2019年12月5日木曜日

「シンクライアント方式」の弁解と布石 (世に倦む日々)

 安倍首相は、「桜を見る会」の招待者名簿の電子データも「シンクライアント方式」になって復元できなくなったという、全く訳の分からない説明をして自己満足しているようですが、USBスティックメモリーで簡単にバックアップを取れる資料が復元できない筈がありません。
「桜を見る会」は来年こそ開催を見合わせることになりましたが、いずれは復活するその「催し」の招待状の発送の実務を行う官僚(実際には外注)が、その時に有用な「名簿の電子データ」を無くす筈がないからです。

 官僚は(そして政府も)、その時には消したはずの「電子データが見つかった」というストーリーで復活(復元)させる仕掛けを、すでに一連のドタバタ劇の中に仕組んであるということです。「世に倦む日々」がその仕組みを明かすブログを出しました。

 安倍政権は国会が終わり正月を越せばこの問題は事実上雲散霧消すると見ています。
 この7年間はそうしたことの連続でした。「世に倦む日々」氏は、今回はそうさせてはならないとして、野党に対して秀逸なアイディアを提案しています。実現すれば確かに効果は抜群です。
 ブログ「世に倦む日々」を紹介します。
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「シンクライアント方式」の弁解と布石 – 野党は招待状発送業者の調査を 
世に倦む日々 2019-12-04 2
9日の本会議の安倍晋三の答弁で、「シンクライアント方式」を理由にして名簿データの復元が不可能だと説明した件について、逆にデータは復元可能であり、墓穴を掘る発言だったのではないかという反論と批判が上がっている。朝日がセキュリティ業界の担当者に取材した記事(4日4面)を書いていて、サーバーの削除データを復元できないようにする仕様は可能で、バックアップされた磁気テープのデータも複数回上書きされれば復元は限りなく不可能に近いという証言を載せている。また、内閣府にシステムを導入した委託企業である富士通に取材し、「個別のシステムの中身や契約内容については話せない」という回答を得ている。朝日の報道を見るかぎり、バックアップ・サーバー側のデータは復元可能で、名簿データは生きている可能性が高いという印象を受ける。無理にITの専門用語を使って逃げようとして、逆にボロを出した感を否めない。 

ネットの批判にあるように、おそらく安倍晋三は「シンクライアント方式」の意味を知らず、単にこの用語で弁解すれば野党と世間を煙に巻けるだろうと軽信し、官僚が書いたままの書面を棒読みしたのだろう。シンクライアント方式とは、thinという英単語のとおり、端末のPC側に外部記憶装置を搭載せず、データもアプリケーションもサーバー側が管理・提供するシステムである。この方式に環境を移行すれば、ウィルスの侵入感染を防止するセキュリティ機能が向上し、システムのアップデートやメンテナンスが容易になる。大企業や官庁は、この方式への移行が進行中だろう。fat client たるPC(Pentium/Windows)の機能を根拠にして、メインフレームをダウンサイジングするクライアントサーバモデルがブームとなった90年代前半を回顧すると、時代が一回りして先祖返りした感を覚える。端末PCにハードディスクが搭載されてないから、端末にデータは残らない。その弁解にはなる

知識のない安倍晋三は、おそらく官僚のブリーフィングでそう説明され、そうかそうかと納得して自信を持ったのだろう。自衛隊の日報のような事故にはならないなと、その懸念を払拭できて安心したのに違いない。志井和夫がTwで指摘しているとおり、政府側は一貫して「技術的に復元が不可能」とは明言していない。「そう聞いている」とか「そう報告を受けている」と言っているだけだ。「シンクライアント方式」という語を敢えて原稿に挿入し、本会議で首相に読み上げさせたことについて、私は、ある種の官僚の狡知なり作為の所在を感じ取る。「シンクライアント方式」という言葉を聞いた途端、ITの素養のある者なら、名簿データは消去されてないなと直観するからである。これは官僚側のメッセージであり、世間への示唆として受け取られるものだ。つまり、簡単に言えば、半年後か1年後に、「名簿が見つかりました」という顛末になるということだ。名簿データは生きていて実在するのである。

それは別に、官僚が安倍晋三に面従腹背しているとか、安倍晋三の裏をかく謀反だとか、そういう意味ではない。単に官僚の自己利益のためである。名簿データが生きていなければ、再来年に復活する「桜を見る会」の実務ができない。内閣府の現場官僚が事務ができない羽目になる。一から名簿台帳を作り直し、手作業の入力で作成するなどとんでもない工数だ。「桜を見る会」を継続させる以上、名簿の原本は必ずどこかに保管されていなければいけない。すなわち、後で名簿データが「発見」されたとき、今回の内閣府の答弁内容と辻褄を合わせるため、こうした曖昧な表現にしているのである。「完全に消去したとは断言していませんでした」と、舌を出して開き直るつもりなのだ。間違ったことは言ってないと後で強弁するための布石なのだ。官僚の習性であり生理である。「シンクライアント方式」の答弁の意味はそういうことで、富士通の守秘義務がその弁解の最終防波堤になっているのである。ニューオータニと同じだ。

