2021年6月11日金曜日

社会は変わるし、変えられる―学生オンラインゼミ(11)

 民青同盟主催で5月23日に行われた「社会は変わるし、変えられる―志位さんと語る学生オンラインゼミ」の詳報が、テーマごとに連載されることになりました。
 その第11回です。
                  お知らせ
     都合により12日と13日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ11
                       しんぶん赤旗 2021年6月11日
 この先は、企画中にメールで寄せられた質問に答えるという形で進みました。

原発
なくしてほしいが、可能か
 質問 鹿児島県には原発があり、不安です。気候危機が叫ばれるなか、日本は地震が多く、原発はなくしてほしいですが、可能ですか。
 志位 可能です。いま自民党は、気候変動への対応を口実に、老朽化した原発まで使い続けようという、とんでもない路線を走っています。
 私は、気候危機の打開のためには、再生可能エネルギーへの抜本的な切り替えをはかる、そして低エネルギー社会にしていく、社会のあり方の全体を変えていく。脱炭素、脱原発でそれを達成すべきだと強く言いたいと思います。

恐るべき環境破壊の危険――原発頼みで気候変動に対応するというのは邪道中の邪道
 志位 可能かということですが、可能かどうかの前に、原発というのは環境破壊という点では、大事故を起こしてしまったら、最悪の取り返しがつかない事態を引き起こす。このことを東京電力福島第1原発の大事故で、私たちはさんざん体験しています。事故から10年たつのに、故郷に戻れずに苦しんでいる方がたくさんいらっしゃる。
 原発は、環境破壊という点では、いまの気候危機に負けず劣らず危険なものです。原発頼みで気候変動に対応するというのは、本当に邪道中の邪道だと思います。

原発こそ超高コスト――再生可能エネルギーへの大転換こそ
 志位 それから、可能だという点では、いま再生可能エネルギーのコストがどんどん下がっています。風力にしても、太陽光にしても、どんどんコストが下がって、原発のコストよりも下回ってきています。
 コストの面でも、原発のほうが高コストになっている。いろいろな「安全装置」をつけると、ますます高コストになってしまいます。さらに、核のゴミの処分を考えたら、計算のしようのない高コストになる。超高コストなのが原発なのです。コストの面でも、再生可能エネルギーのほうにすでに軍配が上がっているのです。そういう面からも、私は、原発頼みをきっぱりやめることが大事だと思っています。

自由な時間
娯楽にあてることになり社会発展につながらないのでは
 質問 最初の質問に関連して、労働時間が短くなれば、当然、自由な時間は増えますが、その時間を多くの人は娯楽にあてることになり、社会の発展を生むことにはならないのではないでしょうか。

社会の進歩とともに、人間の考え方、価値観も変化する
 志位 自由な時間ですから、娯楽に使ってもいいのですよ。旅行に使ってもいいし、遊びに使ってもいい。娯楽そのものが、人間の文化の営みの一つですから、そこから新しい価値あるものがたくさん生まれてくるということもあると思います。
 同時に、すべての人間が、たくさんの自由な時間をもつことができるような社会になったら、私は、人間の考え方、価値観が変わってくると思います。人間の考え方、価値観というのは、決して固定的なものではありません。これまでの人類史の発展を考えてもわかるように、社会の変化とともに、考え方、価値観は変化すると思うのです。

労働自体の性格も変わる。そのうえに「自由な時間」が保障される
 志位 たとえば、社会主義・共産主義社会に進んだ場合にも、物質的生産をきちんと支えるだけの労働は必要になってきますが、マルクスは、そうした労働の性格も変わってくると言っているんですね。労働自体が喜びに満ちた、楽しいものに変わる。マルクスは、「自発的な手、いそいそとした精神、喜びにみちた心で勤労にしたがう結合的労働」という言葉で表現しています。資本主義のもとでは、少なくない場合、苦役だった労働が、社会主義・共産主義社会になって、労働者が生産の主人公になったら、自分たちで計画して、自分たちで自発的にする労働ですから、労働自体が喜びに変わってくるという展望を言っているのです。
 労働自体の性格が変わる。そのうえに「自由な時間」があるわけです。この「自由な時間」についての考え方も、労働自体の性格が変わっていくような社会が土台にあるわけですから、その土台のうえに「自由な時間」を持つことができれば、多くの場合、人間はそれを最も積極的な使い方をするのではないか。自分の持っているいろいろな能力や才能を発展させるために使うようになるだろう、というのが私たちの展望です。

一度きりしかない貴重な人生――自由で全面的な発展のために使うようになる
 志位 人間にとって人生が一度きりしかない貴重なものであることは、社会主義・共産主義になっても変わりません。たった一度きりしかない人生です。みんな素晴らしい能力を持っているのです。それは人によってみんな多様だけれど、自分の持っている能力をもっと生かそう、自由に全面的に発展させよう、そうした目的のために「自由な時間」を使うようになるだろう、というのが私たちの展望です。
 中山 なるほど。個人の意識が変わるということは、なかなかそこまで学ぶ機会というのはないので、やっぱり社会が変わって人間の意識も変わっていくという、そのなかで人間をとらえるというのが、とても大事なんだな、と思いました。

