2019年12月23日月曜日

安倍政権で 日本だけが輸入する危険な米国産の食品

 安倍政権は18年4月、主要農作物種子法(対象:米・麦・大豆を廃止しました。それは一代限りの種(F1品種)を開発し、それを日本に普及させて農産品を支配したい多国籍種子企業にとって種子法が邪魔だからでした。
 種子法を廃止し種苗法を改定して外国企業に迎合しようとする安部政権に対して、各県は新たに「種子条例」を制定することで外資の進出に対抗しようとしています。
 これにより政府は「種苗法の改定」を断念しましたが、この件でも安倍政権の「売国性」が改めて明らかにされました。
 世界に逆行するように、旧モンサント社が開発した発がん性のある除草剤成分「グリホサート」の残留基準値大幅に緩和したのも安倍政権でした。対米迎合では留まるところを知らない安倍政権ですから、今般の日米貿易交渉でも日本の畜産業、酪農業を破壊し、国民の健康について何の斟酌もないことは明らかです。

 この間の日米農産品貿易交渉に警鐘を鳴らす鈴木宣弘東大大学院教授農学生命科学農業経済学)の見解がハーバー・ビジネス・オンラインに載りました
 それによると、日米貿易交渉は単に日本の農業破壊するだけではありません。
 安倍政権はアメリカに配慮して今年5月に、BSEを発症した牛肉の輸入を防ぐための月齢制限を完全に撤廃しました。またアメリカ産牛肉から成長ホルモンエストロゲン通常の600倍も検出された例がありますが、日本の検査機関はわざわざ40年前の精度の悪い検査機械を使用し検出されないようにしています
 日本で牛や豚の餌に成長促進剤ラクトパミンを使用することは認められていませんが、事実上それらを使用した輸入肉は税関を素通りします。
 成長ホルモンを使用した乳製品の輸入野放しになっています。
 まさにデタラメの極致です。

 日本の国民はいつまでこんな政権に政治を任せるつもりなのでしょうか。
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安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品
<鈴木宣弘氏>
ハーバー・ビジネス・オンライン 2019/12/22
日本の食と農が崩壊する!
 安倍政権はアメリカが要求する農協改革の名のもとに、農業への企業参入、農業の大規模化・効率化を推進してきた。規制改革推進派の小泉進次郎氏が自民党農林部会長に就き、「農業が産業化し、農協が要らなくなることが理想だ」と公言する奥原正明氏が農水省事務次官に就いた。
 諮問会議で農業改革の議論をリードしたのは、農業の専門家ではなく、金丸恭文氏、新浪剛史氏といったグローバリストである。結果、農業分野への参入に成功したのは、新浪氏が社長を務めていたローソンファームや竹中平蔵氏が社外取締役を務めるオリックスである。
 安倍政権が掲げてきた「稼げる農業」というスローガンは、その実態は、グローバル企業やお仲間企業だけが稼げる農業なのである。
 こうした中で、農産物の自由化によって日本の農業は弱体化に拍車がかかっている。
『月刊日本 2020年1月号』では、第3特集として「日本の食と農が崩壊する」と銘打ち、日本の食糧自給を巡る危機的な状況に警鐘を鳴らしている。今回は同特集の中から、東京大学大学院農学生命科学研究科教授である鈴木宣弘氏の論考を転載・紹介したい。