予感として、招待状の発送業務を外注している業者の社内から、例えば、USBメモリに格納されていましたぁ、などという形で「発見」される図が考えられる。民間業者の事務所の机の中に偶然に保管されていたのなら、官僚は責任を問われなくて済む。内閣府内のLANサーバーからも、外部のバックアップ・サーバーからも消去したという話と辻褄を合わせられるストーリーだ。「桜を見る会」の招待状の発送は、民間業者に委託され下請けで行われている。業者には電子メールで官僚から指示書が届き、そこに名簿のファイルが添付されていただろう。名簿はExcelで作成された台帳仕様だと考えられる。ハガキに宛名印刷する作業のため、業者はExcelのファイルをPCのハードディスクに保存し、それを開いて一件一件印字したはずだ。予備のため、事故に備えたバックアップのため、大事な台帳をUSBメモリに複製するのは当然である。名簿を含めた当該業務の関連情報には、NDA(秘密保持契約)がかけられていただろう。

委託業務を受注して請け負った外部の民間業者はどこなのか。マスコミの表にはまだ名前が出ていない。野党は、その民間業者を訪問して調査すべきだろう。名簿データをどう受け取り、どう取り扱い、どう管理したかを事情聴取すべきである。内閣府からの指示書と契約内容についても開示を迫るべきだ。名簿の区分番号の意味について、内閣府の官僚と同じほど実務にタッチした業者は知っているに違いない。おそらく同じ業者が随意契約で毎年請け負っているはずで、各年の人数の増え方の異常についても感知し、区分「60」の面々の特徴についても察知していたと思われる。無論、今回の件があり、業者にも内閣府から手が回っていて、守秘義務を盾に官僚と官邸を守るのは分かりきったことだが、どういう会社でどういう人脈なのかが判明するだけでも一歩前進になる。週刊誌の取材対象になり、マスコミに新しいネタが提供される。社長は誰なのか。データ消去の技術仕様を問われている富士通同様、この委託業者に説明責任があるのは当然だ。

さて、野党は「桜を見る会」の疑惑解明と追及について、8班体制・総勢76名の国会議員を動員する本部を設置した。(1)山口・下関ルート班、(2)ホテルルート班、(3)昭恵夫人ルート班、(4)「桜を見る会」調査班(招待者・予算・セキュリティー)、(5)名簿調査班(名簿作成・廃棄過程)、(6)ネット調査班、(7)マスコミ報道調査班、(8)法務班、の重厚な編成だと紹介されている。本格的な布陣は結構なことだが、立ち上げて一週間が経過した割には、見合った成果が出ていない。注目に値する暴露や告発は、すべて共産党から発信されるものばかりだ。立憲・国民の議員は何をやっているのか不明で、テレビに出て目立ちたい欲望だけが透けて見える。NHKは、「もう飽きた」という「街の声」を撮って流し、「桜を見る会」の報道をやめてしまった。このままでは国民の関心は薄れ、年末年始の時間経過と共に尻すぼみになってしまう。通常国会で追及再開と言っても、安倍晋三は新しい関心事(北朝鮮・韓国・改憲・解散)を打ち出して、マスコミ報道を埋めるだろう。

時間の流れは簡単に人の関心を変える。ここで野党にアイディアを提案したいが、8班の班長は、8日に一度のペースで調査報告をするといい。つまり、8班のうちの1班が、デイリーで何らかのアップデートをネット(YouTube)で発表するのである。本部は事務局を置き、臨時のネット放送局を開設し、田村智子か石垣のり子をキャスターに据えて動画番組を配信したらどうか。その場で、各班の活動成果を報告し、新たな疑惑を提示すればよく、そうすれば、マスコミが報道をフェイドアウトしても国民の関心を正月を跨いで繋げられる。テレビには出演機会のない上脇博之や望月衣塑子を出して、問題提起するのもいいだろう。8班76人の大部隊が動いて作業を進めても、時間が経って国民の関心が他に移ってしまったら何にもならない。政治的な価値がなくなる。先に解散を切り出されて選挙対応で受け身になったら、疑惑の糾明や告発はそこで途絶えてしまう。森友や加計のときのように。