2019年12月25日水曜日

辺野古基地 埋め立て工期が2倍10年に 軟弱地盤で完成ムリ 出直しを

 名護市の米軍辺野古新基地建設をめぐり、政府は埋め立ての工期を当初想定していた5年から10年程度に延ばし、地上部分を含んだ新基地完成まで合計で13年かかるとする見込みを、25日の土木工学の専門家による軟弱地盤に関する「技術検討会」に報告するということです。
 これは沖縄県が1811月に、辺野古新基地の運用まで最短でも13年、最大25500億円の費用がかかると試算した妥当性を裏付けるものですが、10年程度」の埋め立て工事も順調に進むかどうかは不透明です。
 そもそも海面から90mの深さにある軟弱地盤を固めるには7万本の「砂杭」が必要なのですが、現在、日本にある作業船の植え込み限度深さは70mなので海底の地盤を固めることが出来ません。

 また政府は年明け以降、沖縄県に地盤改良工事のための設計変更を申請する予定ですが、新基地建設に断固反対を貫いている玉城デニー知事は許可しない方針です。デニー知事は23日、記者団に対し「それだけ時間も工期もかかる工事はいりません」と話しました。

 いずれにしても普天間基地の使用を最短で止めるためには辺野古基地の新設しかない、という言い分で埋め立てを強行してきた政府の構想は根本的に破綻しました。

 それだけではありません。米国務長官首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソン氏は、「辺野古の基地は、中国など外部からの攻撃に脆弱すぎるという問題があります。2、3発の精密誘導弾の攻撃を受ければ、滑走路は跡形もなく消え去るでしょう。戦略的な観点でいえば、辺野古の基地建設は愚かな計画です」と語り、軍事評論家の前田哲男氏も「アメリカは辺野古基地を使いたがらないと思います。普天間の滑走路が2800mあるのに対し、辺野古は1800mしかなく、V字滑走路なので使い勝手が悪い。まだ、計画全体の1%未満しか埋め立てていないのでいまなら引き返せます」と述べています(日刊ゲンダイ)。

 辺野古基地建設は直ちに止めるべきです。
 毎日新聞、琉球新報、沖縄タイムスは24日、それぞれ次の社説を掲げました。


 それとは別に、名護市議会は23日、12月定例会最終本会議を開き、憲法95条を順守し適用して同市辺野古新基地建設を強行しないことを国に求める意見書を賛成多数で可決しました。同条を適用して新基地建設を強行しないことを国に求めるよう全国の都道府県・市町村に要請する決議も賛成多数で可決しました。同条の適用を根拠に辺野古基地建設の中止を求める決議・意見書の可決は名護市議会では初めてです。

 3本の記事を紹介します。
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辺野古埋め立て工期10年 完成、最短で30年代以降 地盤改良費用膨張へ
しんぶん赤旗 2019年12月24日
 沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をめぐり、政府が埋め立ての工期を当初想定していた5年から10年程度に延びると見込んでいることが23日、分かりました。埋め立て工事後の施設整備などにも3年を見込み、新基地完成まで合計で13年かかることになります。政府が想定する最短の工期でも新基地完成は、30年代以降に大幅にずれ込むことになります。

政府見込み
 政府は、埋め立て海域の大浦湾側に広がる軟弱地盤の改良のため工期を延長せざるを得ないと判断。工事の長期化に伴い、3500億円以上としてきた費用もさらに膨れ上がることになります。防衛省は25日にも、土木工学の専門家による軟弱地盤に関する「技術検討会」を開き、工期の見積もりを報告します。
 沖縄県は2018年11月に、辺野古新基地の運用まで最短でも13年、最大2兆5500億円の費用がかかると試算していました。政府の今回の見積もりは、県の試算の妥当性を裏付けるものです。
 日米両政府の「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」(13年4月)では、新基地建設の工事期間を5年とし、その後の器材・施設調整や飛行場認証などを経て、「22年度又はその後」に普天間基地が「返還可能」としていました。この想定が変更されることになります。
 ただ、「10年程度」の工事も、順調に進むかどうかは不透明です。政府は年明け以降、沖縄県に地盤改良工事のための設計変更を申請する予定ですが、新基地建設に断固反対を貫いている玉城デニー知事は許可しない方針です。台風など自然災害による遅れも想定されます。新基地完成まで13年の見積もりがさらに延びれば、米軍普天間基地の「移設」は完全に破綻します。
 デニー知事は23日、記者団に対し「それだけ時間も工期もかかる工事はいりません」と話しました。


玉城知事「県の試算と合致」 辺野古埋め立てに10年 改めて反対強調
琉球新報 2019年12月24日
 米軍普天間飛行場の移設に伴う沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府が埋め立てと軟弱地盤の改良工事に必要な工期を10年程度、さらに施設整備に3年程度と見積もっていることについて玉城デニー沖縄県知事は23日、「(県の)試算とも合致する。普天間飛行場の一日も早い危険性除去のためには、辺野古の工事の強行は絶対に駄目だ」と移設に反対する考えを改めて強調した。
 玉城知事は、県独自の試算で地盤改良5年、埋め立て5年、その後の施設整備3年を合わせて工事に13年以上かかると主張してきた。玉城知事は「原点である普天間の負担軽減に向けて、国は真摯(しんし)に協議しなければならないということをこれからも強く申し入れていく」として、対話による解決を求める姿勢を示した。

 富川盛武副知事は、政府が示した約13年の工期見積もりに対して「県の試算と重なり、想定内だ」と述べた。「辺野古移設に固執することは、普天間飛行場の固定化につながりかねないという主張を続けている」と指摘。今後については「今までの主張を基本にする。軟弱地盤の計画変更が山場となるだろう」との見通しを示した。


「憲法95条適用し民意尊重を」 辺野古反対で名護市議会が国に意見書
琉球新報 2019年12月24日
【名護】沖縄県名護市議会は23日、12月定例会最終本会議を開き、憲法95条を順守し適用して同市辺野古新基地建設を強行しないことを国に求める意見書を賛成多数で可決した。同条を適用して新基地建設を強行しないことを国に求めるよう全国の都道府県・市町村に要請する決議も賛成多数で可決した。いずれも賛成13、反対11、退席1だった。同条の適用を根拠に辺野古基地建設の中止を求める決議・意見書の可決は名護市議会では初めて。

 憲法95条は、一つの地方公共団体のみに適用される特別法は住民投票で過半数の同意を得なければならないことを定めている。

 決議と意見書は1997年の名護市民投票や今年2月の県民投票で辺野古新基地建設反対の民意が示されているにもかかわらず、政府が基地建設を進めてきたと指摘。「憲法95条が示す地方自治権を著しく侵害している」と強調している。意見書は首相、衆参両院議長宛て。決議は全国知事会会長、全国都道府県議会議長会会長、全国市長会会長ら宛て。意見書・決議は野党議員13人の連名で提出した。
 賛成討論をした大城敬人氏は「(新基地建設は)特別法を作って県民の意思を問わねばならないものを、閣議決定のみで進めている。日本の民主主義を台無しにする問題だ」と訴えた。
 一方、反対討論をした比嘉忍氏は「(基地建設工事は)特別法ではなく公有水面埋立法で進められている事実がある。今回は(憲法95条の適用に)当たらない」と指摘した。