2021年6月5日土曜日

菅首相は感染リスク不明のままで五輪開催を強行しようとしている

 共産党の志位委員長は3日、記者会見し、菅首相がコロナ対策分科会に対して五輪開催による感染拡大のリスク評価を求めること拒否し、開催によるリスクを何も明らかにしないまま突き進んでいることを強く批判し、「中止の決断を重ねて強く求める」と表明しました。

 志位氏は政府が五輪パラ開催によって日本国内の感染拡大のリスクがどうなるのかを明らかにしようとしない。日本国内の医療体制に対する負荷がどうなるのかも一切明らかにしていない。分科会に対して、リスク評価を求めることすら拒否する。一番肝心な問題を明らかにしないまま開催に突っ込むというのは、目をつぶったまま断崖から飛び降りるようなもので、絶対に認めるわけにはいかない」として、今夏の五輪・パラの開催中止を強く求めました。
 また、菅首相が五輪の開催について反対の意向が強い分科会に諮問しないで、内閣官房に設置したコロナ対策調整会議に感染症の専門家2人が入っていることを挙げて「専門家の意見を聞いている」と弁明しことについて、「調整会議は大会推進が前提の会議で、リスク評価を専門とする会議ではない。こんな弁明は通らない」と批判しました。

 政府分科会の尾身会長は3日の参院厚生労働委で、東京五輪・パラについて「こういうパンデミックでやるのが普通ではない。やるなら強い覚悟でやってもらう必要がある」「スタジアムの中だけのことを考えても感染対策ができない」「ジャーナリスト、スポンサーのプレーブック(規則集)の順守は選手より懸念がある」と話し、徹底した感染対策を求めるとともに、近く専門家の考えを示すことを明らかにしました。
 緊急事態宣言が解かれる20日までに分科会の意見をまとめ、政府に提出するとともにI OCにも直接提出するとしています。

 政府は、選手たちを外部と遮断した空間をつくる「バブル方式」でコロナの感染を防ぐとしていますが、この「バブル空間」には延べ30万人の国内関係者が出入りするので、外部と遮断は不可能です。事実これまで遥かに規模の小さな国際大会でも失敗したケースがありその不完全さが指摘されています。
 日本医師会常任理事釜萢敏非常に感染リスクが高く、わが国で感染した選手が母国に持ち帰り感染拡大させてしまう」危険性を強調しています。
 
 一方、菅首相はひたすら「安全、安心に実施する」と呪文を唱えるのみです。
 政府関係者によれば「首相は観客を入れる五輪開催に自信を持っている」そうですが、一体、何を根拠にした自信なのかでしょうか。そういうのを非科学的と言います。

 あの「Go To」での失敗が「東京五輪」で再現されようとしています。
 しんぶん赤旗と東京新聞の2つの記事を紹介します。
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感染リスク不明のまま五輪開催強行許せない
目をつぶったまま断崖から飛び降りるようなもの
                        しんぶん赤旗 2021年6月4日
志位委員長が会見
 日本共産党の志位和夫委員長は3日、国会内で記者会見し、菅義偉首相が、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会に対して、五輪開催による感染拡大のリスク評価を求めることすら拒否し、開催によるリスクを何も明らかにしないまま突き進んでいることを強く批判。「中止の決断を重ねて強く求める」と表明しました。
 志位氏は、2日の衆院厚生労働委員会で、日本共産党の宮本徹議員の質問に対して、政府分科会の尾身茂会長が、五輪開催について、「今の状況でやるというのは普通はない。このパンデミック(世界的流行)で」と答弁したことについて、「たいへん重要な発言だ」と強調。他方で、菅首相が、1日の参院厚生労働委員会の日本共産党の倉林明子議員が、「分科会の判断を求めよ」と提起したことに対して、あくまで拒否する態度をとったことについて、「まったく許しがたい」と強く批判、次のようにのべました。
 「五輪パラ開催に固執しながら、開催によって日本国内の感染拡大のリスクがどうなるのかを明らかにしようとしない。日本国内の医療体制に対する負荷がどうなるのかも一切明らかにしていない。分科会に対して、リスク評価を求めることすら拒否する。一番肝心な問題を明らかにしないまま開催に突っ込むというのは、目をつぶったまま断崖から飛び降りるようなもので、日本国民の命をギャンブルにかけるやり方であり、絶対に認めるわけにはいかない。いよいよもって開催強行に道理なしということがはっきりしてきた。今夏の五輪・パラリンピックの開催中止を重ねて強く求める」

 また志位氏は、首相が、内閣官房に設置したコロナ対策調整会議に感染症の専門家2人が入っていることを理由に「専門家の意見を聞いている」と弁明していることについて、「調整会議は大会推進が前提の会議で、リスク評価を専門とする会議ではない。こんな弁明は通らない」と批判しました。
 さらに志位氏は、尾身氏が2日の衆院厚労委での他党議員の質問に、「五輪開催に伴う国内での感染拡大の影響を評価し、どのようにすればリスクを軽減できるか」などの意見を伝えるのは「われわれプロフェッショナルの責任だ」と言明したことにも言及。分科会会長がこう表明しているのに、意見を聞こうともしない首相の姿勢を強く批判して次のようにのべました。
 「かりに菅首相がいうように、選手と関係者の『安全・安心』が達成されたとしても――そうなる保証はどこにもないが――、開催によって日本国内の人流が増え、感染が拡大するリスクがあるということが指摘されている。選手村や競技会場に出入りする国内関係者は約19万人になると発表されている。各地で中継会場なども計画されている。人流がどうしても増える。それなのに、そのリスクを説明せず、分科会に聞こうともしない。こんな無責任な態度はない。二重三重に認めるわけにいかない


