2021年6月27日日曜日

海外メディアは「天皇の懸念」に同調 菅内閣の天皇無視 世界から総スカン

 24日に行われた東京都のモニタリング会議で、都内のコロナ新規陽性者数の増加比が大きく上昇していて感染の再拡大の予兆が見られると結論づけられました。都内の感染状況と医療提供体制いずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持されていて、この1年間コロナ対応に忙殺してきた医療体制は、 ワクチン対応にも追われていて全く余力がない状態です。

 実際26日時点の直近1週間の新規感染者数は平均476人/日で、1週間前の19日時点の直近1週間の平均361人/日を100人以上/日も上回っています。
 このままでは数週間後の五輪開催の頃に感染爆発を起こしかねず、ワクチン接種もPCR検査の体制も整っていない中ではひたすら人流を抑えるしかありません。しかし政府や五輪委は、五輪の盛り上がりを狙って各会場で実質2万5千人もの観客を予定し、その後止めたとはいえ一時は会場で酒の販売まで予定したというような状況下では、首都圏の人たちに外出の自粛を要求するというのは所詮無理な話です。
 それに加えてデルタ株(インド型変異株)の急速な蔓延が予想される(実際にウガンダ選手団の2名の感染はデルタ型でした)ので、感染爆発を否定できる要素は全くありません。
 ウガンダ選手団への応対で明らかになったように、政府のとっている水際対策も、五輪委がまとめたルールブックも、コロナの海外からの流入防止や入国後の伝染防止(バブルシステム)も全くのザルであることが分かりました。
 宮内庁長官が「開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されている、ご心配であると拝察している」と、天皇が抱く五輪開催への不安を代弁したことに対して、そんな実態を知ってか知らずか菅首相らが完全に無視したことに、海外のメディアは一斉に批判の筆を執りました。

 考え得る最高の対策を取った場合でも、五輪で大感染を引き起こせば結果責任を問われますが、何もかもザルのままで強行したということになれば言い訳も立ちません。

 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ピント外れな「菅・安倍コンビ」“天皇無視”で団結、希望の五輪猛アピール
                          日刊ゲンダイ 2021/06/26
「世界が団結をして人類の努力と英知によってこの難局を乗り越える大会にしたいと思っています」― 。東京都議選(7月4日投開票)の告示を迎えた25日、自民党本部で行われた出陣式で、そう力を込めた菅首相。五輪開幕まで1カ月を切ったが、都内は感染拡大に転じ、感染力最強のインド株が急速に広がっている。現実から目を背けた菅首相の五輪強行には日本国民も国際社会もドッチラケだ。
                ◇  ◇  ◇
 五輪開催を巡り、菅首相が決まって使う「安心・安全」。念仏のように繰り返すだけで、実際は五輪関係者の入国後の隔離措置を免除するなど不安材料は山積みだ。
 空虚な言葉を並べるあたり、安倍前首相も負けていない。
 安倍前首相は25日、尾久八幡神社(東京・荒川区)で開かれた自民都議候補の出陣式に登場。1964年の東京五輪に触れ、「あの時の感動、日本選手の活躍、試合を通して未来に見た夢や希望、勇気」と大仰な言葉を連発。「コロナ禍にあって(五輪を)成功させるのは大変」「挑戦して何とか成功させることが世界の希望につながっていく、勇気を与えることになると思う」と訴えた。
 菅首相も安倍前首相も五輪開催の意義として、「世界が団結」「世界の希望」を全力でアピールしているが、ピント外れもいいところ。開催強行が世界にどう映っているのかといえば、「天皇を無視した」だ
 宮内庁長官の発言が波紋を広げている。天皇が名誉総裁を務める五輪の開幕が近づいてきたことを定例会見(24日)で問われ、「開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されている、ご心配であると拝察しています」と、天皇が抱く五輪開催への不安を代弁

■世界から総スカン 海外メディア「天皇の懸念」に同調
 異例の出来事に海外メディアは「五輪開催に重要な不信任投票」(米ワシントン・ポスト)、「日本の天皇が五輪に“強い懸念”」(英フィナンシャル・タイムズ)などと報じた。
 菅首相は「長官本人の見解を述べたと理解している」と火消しに走ったが、「天皇の懸念」を全否定した発言に海外メディアは即座に反応。「日本の首相、天皇は五輪を“心配”していないと主張」(仏AFP通信)、「コロナや五輪に対する天皇の懸念を日本は無視」(米UPI通信)と、センセーショナルな見出しを並べたのだ。
 鎮火どころか延焼するのは当然で、そもそも海外メディアはコロナ禍の五輪開催に懐疑的である。「東京五輪はコロナ禍でも開催されるのか」(英BBC)、「なぜ東京五輪は中止されないのか」(米ニューヨーク・タイムズ)と疑問を突き付けている。「天皇の懸念」と一致した立場なのだろう。

 ところが、菅首相や安倍前首相の“答え”は「団結」や「希望」といった非科学的なものばかり。しょせん、現在の感染状況に目を背けた奇麗事だ。
 25日の都内の感染者は562人。直近1週間平均は455.1人に上り、前週比17%増。都内のインド株は5月末(24~30日)に3件だったが、現在は45件に(6月14~20日)膨れ上がった。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)がこう言う。
「都内は完全にリバウンドし、五輪関係者の入国はずさんです。ウガンダ人選手の感染は五輪関係者のプレーブックが、いかに穴だらけかを証明しました。専門家から『甘い』と指摘された後、改訂したのに、このありさまですから、今後数万人の関係者が入国したら感染拡大は必至。頼みのワクチン接種で後れを取る日本に、感染爆発は防げません。既に“敗戦”しているのです」
 世界に「団結」や「希望」を訴えても響かない。