農業を犠牲にする経産省政権
── 日米貿易協定が2020年1月に発効します。
鈴木宣弘氏(以下、鈴木):この協定について、安倍総理は「ウィン・ウィンだ」などと言っていますが、日本の完敗であることははっきりしています。自動車に追加関税をかけるというトランプ大統領の脅しに屈して、日本は農業分野を犠牲にしたのです。日本側の農産品の関税撤廃率は72%ですが、アメリカ側の関税撤廃率はわずか1%に過ぎません。日本農業は、さらに大きな打撃を受け、食料安全保障の確立や自給率向上の実現を阻むことになります。
 安倍政権は、「アメリカは自動車関税の撤廃を約束した」と述べていますが、署名後に開示されたアメリカ側の約束文書には「さらなる交渉次第」と書かれています。自動車を含まなければ、アメリカ側の関税撤廃率は51%に過ぎません。これは、少なくとも90%前後の関税撤廃率を求めた世界貿易機関(WTO)ルールに違反することになります。
 安倍政権では、経産省の力がかつてないほど強まっており、自分たちの天下り先である自動車、鉄鋼、電力などの業界の利益拡大が最優先されています。かつて、貿易交渉においては、財務、外務、経産、農林の4省の代表が並んで交渉し、農業分野の交渉では農水省が実権を持っていましたが、今や農水省は発言権が奪われています。内閣人事局制度によって官邸に人事権を握られた結果、農水官僚たちも抵抗できなくなっているのです。「農水省が要らなくなることが理想だ」と公言する人物が農水省の次官になるような時代なのです。

危機に陥る食料自給
── 協定が発効すると、アメリカ産の牛肉や豚肉の関税が一気に下がります。
鈴木:牛肉の関税は、現在の38・5%から26・6%に一気に引き下げられ、2033年度には9%となります。豚肉も、高級品については関税を段階的に下げ、最終的にゼロとなります。低価格部位については、現状の10分の1まで下がります。
 日本は、TPP11で、牛肉を低関税で輸入する限度(セーフガード)数量について、アメリカ分も含めたままの61万トンを設定しました。ところが今回、アメリカ向けに新たに24万トンを設定したのです。日本にとっては、アメリカ分の限度が「二重」になっているということです。しかも、付属文書には「セーフガードが発動されたら発動水準を一層高いものに調整するため、協議を開始する」と書かれているのです。実際にセーフガードを発動することは次第に難しくなるということです。

 政府は、牛肉や豚肉の価格が下がった分は補填するので、農家の収入は変わらず、生産量も変わらないと強弁しています。しかし、生産量が低下し、自給率がさらに下がるのは確実です。すでに牛肉の自給率は36%、豚肉の自給率は48%まで低下していますが、2035年には、牛肉、豚肉とも10%台にまで落ち込む危険性があります。農水省は平成25年度の39%だった食料自給率を、令和7年度に45%に上げるなどと言っていますが、それを実現する気などありません。
 食料自給で最も深刻なのは酪農です。所得の低迷によって国内の酪農家の廃業が相次いでいます。乳価を安定させ、個々の酪農家の利益を守るために機能してきた指定団体が改定畜安法によって廃止されたからです。これに乳製品の関税引き下げが加わり、酪農家は危機感を高めています。
 2018年には、北海道のブラックアウトの影響で東京でも牛乳が消えました。これは決して一過性の問題ではありません。さらに酪農が弱体化していけば、店頭から牛乳が消えるという事態が実際に起きます。牛乳を飲みたがっている子供に、お母さんが「ごめんね。今日は牛乳が売っていないの」と言わなければならなくなるのです。欧米諸国ならば、暴動が起きるような事態です。

 ところが、政府は「不測の事態には、バターと脱脂粉乳を追加輸入して水と混ぜて、還元乳を飲めばよい」などと言っています。安全で新鮮な国産牛乳を確保するために、国産牛乳の増産を図るのが国民の命を守る国の使命のはずです。ところが、政府はその責任を放棄しているのです。食料自給は、国家安全保障の要です。
 食料を安定的に国民に供給するために、自国の農業を守るのが、国の責任です。「日本の農業所得は補助金漬け」などと批判されることがありますが、日本は3割程度です。スイスは100%、フランス、イギリスも90%を越えています

日本にだけ輸出される危険な食品
── アメリカ産牛肉は安全性も問題視されています。
鈴木:日本は、BSE(牛海綿状脳症)が問題となったため、アメリカ産の牛肉輸入を「20カ月齢以下」に制限していました。ところが、野田政権は2011年、TPP交渉への「入場料」として、「20カ月齢以下」から「30カ月齢以下」へ緩和してしまいました。
 実は、24カ月齢の牛のBSE発症例も確認されているのです。しかも、アメリカのBSE検査率は1パーセント程度で、発症していても検査から漏れている牛が相当程度いると疑われます。また、アメリカの食肉加工場における危険部位の除去が不十分なため、危険部位が付着した輸入牛肉が日本で頻繁に見つかっています。「20カ月齢以下」は、日本人の命を守るための最低ラインなのです。しかし、安倍政権はアメリカに配慮して、2019年5月に月齢制限を完全撤廃してしまったのです。

