臨時国会の閉幕に当たり植草一秀氏が、日米FTA承認案をロクに反対論も展開せずに成立させた野党を批判するブログを出しました。TPP12交渉が進められていた時には、識者は必死に日本を標的にした米国の狙いを説き、少なくともまともな野党はそれを認識していた筈ですが一体どうしたのでしょうか。
勿論自民党も野党時代にはその危険性を明確に自覚していました。
それが第2次安倍内閣として政権に就くと(少なくとも表面上)それを雲散霧消させたのは一体何故なのでしょうか。安倍晋三氏が骨の髄までの対米従属者であるにしても、それを一切批判しない自民党の退廃ぶりは何なのでしょうか。
数年前に結ばれた「米韓FTA協定」の惨状については、下記の記事など、これまで多数の関連記事を紹介して来ました。
植草一秀氏のブログを紹介します。
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安倍政治と闘う気魄のない立憲民主と国民民主
植草一秀の「知られざる真実」 2019年12月 9日
臨時国会が閉幕する。
この臨時国会の最重要議案は日米FTA承認案だった。2016年末に大論議を呼んだTPP12(米国を含む12か国によるTPP協定)の本丸が今回の日米FTA協定案である。
TPP12では日本が農産品などの関税を大幅に引き下げることが中心議題とされた。
また、TPPの最大の特徴は、単なる物品貿易の関税率を引き下げるだけでなく、一国の諸制度、諸規制改変がもたらされることにあった。
とりわけ、国民生活と関わりが深い保険医療制度、食の安全、公共調達、郵政事業などに重大な影響が生じる可能性が高く、大きな論議を呼んだ。
もちろん、根源的には私たちの生存に関わる食料の問題が重大だ。
食料自給は経済的安全保障の根幹に位置付けられる。
「食料自給は国家安全保障の問題であり、それが常に保証されているアメリカは有り難い」
「食料自給できない国を想像できるか、それは国際的圧力と危険にさらされている国だ」
これは、米国のブッシュ大統領が国内の農業関係者向けの演説で、しばしば用いたフレーズである。
どの国も国民の生存と健康維持のために農業を手厚く保護している。このことを度外視して国内農業を衰退させることは国民に対する背信行為である。
TPP12は日本の農林水産業を破滅に追い込むだけでなく、国民皆保険制度の根幹を破壊し、食の安全・安心を崩壊させる結果をもたらすから、TPP12を日本が受け入れるべきでないとの主張が広範に展開された。
自民党も2012年12月総選挙に際しては、「ウソつかない!TPP断固反対!ブレない!」と大書きしたポスターを貼りめぐらせて選挙戦を戦った。
その際、6項目の公約を明示した。農産品重要五品目の関税を守ることも明示された。
食の安全・安心を守り、国民皆保険制度を維持することも公約として明記された。
また、国家主権を侵害するISD条項については「合意しない」ことが明記された。
ところが、これらの懸念事項がまったく解消されないどころか、懸念がそのまま現実化するTPP12協定案がまとめられ、安倍内閣が署名してしまった。
しかし、国会でこれを承認するべきでないとの主張が大きく展開されたのだ。だが、安倍内閣は批准を強行した。これがTPP12だった。
米国を含むTPPで、米国が離脱すると発効できない条項が盛り込まれていた。
米国が離脱する可能性は高く、批准を急ぐ必要はないとの主張も強く存在したが、安倍首相はTPP12の合意を完全に確定するために批准を急ぐのだとして批准を強行した。
実際、日本の批准直後に米国はTPPから離脱した。これでTPPは臨終を迎えたはずだったが、あろうことに、安倍内閣はTPP協定合意文書改変の先頭に立った。
そして、米国抜きのTPP11を強引にまとめ、発効させてしまった。
安倍首相はTPP12の修正は一切行わないことを明言するとともに、日米FTA交渉には応じないことを確約した。
ところが、米国のトランプ大統領に命令されると、日本の国会での明言など存在しなかったかのように、日米FTA交渉を受け入れた。
その日米FTAの第一弾合意が今回の日米物品貿易・デジタル貿易協定である。日本の国会を完全に冒とくする安倍内閣の行状を許すわけにはいかない。
安倍内閣の横暴を明らかにし、責任を追及するのが国会の責務、野党の責務である。
ところが、この臨時国会で、問題の日米FTA協定が批准された。野党はほとんど抵抗らしい抵抗さえ示さなかった。
桜疑惑が一気に広がり、日米FTA承認を阻止することは十分可能だったはずだ。しかし、野党は日米FTA承認を容認し、挙げくの果てに安倍内閣に対する不信任決議案の提出さえ見送った。
理由は単純明快だ。野党が衆院解散総選挙を恐れたのである。このような野党では日本政治の刷新は夢のまた夢である。
日本政治刷新のために有効な野党体制構築を急がねばならない。
(以下は有料ブログのため非公開)