五輪「開催ありき」に尾身会長がくぎを刺す理由 海外のメディア、スポンサーの行動に不安
                          東京新聞 2021年6月3日
 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は3日の参院厚生労働委員会で、東京五輪・パラリンピックについて「こういうパンデミック(世界的大流行)でやるのが普通ではない。やるなら強い覚悟でやってもらう必要がある」と話し、徹底した感染対策を求めた。近く専門家の考えを示すことも明らかにするなど、開催ありきの政府や五輪関係者にくぎを刺す発言が相次いでいる。
 尾身氏は、五輪開催時は全国から会場への観客の移動、パブリックビューイングなどでの応援といった要因から新たな人の流れが生まれると分析。「スタジアムの中だけのことを考えても感染対策ができない」と指摘した。「ジャーナリスト、スポンサーのプレーブック(規則集)の順守は選手より懸念がある」と、来日する大会関係者らの行動制限にも不安を漏らした。
 分科会は、政府のコロナ対策に専門的な知見から提言を行う組織で、五輪開催の可否には関与しない。会長の尾身氏は、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局に長年勤務。重症急性呼吸器症候群(SARS)に事務局長として対応した経歴を持つ。尾身氏の最近の苦言は、感染症の専門家の意見が反映されないまま五輪が開催に突き進むことへの危機感の表れだ。
 参院厚労委では「(東京五輪の)組織委員会から非公式に接触があり、個人的な意見を述べたが、専門家の意見の正式な要請は今までない」と説明。それでも専門家の考えを示していくことに関し「(大会を)やるならどういうリスクがあるのか申し上げるのがわれわれの仕事」と強調した。
 菅義偉首相は「専門家の方々も感染対策をしっかりやるべきとの意見だろうから、しっかり対応していきたい」と話すにとどまっている。(清水俊介)


五輪選手の「バブル」は効果なし? 国内から30万人が出入り、ワクチン用意は2万人分
                          東京新聞 2021年6月4日
 東京五輪・パラリンピックで「特例入国」する選手や大会関係者は、新型コロナウイルス流入を防ぐための検疫の「停留」(施設での隔離)が免除され、入国後、ただちに練習などができる。外部と遮断した空間をつくる「バブル方式」で感染を防ぐ方針だが、このバブルに延べ30万人の国内関係者が出入りすることが明らかになった。世界中から選手らを迎えるため、新たな変異株が流入する可能性もあり、専門家は停留免除とバブルのほころびが招く感染拡大を懸念する。(沢田千秋、原田遼、藤川大樹)
 慶応大臨床遺伝学センターの小崎健次郎教授らは、新型コロナの国際的なゲノム(全遺伝情報)データベース「GISAID」で公開された情報を比較、分析した。英国株は、最初に見つかった英国のほか欧州、東南アジア、オセアニアなど世界各地から国内に流入していた。また、ブラジル株はブラジルと米国から、南アフリカ株は同国からではなく欧州の2カ国から入っていた。

 変異株の流行国からの入国者が、検疫所長が定める施設で3日間の停留を順次、要請されるようになり、流入の抑制傾向がみられた。政府は現在、変異株流行国に指定した約30カ国からの入国者に対し、検疫所長が指定する施設で3~10日間の停留を要請している。
 東京五輪・パラの選手と大会関係者ら計9万3000人は、この停留が免除される。代わりに、選手村や大会組織委員会が用意するホテルで3日間の自室待機をするが、選手や一部の大会関係者は、練習や運営のための外出が認められている。
 さらに、頻繁な検査と外部と接触しないバブルを形成することで感染を防止するという。しかし、バブルの不完全さが、これまでの国際大会で指摘されている
 3月のフェンシング(ハンガリー)、4月のレスリング(カザフスタン)、5月の柔道(ロシア)などバブルが採用された大会で、日本選手が感染した。レスリング関係者は「日本人はまじめだが、マスクをしないでわめき散らす国が結構あった。ルールを守るかの差が激し過ぎる」と振り返った。
 東京五輪・パラのバブルは、それら国際大会をはるかにしのぐ規模となる。組織委によると、このバブルに出入りする国内の約30万人は通訳、警備、運転、清掃などに携わり、公共交通機関で自宅などから通う。30万人中、ワクチンの用意は2万人分しかない。
 釜萢かまやち敏・日本医師会常任理事は「非常に感染リスクが高い。わが国で感染した選手が母国に持ち帰り感染拡大させてしまう事態も容認できない」と強調。別のメンバーは「バブルという大会の感染対策と地域の対策が別の事象みたいに扱われるが、国民はそんなわけはないと見透かしている」と話した。