まで支援を続ける」考えを示しました。
和泉首相補佐官の存在に大きな注目が集まったのは、加計学園問題で前川喜平・元文科事務次官が、獣医学部新設をめぐり和泉氏から「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と“恫喝”されたとマスコミに明らかにしたときからでした。
和泉氏はまさに安倍首相の代わりとなって加計学園の獣医学部新設を実現させた、最大のキーマンで、かつては新国立競技場の管轄を文科省から取り上げ“やり直しコンペ”を仕切り、現在は政府が名護市辺野古で進めている埋め立て工事で関係省庁を統括しています。
なお菅義偉官房長官は12日、この件について「京都市内での移動は私費で支払っており、適切に対応したと聞いている」と述べ、問題ないとの認識を示しました。
LITERAの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「公費で京都不倫出張」疑惑の和泉洋人首相補佐官は“安倍首相のためならなんでもやる男”! 前川元文科次官を恫喝した過去も
LITERA 2019.12.11
「桜を見る会」問題で国民から不信の目を向けられている安倍政権に、新たなスキャンダルが発覚した。「安倍首相補佐官と厚労省女性幹部が公費で『京都不倫出張』」──。そう、明日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、加計学園問題で暗躍した安倍首相の側近・和泉洋人首相補佐官と厚労省の大坪寛子大臣官房審議官の不倫関係疑惑、そして公費を使った京都出張での「デート」現場をスクープしたのだ。
すでに「文春オンライン」(https://bunshun.jp/articles/-/18634)では記事の概要を伝えているが、そこでは、和泉首相補佐官と大坪大臣官房審議官が腕を組んで階段を降りる様子をおさめた写真などが公開されている。「週刊文春」の直撃に対し、大坪大臣官房審議官は往復の新幹線代の支払いが公費であることを認める一方、ふたりとも交際を否定しているが、写真を見るかぎり、公私混同の誹りは免れないだろう。
首相補佐官ともあろう人物が、公費を使って不倫旅行──。これが事実ならその倫理観の欠如に呆れるが、しかし、和泉氏なら十分ありうる話なのかもしれない。何しろ、和泉氏は安倍首相のために、通常の行政手続きを歪め、各省庁に露骨な圧力をかけてきた倫理もクソもない人物だからだ。
そもそも、和泉首相補佐官は国土交通省出身で、現在は政府が名護市辺野古で進めている埋め立て工事で関係省庁を統括している人物であり、新国立競技場の管轄を文科省から取り上げ“やり直しコンペ”を仕切ったのも和泉首相補佐官だといわれる。もともとは民主党・野田政権時代に内閣官房参与として官邸入り、そのまま安倍首相が留任させるという異例の人事がおこなわれたが、その背景には和泉氏と付き合いが長かった菅義偉官房長官の後押しがあったとされる。
しかし、和泉首相補佐官の存在に大きな注目が集まったのは、前述のように加計学園問題だった。前川喜平・元文科事務次官が、獣医学部新設をめぐって和泉首相補佐官から「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と“恫喝”され、このほかにも獣医学部新設を早く認めるように複数回言われたことを証言したからだ。
しかも、和泉首相補佐官は前川氏に圧力をかけただけではなかった。NHKがスクープした「10/21萩生田副長官ご発言概要」という文書では、〈総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた〉という決定的な文言のほか、こうも記されていたからだ。
〈内閣府や和泉総理補佐官と話した。(和泉補佐官が)農水省とも話し、(中略)畜産やペットの獣医師養成とは差別化できると判断した。〉
〈和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。〉
なんと和泉首相補佐官は農水省にまで直接手を回し、萩生田光一官房副長官(当時)まで動かしていたのだ。このあと、萩生田官房副長官は獣医学部新設の条件に「広域的に」「限り」という文言を追加するよう指示。これにより獣医学部新設に名乗りを上げていた京都産業大学が事実上、振り落とされてしまった。
ようするに和泉首相補佐官は、まさに安倍首相の代わりとなって加計学園の獣医学部新設を実現させた、最大のキーマンともいえる人物なのだ。
実際、2017年6月に日本記者クラブ主催の記者会見に出席した前川氏は、「全体のシナリオを描いていた」人物として、和泉首相補佐官の名を挙げた。
「私の目から見ますと、和泉総理補佐官がいちばんのキーパーソンではないかと」