 また、アメリカ産の牛肉には、エストロゲンなどの成長ホルモンが使用されています。札幌の医師が調べたところ、アメリカ産牛肉からエストロゲンが通常の600倍も検出されたのです。ウナギ養殖のエサにごく微量たらすだけで、オスのウナギがメス化するほどの成長ホルモンなのです。エストロゲンは乳がんや前立腺がんとの関係が疑われており、日本では牛肉生産への使用は認可されていません。しかし、アメリカからは、エストロゲンを使用した牛肉が輸入されている疑いがあります。検査機関は「検出されていない」と言っていますが、40年前の精度の悪い検査機械をわざわざ使用し、検出されないようにしているようです。
 EUは、1989年から成長ホルモンを使用したアメリカの牛肉を輸入禁止にしています。禁輸してから7年で、乳がんの死亡率が顕著に低下したという学会誌データも出てきています。
 さらに、アメリカでは、牛や豚の餌に混ぜる成長促進剤ラクトパミンが使用されています。ラクトパミンは、発がん性だけでなく、人間に直接中毒症状を起こす危険性があり、EUだけではなく、中国やロシアでも国内使用と輸入を禁じています。日本でも国内使用は認可されていませんが、これまた輸入は素通りになっているのです。

 アメリカの乳製品も危険です。ホルスタインには、モンサントが開発した遺伝子組み換え成長ホルモンが使用されているからです。この成長ホルモンを注射すると、乳量が2~3割も増えるとされています。アメリカでは、1994年に認可されましたが、1998年に勇気ある研究者が「数年後には乳がん発症率が7倍、前立腺がん発症率が4倍になる危険性がある」と学会誌に発表したのです。
 その結果、アメリカの消費者が不買運動を展開、今ではアメリカのスターバックスやウォルマートが「当社の乳製品には成長ホルモンを使用していません」と宣言せざるを得ない状況になっているのです。ところが日本では、これほど問題になった成長ホルモンを使用した乳製品の輸入が野放しになっています。

スイスの食品流通に学べ
── 安倍政権には、日本の食の安全を守る気がありません。我々は、どのようにして食の安全を守っていけばいいのですか。
鈴木:2019年10月には、ゲノム編集食品の販売が解禁されました。しかも、表示義務もありません。2023年には遺伝子組み換えでないという食品表示も実質的にできなくなります。安倍政権は、世界に逆行するように、発がん性が指摘される除草剤成分「グリホサート」の残留基準値も大幅に緩和しました。
 そして、貿易自由化が加速することによって、危険な輸入食品がさらに氾濫し、国産品を駆逐しようとしています。しかも、表示がなくなれば、安全な食品を選択することも不可能です。まさに今、日本の食の安全は瀬戸際に来ているのです。
 我々がすべきことは、少々高くても、安全で安心なものを作ってくれる生産者と、それを支える消費者のネットワークを拡大することです。その手本となるのがスイスです。スイスでは国産卵は1個80円で、フランスから輸入しているものの6倍もしますが、国産の方が売れているのです。私の知り合いが、スイスの小学生の女の子に聞くと「これを買うことで生産者の皆さんも支えられるが、そのおかげで私たちの生活が成り立つのだから当たり前でしょ」と答えたそうです。
 生協が食品流通の5割以上を占めるスイスでは、消費者が農協などと協力して生産者サイドに働きかけ、健康、環境、生物多様性などに配慮した生産を促しています。その代わりに、消費者は農産物に込められた多様な価値が価格に反映されていることを認識し、そのコストを分担しようという意識を持っています。食の安全を守りたいならば、日本もスイスを見習うべきです。  (聞き手・構成 坪内隆彦)

すずきのぶひろ●東京大学大学院農学生命科学研究科教授。専門は農業経済学。
【月刊日本】
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。