2021年6月11日金曜日

11- 社会は変わるし、変えられる―学生オンラインゼミ(10)

  民青同盟主催で5月23日に行われた「社会は変わるし、変えられる―志位さんと語る学生オンラインゼミ」の詳報が、テーマごとに連載されることになりました。

 その第10回です。
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社会は変わるし、変えられる――志位さんと語る学生オンラインゼミ(10
社会主義で全面実現の展望
                       しんぶん赤旗 2021年6月10日
ジェンダー平等 資本主義の枠内で達成されるものか
 質問 ジェンダー平等は、資本主義の枠内で達成されるものでしょうか。社会主義下でのセクシュアリティーやジェンダーは、どのようなものになると考えられますか。
 志位 この問題は、とても大きな理論問題であって、私たちもいろいろな探究の途上にあるので、きょうは話すことのできる範囲で話そうと思います。

資本主義の枠内で最大限追求すべき課題
 志位 私たちは、ジェンダー平等というのは、資本主義の枠内で最大限追求すべき課題ですし、資本主義の枠内で実現のために力をつくすべき課題だと考えています。ですから、私たちの綱領でも、「ジェンダー平等社会をつくる」という課題は、資本主義の枠内での民主的改革の課題として位置づけています。
 同時に、私たちは、社会主義・共産主義社会に進んだときには、当然、ジェンダー平等が全面的に実現する社会になるのではないか、という展望をもっています。

モーガンの『古代社会』と、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』
 志位 その手がかりを与えてくれる古典が、エンゲルスが1884年に書いた『家族・私有財産・国家の起源』です。これは、マルクスが亡くなった後に、エンゲルスがマルクスの遺(のこ)した膨大なノートを調べるのです。そこには『資本論』の草稿もあったけれど、モーガンというアメリカの学者が書いた『古代社会』という本からの抜き書きのノートが出てきました。モーガンのこの本は、アメリカの先住民の社会を詳しく研究して、世界の原始社会がどういうものだったかを初めて明らかにしたものでした。
 そのなかには、女性の歴史についての発見もあったのです。モーガンの研究は、人類最初の社会は、男性と女性との間に差別のない平等社会だったことを明らかにしていました。マルクスは、それを知って驚くのです。マルクスはそれまでは、人類の社会というのは、最初から女性差別があって、社会の進歩とともに差別がなくなっていく、と考えていたのです。ところが、最初の出発点が、男女平等だったと知って驚く。マルクスは感激して、モーガンの著作の詳細なノートをつくりますが、そこで亡くなってしまった。エンゲルスはそれを発見し、エンゲルスも同じように感激して、このノートは大事だから本にしなければ、と執筆したのが、『家族・私有財産・国家の起源』です。

エンゲルスが明らかにした女性解放の展望――社会主義に進むことが必要と考えた



 志位 (パネル10)これをご覧ください。『起源』のなかでエンゲルスが明らかにした女性解放の展望は、4点ほどにまとめることができます。
 第一は、法律的な平等だけではなくて、社会的な平等が大事だということです。日本の場合も、法律的な差別が残っているのはごく一部です。ところが社会的な差別というのは、たくさんありますね。ここまで差別をなくさなければならない。
 第二は、そのためには「女性の公的産業への復帰」が決定的な意義をもつということです。「公的産業」という言い方をしていますが、女性があらゆる公的活動の領域に復帰していくということです。「復帰」という言葉を使っています。これは、原始共同体では、もともと女性は「公的産業」を担っていた。そこに「復帰」しようという、すごく深い意味をもった言葉なのです。
 第三は、そのためには、家事の義務が女性に押し付けられている現状を打破する社会変革が必要だということです。そういう社会変革ぬきには、「女性の公的産業への復帰」はかないません。
 第四に、男女の不平等の経済的基盤を根本的に取り除いてこそ、両性の対等平等が実現するということです。先ほどの男女の賃金格差なども、まさにそうした不平等の経済的基盤そのものです。日本ではひどい状態にありますが、ヨーロッパでもまだ解消はしていません。そういう不平等の経済的基盤を根本的に取り除いてこそ、両性の対等平等が確かなものになる。
 こういう改革をやろうと思ったら、社会主義に進むことが必要だ、というのがエンゲルスの立場でした。

現実の世界史の進展は、エンゲルスの見通しを超えるものとなった
 志位 ただ、現実の世界史の進展は、エンゲルスの見通しを超えるものとなりました。1979年に成立した女性差別撤廃条約では、「女性の公的産業への復帰」と、それを支える社会的条件づくりを、文字通り緊急課題として位置づけ、現実にとりくまれています。資本主義の枠内でも、ジェンダー平等の実現は可能であり、最大限のとりくみが必要だということが、現に世界的な規模で実践されているのです。
 同時に、私は、資本主義を乗り越えた未来社会――社会主義・共産主義の社会に進んでこそ、両性の真の意味での平等が実現するという大展望は、今日においても真理ではないかと考えています。社会主義・共産主義の社会にまで進んでこそ、真に自由で平等な人間関係がつくられる。搾取がなくなり、抑圧がなくなり、あらゆる強制がなくなり、国家権力もなくなる。人間の間に、あらゆる支配・被支配の関係――権力的な関係がなくなる。ここまで進めば、当然、ジェンダー不平等の根っこもなくなる、と展望できるのではないかというのが私たちの考えです。(つづく)