「10月21日付けの萩生田副長官のご発言の内容を見ても、萩生田さんは和泉さんと話をした結果として、それを文科省に伝えている。やはり情報発信源になっているのは和泉さんではないか。和泉補佐官がいちばん全体のシナリオを描いて、全体の統括もしている、そういう立場にいらっしゃったのではないかと思っています」
だが、和泉首相補佐官は加計学園の獣医学部新設を実現させるべく「全体の統括」をしただけではなかった。あの“読売新聞を使った前川氏の告発潰し”でも、和泉首相補佐官は暗躍していたのである。
2017年5月、「総理のご意向」文書が飛び出た際に前川氏の実名告発の動きがあるなかで、読売新聞は同月22日付で「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」と報道。本サイトでも繰り返し伝えてきたが、これは官邸が、前川氏の告発を潰す目的で読売にリークして書かせたものだ。そして、読売に記事が出る前日、前川氏に揺さぶりをかけたのは和泉首相補佐官だった。前川氏はこう証言している。
「21日に和泉補佐官からのアプローチもあった。文科省の藤原誠初等中等教育局長からのショートメールだった。(自分の携帯から着信記録を示して)これです。『和泉さんから話を聞きたいと言われたら、対応される意向はありますか?』。それに対しては、『ちょっと考えさせて』と返信した」
「和泉さんが私の口を封じたかったのではないか、と思っている。ちょうど私が加計関係の文科省内部文書について、メディアの取材を受け始めた時だ。前川がしゃべっているとの情報が伝わったのではないか」(「サンデー毎日」2017年12月10日号/毎日新聞出版)
「明治日本の産業革命遺産」でも安倍の意向を受けて文化審議会の反対派委員を排除
実名告発を潰すために“脅し”をかける。これが首相補佐官の仕事なのかと衝撃を覚えずにいられないが、じつは加計学園問題以外でも、和泉首相補佐官は安倍首相の意向をかたちにするため恫喝と圧力をかけていたことがわかっている。
それは、2016年に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」をめぐってのこと。「明治日本の産業革命遺産」は幼少時から安倍首相と家族ぐるみの付き合いで、加藤勝信厚労相の義理の姉でもある加藤康子氏が中心になって推し進めていたプロジェクト。「週刊新潮」2015年5月21日増大号に掲載された康子氏のインタビューによると、自民党が野党に転落していたころ、安倍氏は康子氏に「君がやろうとしていることは『坂の上の雲』だな。これは、俺がやらせてあげる」と声をかけ、さらに、総裁の地位に返り咲いた3日後、「産業遺産やるから」と、電話をかけてきたという。
そして、安倍首相が血道を上げたこの「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録でも、安倍首相の名代として現場に介入したのが、和泉首相補佐官だった。じつは、「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産の国内候補にするため、和泉首相補佐官が候補を決める文化審議会の委員から反対派の委員を排除するよう圧力をかけていたのだ。文化庁を外局とする文科省の事務方トップの事務次官を務めた前川氏は、こう証言している。
「和泉氏は文化庁の幹部に対し、文化審議会の委員から日本イコモス委員長(西村幸夫氏)を外せ、と言ってきた。日本イコモスは産業遺産の推進に消極的だった経緯があり、とにかくけしからんから外せ、と。結局、西村氏は委員から外れました」(「週刊朝日」朝日新聞出版/2017年6月23日号)
これらのケースをみればもうおわかりだろう。安倍首相がこれまでのルールや行政手続きをひっくり返して、お友だちに利権を優遇したいとき、安倍首相の代わりに現場に圧力をかけ、ごり押しをするのが和泉首相補佐官に役目だったのだ。
そして、安倍政権では、和泉氏のように安倍首相や菅官房長官の意向を汲んで動けば、官僚としての倫理観なんて欠片もなくても、官邸に重用され、出世できてしまう。いや、安倍首相のために平気で不正に手を染めることができる、そういう倫理観のない官僚こそが出世するというべきか。
そう考えると、今回の“京都不倫出張”という「公私混同」疑惑も、“安倍首相の右腕なら何をしても許される”という慢心の結果、起こるべくして起きたスキャンダルと言えるだろう。
森友・加計問題や「桜を見る会」ではっきりしたように、安倍首相が平然と私物化してきたことで、安倍首相の側近や親しい政治家たちもまた同じように振る舞い、最低限の倫理観さえ崩壊させてしまった。今回の「週刊文春」のスクープは、たんなる不倫スキャンダルではなく、安倍政権の腐敗を裏付けるものだと言っていいだろう。(編集部)