2019年12月14日土曜日

14- 「税制改正大綱」は大企業優遇で 庶民には恩恵ゼロ

 消費税制度が出来て約30年、その税収はすべてこの間の所得税と法人税の減税分の補充に当てられました。
 安倍首相が「消費税の税収分は全額社会福祉に当てる」と綺麗な口を利いてからも全く変わりませんでした。
 12日、与党の自・公が決定した「令和2年度 与党税制改正大綱」もまさにそれで、大企業を優遇するもので消費増税に苦しむ庶民にはほとんど恩恵がないものでした。
 日刊ゲンダイと東京新聞の記事を紹介します。
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「税制改正大綱」は大企業優遇 庶民に恩恵ゼロで批判噴出
日刊ゲンダイ 2019/12/13
 12日、自民・公明が決定した「令和2年度 与党税制改正大綱」に対して、さすがに批判が噴出している。共同通信は<企業優遇、家計恩恵少なく>とタイトルをつけた記事を配信したほどだ。
 自民党も批判されることを覚悟しているのだろう。甘利明税制調査会長は「大企業に手厚く、庶民に厳しい税制という指摘は当たらない」と、先手を打って釈明してみせた。
 実際、自民・公明の「税制案」は、大企業優遇のオンパレードである。最大の目玉は、大企業が貯め込んだ内部留保を投資に回した場合、法人税が大幅に軽減される「オープンイノベーション税制」だ。大企業がベンチャー企業に対して1億円以上の投資を行うと、出資額の25%を課税所得から控除して法人税を軽減する。
 さらに、今年度末までだった「企業版ふるさと納税」の期限を5年間も延長する。しかも、現行は寄付額の3割しか法人税から税額控除しないのに、6割に引き上げる。
 その一方、消費増税に苦しむ庶民には、ほとんど恩恵がない

あの産経も疑問視
 あの産経新聞まで、<だが、2年度税制改正大綱には、家計負担を軽くする大きな減税措置は盛り込まれていない。むしろ2年は各種の税負担の増加が予定されており、1月からは年収850万円超の会社員の所得税を増税。(中略)10月は第3のビールやワインが増税される>と、自民・公明の税制案を疑問視している。
 このままでは、来年以降、景気が急降下するのは確実である。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「自民党も公明党も、日本経済の現状をまったく理解していない。アベノミクスを7年間続けても本格的に景気回復しないのは、大企業を優先し、庶民を置き去りにしてきたからです。庶民の懐が寂しいから消費が回復しない。なのに、また同じ失敗を繰り返そうとしている。日本経済の大きな問題は賃金が安すぎることです。OECDの調査によると、1997年の実質賃金を100とすると、2018年の日本は90・1まで減少している。先進国で賃金がダウンしているのは日本くらいです。アメリカは116、イギリスは127になっている。安倍政権のやっていることはアベコベです」
 どこまで庶民をいじめれば気が済むのか。


与党税制大綱、決定 20年度 企業優遇 個人が穴埋め
東京新聞 2019年12月13日
 自民、公明両党は十二日、二〇二〇年度の与党税制改正大綱を決めた。税制による経済成長の後押しを狙い、企業に投資を促すための優遇税制を新たに設けることが柱だ。個人が投資をしやすくする税制も拡充するが、十月の消費税率引き上げに続き、年明けから政府は一部会社員の所得税を実質的に引き上げる制度改正に踏み切る。大綱は個人に負担増を迫る一方で大企業を優遇する政府・与党の姿勢を鮮明に映し出した。(吉田通夫)

 自民党が目玉と位置付ける「オープンイノベーション税制」は、企業にベンチャー企業への投資を促す制度。大企業が一億円以上、中小企業なら一千万円以上を設立十年未満の非上場のベンチャー企業に出資すると、出資額の25%を課税対象の所得から差し引いて減税する。企業がため込んだ「内部留保」を使わせ、経済の活性化を狙う制度だ。

 このほか、高速データ通信を可能にする第五世代(5G)移動通信システムの整備を早めるため、通信会社が事前の計画より早い時期に設備投資をする場合、投資額の15%を法人税から差し引くなどの優遇措置も設ける。
 代わりに資本金百億円超の大企業に限って、社員の交際費の一部を非課税にしてきた特例措置を廃止。研究開発に積極的な企業の法人税を優遇する措置の適用条件も厳しくし、財源を工面する。税制変更後の企業関連の税負担は一九年度とほぼ変わらない見通し。

 一方、個人に関係する税制では、年百二十万円までの投資に対する運用益を非課税にする「少額投資非課税制度(NISA)」が二三年末に期限を迎えることを受けて、二四年からは低リスクの商品に投資をしやすくする制度を設ける。投資に慣れてもらい、老後の資産形成を後押しすることが狙いだ。
 未婚のひとり親支援では、これまで婚姻歴のあるひとり親だけが対象だった「寡婦(夫)控除」を未婚のひとり親にも適用。課税所得が五百万円以下なら最大で年三十五万円を対象の所得から差し引き減税する。

<解説>
 二〇年度の与党税制改正大綱は法人税負担を軽くする大企業などへの「アメ」を多くそろえたことが特徴だ。しかし、その恩恵を受けられる中小企業は少ないとみられる上、年明けからは一部の会社員の所得税負担が実質的に増す「サラリーマン増税」も始まる。米中貿易摩擦もあって景気の先行きが不安視される中、自民党の甘利明税調会長が話すような「荒々しい経済の変化に追いつく税制」になるかは見通しにくい。

 「世界で企業が一番活動しやすい国」づくりを掲げる安倍政権は、法人税率を引き下げ、特別な減税も充実させてきた。これにより大企業はもうけを増やしたが、利益を賃上げや設備投資には回さず「内部留保」をためこむばかりだった
 それでも与党は今回の税制変更で企業が新たに投資した場合の減税額を増やす方針を打ち出したが、その効果には疑問符がつく。既に減税の恩恵は大企業に集中している上、大企業の業績は米中貿易摩擦の影響で悪化しつつあり、新たな投資に資金を回しにくい。
 大企業を優遇する一方、これまで政権は個人の税負担を増やしてきた。消費税率の引き上げに続き、年明けからは、会社員の課税所得から一定額を差し引く「給与所得控除」の金額を小さくする。年収八百五十万円超の会社員(子育てや介護に携わる人などは除く)の所得税負担は増す。
 今回の大綱は官邸の意向を色濃く反映した。しかし大企業を優遇し、個人にその穴埋めをさせる税制で成長を続けられるのか。内閣府が発表した十月の景気動向指数は、一四年四月の前回の消費税率引き上げ時より大きく落ち込んだ。政府・与党の構想に狂いが生じる恐れもある。 (大島宏一郎)

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