2021年6月8日火曜日

08- 社会は変わるし、変えられる―学生オンラインゼミ(6)~(7)

 民青同盟主催で5月23日に行われた「社会は変わるし、変えられる―志位さんと語る学生オンラインゼミ」の詳報が、テーマごとに連載されることになりました。
 その第6回と第7回です。
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社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(6)
政権協力で合意なら 新局面が
                        しんぶん赤旗 2021年6月6日
野党共闘 到達点と展望をどう見ているか
 オンラインゼミの後半では、事前に寄せられた質問に志位氏が答えました。
 質問 野党共闘はどこまで進んでいますか。野党共闘で新しい政権が実現し、意見が全く合わない問題が発生した場合にどのように対応しますか。さらに共通政策が実現した後、政権はどうしますか。
 志位 ずいぶん先のことまで考えている質問ですね。
 まず、どこまで進んでいるかということですが、メディアなどは野党間に違いがあると針小棒大に書いて、「うまくいってない」という調子のものが多いんですが、私は、この間、共闘を前に進めるうえで大事な動きがあると思っているんです。
 4月25日に行われた北海道、長野、広島――三つの国政補欠選挙・再選挙で、野党は3戦3勝でした。国民のなかに菅政権への怒りや批判がぐっと広がっている、野党が候補者を一本化してたたかえば勝てる、そのことが示されました。
 それを踏まえて4月27日に私と立憲民主党の枝野代表との党首会談を行いました。党首会談では、「総選挙での協力にむけての協議を開始する」ということで一致をしました。とても重要な確認で、これも一歩前進だと思います。

今後、共闘を前に進めていくうえで何が大切か
 志位 それでは今後、共闘を前に進めていくうえで何が大事か。


(パネル7)これを見てください。市民と野党の共闘をどうやって発展させるか。日本共産党の立場を簡単にまとめました。
 まず「共闘の基本的姿勢」については、「対等平等」「相互尊重」を貫く。当たり前のように見えますけれど、この姿勢を貫いてこそお互いに力を発揮できますよね。共闘というのは、そこに参加するパーティーがみんな躍進する――ウィンウィンになることで、はじめて力を発揮することができます。そういう立場でやっていきたい。
 次に、「協議していく中身」ですが、私たちとしては、「共通政策」「政権のあり方」「選挙協力」、この三つの分野で話し合いを進めていきたい。これが党首会談で私が提起したことです。この三つの分野のどれも大事なんだけど、とくに「政権のあり方」――自公政権を倒した後にどういう新しい政権つくるか、これについて前向きの合意をつくることが、全体を前に進めるうえで画期的な力になると考えています。
 その政権についてよく聞かれるのは、「閣内協力か、閣外協力か」という質問なんですが、私は、「どちらもありうる」、「一致点を大切にして対応」すればいいと言っています。「閣内であれ、閣外であれ、政権協力で合意がつくられれば、共闘の画期的な新局面が開かれる」。このことを強調したいと思います。
 閣内協力であれ、閣外協力であれ、どちらであっても、菅政権を打倒した後に、こういう新しい政権をつくるという、日本共産党を含めた政権協力の合意ができれば、共闘の画期的な新局面が開けてきます。その場合は「共通政策」だって、政権が実行する政策になるでしょう。「選挙協力」だって、うんと力が入りますよね。何よりも新しい政権の姿が見えてきたら、国民のみなさんのなかに大きな変化が起こると思う。これならばまかせてみようという大きな変化が起こってくると思います。いろいろと困難はあるでしょうが、そういう方向に向けて努力中というのが、今の到達点です。

「意見が合わない場合はどうするか」――一致点を大切にして結束し、実行していく
 志位 質問に戻りますが、「意見が全く合わない場合はどうするのか」という質問ですが、私たちとしては不一致点は新しい政権に持ち込むことはしません。
 たとえば、日米安保条約を廃棄して、本当の独立国と言える日本をつくるというのは、私たちが党綱領に掲げている大方針です。このことを党独自の主張としては大いに訴えていきますが、それを新しい政権に持ち込むことはしません。自衛隊に対する政策、天皇の制度に対する政策などでも、党独自の方針や立場を持ち込むことはしません。
 新しい政権はあくまで一致点で結束し、実行していく。すでに5年半以上もの期間、共闘を積み重ねていますから、この共闘は、まず安保法制廃止と立憲主義の回復を「一丁目一番地」として始まったのですが、それだけじゃなくて、暮らしと経済、民主主義、ジェンダー平等、米軍基地、原発、いろいろな分野で一致点が広がっていますから、そういう一致点を大切にして政権を発展させていきます。

