2021年6月23日水曜日

23- 通常国会 共闘・世論が政治動かす(3)(4)(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗連載記事の3回目と4回目です。

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通常国会 共闘・世論が政治動かす(3)
市民と野党が願い実現
                        しんぶん赤旗 2021年6月21日
 「初めて言っていただきました。ありがとうございます」―。2月15日の衆院予算委員会、日本共産党の畑野君枝議員が、身にまとった純白のスーツのまぶしさに負けない笑顔を輝かせました。

少人数学級検討
 35人学級について政府が、小学校に加え中学校でも実現に向け検討すると初めて表明した瞬間です。1学級20~30人という世界の流れを示して迫った畑野氏に、菅義偉首相が「望ましい指導体制を検討していく」「中学校を念頭に言った」と明言したのです。18日に閣議決定された「骨太の方針」にも「中学校を含め」検討すると盛り込まれました。
 コロナ禍を機に高まった声が政治を動かし、40年間変わらなかった学級編成(40人)を小学校全学年で35人に引き下げる改正法が今国会で成立しました。
 菅首相は畑野氏に「一人ひとりにきめ細かな教育が可能になる」と少人数学級の効果を認め、萩生田光一文科相も「中学校も含め最終的には30人以下が理想だ」と踏み込んで発言。文科省は、国庫負担1700億円で小中全学年を30人学級にできるとの試算を初めて示しました。

 もう一つ、関係者の長年のたたかいが実ったのが、建設アスベスト(石綿)補償基金の創設です。建設アスベスト訴訟で国と建材メーカーの責任を認める初の判断を下した最高裁判決(5月)を受け、6月に基金創設のための新法が全会一致で成立。初提訴から13年、被害者や家族らが求めてきた「裁判を起こさずとも救済」される仕組みができました。基金への建材メーカーの未参加や、対象職種・期間の制限など残る課題の早期解消へ、共産党など野党は「国の責任で道筋をつけよ」と求めています。
 入管法改定案では、市民の怒りの声と野党の結束が菅政権を追い詰めました。3月に名古屋出入国管理局でスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった事件で、遺族にさえビデオの開示を拒むなど、法務省、入管庁の隠ぺい体質が露呈。国会前での連日の座り込みやSNSでの発信などで、入管行政と同法案への批判が急速に広がりました。
 共産党と立憲民主党、国民民主党は同法案反対で結束し、衆院法務委員会での採決を3回阻止。世論に耐えきれず、政府・与党は成立を断念しました。

LGBT法案を
 一方、LGBT法案をめぐり、共産、立民など野党が2016年に「差別解消法案」を提案したのに対し、自民党はようやく今年、「理解増進法案」を提起。超党派議連で、野党の要求を受け、法案の目的・理念に「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」と盛り込み、「性同一性」の言葉を「性自認」に修正する案が了承されました。
 与野党合意により、今国会中の成立が期待されましたが、自民党議員が強く反発し、同党は法案の提出を見送り。同党内の会合では、LGBTへの差別や偏見、憎悪に基づく発言が相次いでいたことが発覚。9・4万人分の抗議署名が集まり、全国16紙の社説が法整備を支持するなど、世論が自民党を包囲しています。(つづく)


通常国会 共闘・世論が政治動かす(4)
改憲策動を許さない
                       しんぶん赤旗 2021年6月22日
 「自民党が『改憲4項目』の議論を憲法審査会に持ち込もうとして以来3年間、今国会を含めて9国会にわたって、改憲案づくりの議論を許さなかった」「これは3000万人署名運動をはじめ、『安倍・菅改憲反対』を掲げた市民と野党の共闘の重要な成果だ」。日本共産党の志位和夫委員長は16日の党国会議員団総会のあいさつで、こう強調しました。

自民の思惑外れ
 安倍晋三前首相が9条改憲に踏み込んで“改憲宣言”を行ったのが2017年5月3日。翌18年には自民党が「改憲4項目」をまとめ、憲法審査会に持ち込もうとします。しかし、市民の中からは「安倍改憲を許さない」という声が草の根からわき上がり、安倍9条改憲に反対する3000万人署名が急速に広がりました。以来、安保法制廃止を求める市民と野党の共闘は、「安倍改憲反対」の共闘へと発展していきます。
 こうしたなか、政府・与党は、憲法審査会を動かすため、国民投票法の改定を野党に呼びかけます。これに対し、日本共産党の赤嶺政賢議員が「改定案は、憲法審査会を動かすための“呼び水”だ」と喝破。これによって、立憲民主党など他の野党は、共同提出を呼びかける与党の提案には乗らず、与党だけで改定案を提出せざるをえなくなったのです。こうして自民党の思惑は完全に外れました。
 一方で、自民党は国民投票法改定案を提出した手前、これを処理しなければ次に進めないジレンマに陥ります。改定案が改憲議論の“足かせ”となったのです。

総選挙で決着を
 安倍氏は辞任会見で「国民的世論が盛り上がらなかった」と改憲策動の破綻を認め、退陣しました。ところが、菅義偉首相は「安倍改憲」に固執し、総選挙前に何とか“足かせ”を外そうと、今国会での改定国民投票法の成立をはかります。しかし、法案審議によってCM規制や最低投票率の問題など、現行国民投票法の根本的な欠陥が再び焦点として浮上し、“トゲ”のように突き刺さったままです。
 菅政権からは、新型コロナウイルス感染症拡大のさなか、「緊急事態条項」を突破口にして改憲論議を進めようとする言動がでています。しかし、この動きに対しても、立民の枝野幸男代表は15日の衆院本会議で「憲法に対する無知蒙昧(もうまい)ぶりを示すのみならず、多くの方が命を落とし、苦しむ中で不謹慎の極みだ」と痛烈に批判しました。
 志位氏は党国会議員団総会のあいさつで、政府・与党の改憲策動とのたたかいの経過にふれつつ、「『安倍・菅改憲を許さない』―この点では、野党の共闘は揺らいでいない」と強調。「この3年間のたたかいに確信をもって、総選挙で決着をつける―。総選挙で改憲策動に終止符を打つ審判を下すために意気高く奮闘しよう」と呼びかけました。(つづく)