自衛隊
どのようにして日本の安全を確保するのか
 質問 国防の問題は、左派にとって避けて通れない問題だと思います。国民国家のなかで、人民を統制する役割を担う、そのような文脈の自衛隊は批判するべきですが、他方で、現実問題として、国防は必要だと思います。現状の体制のなかで、どのように自衛隊を批判しつつ、日本の安全を確保するのか、お考えをお聞かせください。
 志位 これはたいへん大きな問題で、私たちもいろいろな政策的な探求をやりながら、2000年に開催した第22回党大会で、自衛隊問題の段階的な解決という方針を打ち立て、綱領にもその方針を書き込みました。

憲法9条という理想に向けて、自衛隊の現状を変える道を選びたい
 志位 まず、憲法9条と自衛隊、これは両立するだろうか、ということから出発しますと、誰が考えても両立しません。なぜならば、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と憲法9条には書いてあります。あの自衛隊が「戦力」でないというのは、誰が考えても成り立ちません。
 両立しない以上、この矛盾を解決するには二つしか方法はありません。一つは、自衛隊の現状に合わせて、憲法9条を変えるということです。もう一つは、9条という理想に向けて、自衛隊の現状を変えるということです。この二つしかない。
 私たちは後者を選びたい。なぜなら、憲法9条というのは、世界のなかでももっとも先駆的な、恒久平和の理念をうたったもので、この条項があったおかげで、日本の国は、戦後、自衛隊がつくられたけれども、一人の外国人も殺していませんし、一人の戦死者も出していません。ここには憲法9条の力が働いているわけです。この世界に誇るべき恒久平和の原則を守りながら問題を解決したい、というのが私たちの立場です。

国民多数の合意で、段階的に、一歩一歩、自衛隊の現実を変えていく
 志位 ただ、一挙にこの矛盾をなくすことはできません。憲法9条という理想に向けて、段階的に、一歩一歩、自衛隊の現実を、国民多数の合意で改革していくプロセスがどうしても必要になります。
 国民多数の合意で日米安保条約の廃棄が実現したとしても、その時点で、自衛隊をなくすことはできません。なぜならば、安保条約を廃棄するのには賛成だという人でも、自衛隊をなくすことに賛成という人は少数であって、多くの国民が自衛隊は必要だと考えているだろうからです。日米安保条約を廃棄した段階で、抜本的な軍縮は可能になると思いますが、自衛隊は存続することになる。私たちはそういう展望をもっています。
 それでは、どの段階で矛盾の解決に踏み出せるか。安保条約をなくした独立国・日本が、世界中のどの国とも平和的な友好関係を結び、日本をとりまくアジアと世界の平和的環境が成熟して、日本国民が世界中を見渡して、「もう自衛隊なしでも安心だね」という圧倒的多数の合意が成立したときに、はじめて、憲法9条の完全実施に向けた措置に着手する。これが私たちの方針なのです。
 ですから、私たちが政権に参加したとしても、自衛隊と共存する期間がかなり続くと思います。その共存する期間に、仮に、急迫不正の主権侵害などがあった場合には、当然、国民の命と安全を守るために自衛隊を活用します。そこまで私たちは方針として決めています。国民多数の合意で一歩一歩、9条の理想に向けて、自衛隊の現実を改革していく。その過程で万が一ということが起こったら、自衛隊を活用するということです。

ロシア革命
この革命をどう評価するか
 質問 20世紀の歴史的成果といえば、ロシア革命であり、植民地体制の崩壊も、レーニンが民族自決をとなえたことに大きく由来すると考えています。ロシア革命をどう評価しますか。

世界史的影響の最大のものは、植民地体制崩壊の引き金を引いたこと
 志位 ロシア革命は、世界史的な影響をさまざまな分野に及ぼし、その影響は21世紀の今日の世界にもなお続いていると思いますが、そのなかでも最大のものは、地球的規模での植民地体制の崩壊の引き金を引いた、というところにあると思います。
 ロシア革命が起こった直後に、レーニンは「平和に関する布告」という歴史的宣言を発表します。それは民族自決の原則を高らかにうたった人類最初の歴史的文書となりました。そして、レーニンは宣言しただけでなく、それを実行に移しました。革命前のロシア帝国は、たくさんの民族を支配下に置き、「民族の牢獄(ろうごく)」と言われていました。レーニンは、ロシア帝国が支配下においていた民族の自決を実際に認めていくのです。フィンランド、ポーランド、バルト3国などは完全な独立国となりました。

その世界史的な意義は、21世紀の世界にも生きている
 志位 こうした実際の行動を通じて、ロシア革命は、世界史に巨大な影響をあたえ、20世紀に進んだ植民地体制の崩壊を促進し、それを土台にした21世紀の世界をつくるうえでも、きわめて重要な世界史的な影響力を発揮し続けているということを、強調したいと思います。
 ソ連のその後は、スターリンのもとで専制政治、覇権主義の誤りが深刻となり、崩壊にいたるわけですが、ロシア革命のこうした世界史的意義は、過去のものになったわけでは決してない。21世紀の世界に生きていると考えます。(つづく)