「共通政策が実現した後、 政権はどうするか」――国民と相談しながら進む
 志位 質問では最後に「共通政策が実現した後、政権はどうしますか」とあります。ここまで心配してくれてうれしいんですけども、これはだいぶ先の仮定の話ですから、いまから言うのはちょっと早いと思いますし、やりながら考えていきたいと思います。
 ただ、一般的な立場を述べるとしますと、国民のみなさんへの公約を果たしたら、次にどういう道を進むかは、国民と相談しながら進める――つまり解散・総選挙で国民の審判を仰いで、国民多数の意思を踏まえて次の道へ進んでいくというのが、民主政治の常道ではないかと思っています。
 共闘の前途については、だいたい今お話しした立場で頑張っていきたいと思っていますが、何しろ総選挙での本格的共闘は初めてであり、困難もたくさんあると思います。そのときに共闘を後押しする最大の力は、市民的・国民的な世論と運動なんです。若いみなさんが「野党は共闘」、「共闘して新しい政権」という声を、どんどんあげていってほしいと思います。

市民や青年の声でこそ共闘が進むことを感じたのは――安保法制反対のたたかいで
 中山 市民や青年の声でこそ共闘が進むっていうのはどんな場面で感じますか。
 志位 安保法制が強行採決された2015年の9月19日、そこにいたる時期に、私は、国会前の集会に何度も行きました。そこには若いみなさんが、たくさん詰めかけてきていて、最初は「戦争法案絶対反対」というコールだったんですけど、最後は「野党は共闘」というコールに変わっていきました。「志位さん頼みます。共闘でやってほしい」と、ずいぶんその場でも言われました。そういう声に背中を押されて、共闘の道に踏み出していったんです。
 やっぱり、共闘の力がないと、今の政治を変えられません。いろいろと立場に違いがあっても、それを横に置いて、今のここまで腐ってしまった政治を大本から変えるという点で力を合わせて頑張りたいと思っているんです。(つづく)


社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(7)
大事なのは「二重のとりくみ」
                        しんぶん赤旗 2021年6月6日
軍事的・経済的なアメリカ依存
脱却するために何が必要か、その具体的な道筋は
 質問 軍事的・経済的にアメリカ依存から脱却するために何が必要か具体的な道筋を教えてください。
 志位 これは日本の改革の根本問題です。そのためには「二重のとりくみ」が大事だということを言いたいです。

日米安保条約に対する賛成、反対の違いを超えて、緊急の課題で協力していく
 志位 第一は、日米安保条約にたいする賛成、反対の違いを超えて、いろいろな緊急の課題で協力していくことです。
 野党間では、憲法違反の安保法制を廃止する、辺野古新基地建設は中止する、日米地位協定を抜本改正するなどの一致点が、すでにつくられています。こういう緊急の課題では、安保条約にたいする賛成、反対の垣根を越えて、一致点を大切にして協力していきたいと考えています。
 この点にかかわって、私がとても印象深く思い出すのは、亡くなった沖縄県の翁長前知事がおっしゃった言葉です。
 「これまで沖縄では、米軍基地を真ん中に置いて、保守と革新がたたかってきた。そのことで一番喜んだのは日米両政府です。これからは、保守は革新に敬意をもち、革新は保守に敬意をもち、お互いに協力してやっていきましょう」
 とてもいい言葉だとジーンときました。そういう精神で、一致点を大切にしてやっていきたいというのが一つなんです。

日米安保条約廃棄の国民的多数派を――在日米軍の正体を広く明らかにしていく
 志位 同時に、第二に言いたいのは、日米安保条約を廃棄して、本当の独立国といえる日本をつくる、アメリカとの関係は対等・平等の日米友好条約を結ぶ、そこにこそ私たちは、日本の未来があると確信していますが、そのための国民的多数派をつくる独自の努力を行うことがとても大切だということです。
 そのためには、一つの「神話」を打ち破る必要があります。どういうことかというと、「在日米軍は日本を守ってくれている」。この「神話」がずいぶんと浸透している。これを打ち破ることがとても大切だと思うんですね。


