財務省の法人企業統計によると18年度の内部留保が7年連続で過去最大を更新し、金融業・保険業を除く全産業ベースで、17年度と比べて3・7%増の463兆1308億円となりました。
自民党は9月、税制調査会長だった宮沢洋一氏を小委員長にまわし、甘利明氏を会長に据える異例の人事を行いました。甘利氏は就任と同時に企業の内部留保を投資に回す環境を整えるための税制上の優遇措置を検討する考えをぶち上げましたが、そんなことで簡単に内部留保が取り崩されるとは思われません。
内部留保の大半は大企業が占めているもので、これほど巨額な内部留保が積み上がった背景には、安倍政権が一貫して強化してきた大企業優遇措置があります。
東京新聞の調査によると、法人税実効税率において資本金5億円以下の企業の法人税実効税率27・3%に対して資本金100億円以上の企業は16・3%でした。
また法人税額から一定額を差し引く「税額控除」による減税額は、17年度で1兆944億円と、民主党政権だった11年度から3倍に拡大し、企業への適用件数も5倍に伸びています。
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法人減税 巨大企業に恩恵集中 安倍政権で急増・優遇措置 追加へ
東京新聞 2019年12月12日
企業が納める法人税額を特別に優遇し減額する「租税特別措置」の適用額が、第二次安倍政権が発足した直後の二〇一三年度から急増している。法人税の実質的な負担割合は資本金の多い企業ほど低く、減税の恩恵が巨大企業に集中しているという試算もある。与党は十二日に決定する二〇年度の税制改正大綱に新たな優遇措置を盛り込む予定で、専門家は企業間の不公平感をさらに助長すると批判する。 (大島宏一郎)
安倍政権は一三年度に、賃上げを促すため、賃上げ額の一定割合を法人税額から差し引く「賃上げ促進減税」を新設。また研究開発を後押しする「研究開発減税」では、法人税額から差し引ける研究開発費の上限も引き上げ、減税恩恵を大きくした。
大和総研の神尾篤史氏は「この二つの措置により、法人税の減税額が増えた」と分析。財務省の資料によると、法人税額から一定額を差し引く「税額控除」による減税額は一七年度で一兆九百四十四億円と、民主党政権だった一一年度から三倍に拡大した。企業への適用件数も五倍に伸びた。
税理士の菅隆徳氏は、ほかの手法も含めた減税額は約二兆四千億円で、このうち半分超を企業数で1%に満たない資本金十億円超の大企業が占めると試算した。
また、中央大の富岡幸雄名誉教授が国税庁の調査(一七年三月期)を基に試算したところ、企業の利益に対して納めた法人税の割合を示す「負担率」は、資本金五億円以下の企業が27%だったが、資本金百億円超の企業は16%にとどまった。本来の法人実効税率の29・97%より大幅に低く、富岡氏は「大企業は租税特別措置で優遇され利益に見合った税負担をしていない」と指摘する。
麻生太郎財務相は三日の閣議後記者会見で、研究開発減税や賃上げ減税は適用件数では中小企業への適用件数が大半を占めるとして「幅広い企業が利用している」と強調。しかし、菅税理士は「中小企業は大企業に比べて研究開発費や賃金に出せる額が少なく、政策減税の恩恵は小さい」と指摘する。
租税特別措置の数自体も、一一~一七年度を通し八十五前後と高止まりしている。背景には安倍政権の経済成長を優先する姿勢と業界団体の要望を受けた与党の圧力があり、二〇年度改正でもベンチャー企業に出資した大企業を優遇する新たな減税措置を設ける予定。富岡氏は「不公平な法人税制の是正を優先するべきだ」と主張する。