 (パネル8)これを見てください。在日米軍は、四つの「殴り込み」部隊――つまり海外への侵略と干渉を専門にする部隊で構成されているんです。
 第一は、「海兵遠征軍」です。沖縄県と山口県岩国基地を根城にしています。アメリカは三つの「海兵遠征軍」を持っており、「第1海兵遠征軍」と「第2海兵遠征軍」は本拠地がアメリカにあります。「第3海兵遠征軍」だけが、沖縄と岩国を本拠地にしている。アフガニスタン戦争、イラク戦争など、「殴り込み」を専門でやっている部隊です。海兵隊に基地を提供しているのは、世界に日本だけしかありません。
 第二は、「空母打撃群」です。神奈川県の横須賀基地を母港にしています。米海軍というのは11の空母を持っているんですけども、母港を海外に置いているのは横須賀基地だけです。「空母打撃群」も「殴り込み」専門の戦闘部隊です。
 第三は、「遠征打撃群」です。長崎県の佐世保基地を、強襲揚陸艦という空母並みの巨大な戦闘艦が母港にしています。強襲揚陸艦は、佐世保を根城にして、沖縄まで行って、沖縄で海兵隊を積んで中東に行く、これを繰り返してきました。強襲揚陸艦に母港を提供しているのも日本だけです。
 第四に、「航空宇宙遠征軍」というのがありまして、青森県の三沢基地、東京都の横田基地、沖縄県の嘉手納基地などに駐留する爆撃機とか、空中給油機とか、輸送機とか、戦闘機とか、そういう軍用機が一つのグループを構成して、地球のはてまで攻撃に行く。これも「殴り込み」専門の部隊です。
 これが在日米軍の正体です。この四つのすべてが、海外への「殴り込み」を専門にしています。「在日米軍が日本を守っている」というのは「神話」なんです。これはアメリカの歴代の国防長官自身が「日本を守る任務を与えている部隊はない」というくらい、はっきりしていることなのです。
 中山 自分で言っている。
 志位 自分で言っている。こうして日本は、海外への戦争の「殴り込み」の本拠地にされている。しかも今の危険は、米軍が「殴り込む」だけじゃなくて、安保法制を発動して自衛隊もつれていこうというところにあります。
 ここまで日米安保体制の危険が深刻になっているわけですから、緊急の課題として安保法制廃止で力をあわせながら、日本共産党の独自の努力として、日米安保条約をなくして本当に独立国といえる日本をつくることにこそ、日本の平和と安全を守る道があるということを大いに訴えていく、そういう「二重のとりくみ」を行うことが大事になっているのです。

安保廃棄の流れを強めることは、緊急の課題を前に進めるうえでも一番の力になる
 志位 「二重のとりくみ」ということで、もう一つ言いたいのは、日米安保条約廃棄の流れをうんと強めることは、さまざまな緊急の課題を前に進めるうえでも一番の力になるということです。
 どういうことかといいますと、さきほど冒頭に述べた緊急の課題のどれをとっても、本気でやろうとしますと、日米安保体制の現状を絶対だという勢力、今の現状には指一本触れさせないという勢力からの激しい妨害が起こります。
 たとえば辺野古新基地建設を中止する、これは野党共通の政策ですけれども、本気で実行しようと思ったら、激しい妨害が出てくるでしょう。「そんなことをしたら日米安保体制が弱まってしまう」という妨害が必ず出てくるでしょう。現に民主党政権のさいにも、そういう妨害がありました。
 そのときに、「日米安保条約は、日本の平和にとって有害無益であって、日米安保条約を廃棄した独立・平和の日本にこそ未来がある」ということを堂々と主張する流れが強くなってこそ――日本共産党や民青同盟はそうですけど――、そういう流れが強くなってこそ、辺野古新基地を止めるという緊急の課題一つとっても、それを前に進める力になる。こういう関係にあります。
 緊急の課題を本気で実行するうえでも、「二重のとりくみ」が大切になってくる。このことを私は言いたいと思うんですね。

経済的なアメリカ依存の状況をどう考えるか
 中山 ありがとうございます。軍事的に「米軍が守ってくれる」というのが「神話」だという話をおっしゃったんですけど、経済的にもアメリカ依存じゃないかっていう質問で、そこから脱却するには何が必要かということはどうでしょうか。
 志位 日米安保条約というのは、第2条に日米経済協力という条項があって、この条項も一つのテコにしながら、日本経済をアメリカの支配下に組み入れていくということが戦後一貫して続けられてきました。
 たとえばエネルギーも、石炭産業をつぶしてアメリカの支配下にある石油に置き換え、原発を押し付ける。食料も、日本人の食生活を変えて、お米を減らして小麦に変えるなどのことをやってきた。食料自給率は38%まで下がってしまいました。
 最近で言えば、TPP(環太平洋連携協定)交渉などを通じて、あらゆる関税、非関税障壁を撤廃して、アメリカの多国籍企業が日本でもうけたい放題の状況をつくるということを散々やったあげく、最後には交渉から離脱し、今度は日米の2国間交渉で無理難題を押し付けた。
 本当に身勝手な内政干渉を繰り返してきたわけですが、そのために日本経済全体がゆがめられてきた。矛盾がひどくなり、もろく弱い経済になってしまった。この面からも、アメリカ依存からの脱却が、各分野の強い要求になっていると思います。そうした各分野のたたかいを発展させ、合流させることが大切です。
 日本経済もアメリカ依存・従属から抜け出さないと、独立国としてのまともで健全な発展の道が開けてきません。
 中山 今の話を聞くとアメリカ依存の経済って全然発展性がないですね。
 志位 発展性がないです。それにくわえて今の状況を言うと、バイデン米政権は、まず対中国の軍事・経済戦略をつくり、それに全面的に日本を組み入れるというやり方をとっています。米軍の戦略に自衛隊を動員し、日本経済も米国の対中戦略に組み入れていくというやり方をしています。これは日本にとって、たいへん有害で危険な道だということも、言っておきたいと思います。 (つづく)