2021年6月26日土曜日

宮内庁長官「五輪開催への天皇陛下のご懸念」を全力否定する菅内閣

 西村泰彦宮内庁長官6月24日記者会見で、記者からの質問に答え

「天皇陛下は現下の新型コロナの感染状況を大変ご心配しておられご自身が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されている、ご心配であると拝察しています。私としては、オリ・パラで感染が拡大するような事態にならないよう組織委員会をはじめ関係機関が連携して感染防止に万全を期していただきたい考えています(要旨)と述べました。
 これについて、直後に記者会見を開いた加藤官房長官「長官自身の考え方を述べられたと承知している」と述べ、丸川五輪相も会見で「私どもとしては、長官ご自身の考えを述べられたものと承知している」菅首相「長官本人の見解だと理解している」と、いずれも天皇のコロナ感染拡大への懸念を即座に否定し天皇の考えではない」と決めつけました(右翼で知られる櫻井よしこ氏24日、BSフジ『プライムニュース』に出演し、「天皇陛下を政治利用するのは日本にとって不幸だ。やるべきでない事をやった意味で宮内庁長官として大きな責任を問うべきだ」とコメントしました)。

 それに対してNEWSポストセブンは、「天皇は政治的発言ができないから西村長官は、拝察したことにしているだけであり、何も言葉がなかったのに長官が勝手に大御心をこしらえることなど常識として考えられない実際は天皇との間で綿密なやり取りがあり、ギリギリ政治問題や憲法問題にならないラインで国民にメッセージを送ったと見るのが妥当ではないのか」と書きました
 そして、政府の関係者はIOCのバッハ会長をはじめとする五輪貴族には最大限の気遣いを見せるし、スポンサー企業の意向は常に忖度してるのに、天皇の言葉に耳を貸そうとはしないようだ。言うまでもないが、現憲法でも天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」(第1条)存在である。天皇の声は国民の声と捉えて真剣に向き合うのが当然だと批判しました。
 さらに、菅首相が取るべき対応は3つあるとして、「第1に西村長官の独断だと考えるなら、即刻、西村氏を更迭すべきだろう。第2に、西村氏の「拝察」否が判断できないと思うなら、菅首相と丸川大臣が皇居に参上し、直接、天皇の気持ちを聞いてくればよい。天皇が名誉総裁として五輪開会宣言を行うことは国事行為で「内閣の助言と承認により、国民のために」行う以上内閣の責任として確認するべきである。第3に、これが天皇の御心だと認めるなら、それは国民の声と同等に尊重すべきものだから、感染拡大を招く五輪開催そのものについて、改めて検討、検証すればいい」とも述べました。明快です
 NEWSポストセブンの記事を紹介します。
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宮内庁長官「五輪開催への天皇陛下のご懸念」を全力否定する菅内閣は、あまりにも不敬ではないか
                        NEWSポストセブン 2021/06/25
「大御心(おおみこころ)」とは、天皇の御心のことだ。万世一系の天皇家が受け継いできた考え方を指すとする学説もある。古来、日本の天皇は国の平穏と国民の安寧を祈ることが最大の役割であったとされる。『天皇論』を著した小林よしのり氏は、その点がヨーロッパの王族や中国の皇帝との一番大きな違いであると指摘し、天皇は「祭祀王」であると述べている。実際、今上天皇も先代である上皇も、東日本大震災などの災害や現在のコロナ禍に際し、常に国民に寄り添い、心を配る言葉を発してきた。

 日本国憲法では、天皇は「国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」(第4条)と定められているため、昭和天皇から今上天皇まで、政治的な発言はしないことが鉄則として守られてきた。それだけに、6月24日に宮内庁の西村泰彦・長官が記者会見で述べた「大御心」に大きな注目が集まり、物議を醸している。天皇が名誉総裁を務める東京オリンピック・パラリンピックが近づいてきたことについて質問され、こう語ったのである。
天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を大変ご心配しておられます。国民の間に不安の声があるなかで、ご自身が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されている、ご心配であると拝察しています。私としましては、陛下が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックで感染が拡大するような事態にならないよう組織委員会をはじめ関係機関が連携して感染防止に万全を期していただきたい、そのように考えています」

 明確な言葉で、天皇が五輪によるコロナ感染拡大を心配していることを示唆した。すると、直後に記者会見を開いた加藤勝信・官房長官が、なんと即座に「大御心」を否定した。
「長官自身の考え方を述べられたと承知している」
 西村長官が勝手に言ったことで、天皇の考えではないと言いたいのだろう。さらに翌25日になると、丸川珠代・五輪相も会見で追い討ちをかけた。
「私どもとしては、長官ご自身の考えを述べられたものと承知している」
 そして、とどめは菅義偉・首相が、
「長官本人の見解だと理解している」
 と記者団に語って「陛下の考えではない」と決めつけてしまった。
 彼らはIOCのバッハ会長をはじめとする五輪貴族には最大限の気遣いを見せるし、スポンサー企業の意向は常に忖度し、一般観客は減らしてもスポンサー枠は減らさないとか、さらには会場内でスポンサー企業であるアサヒビールの酒類を販売しようとまでしたのに、天皇の言葉に耳を貸そうとはしないようだ。言うまでもないが、現憲法でも天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」(第1条)存在である。天皇の声は国民の声と捉えて真剣に向き合うのが当然だ。

 確かに西村長官は「拝察しています」と語り、「陛下から直接そういうお言葉を聞いたことはありません」とも念を押したが、そんなはずはないだろう。天皇は政治的発言ができないから「拝察したことにしている」だけであり、何も言葉がなかったのに長官が勝手に「大御心」をこしらえることなど常識として考えられない。会見では記者から、「仮に拝察でも長官の発言としてオンだから(オフレコではなくオンレコ=公式な発言だから)報道されれば影響あると思うが、発信していいのか?」と確認されて、西村氏ははっきりと、「はい、オンだと認識しています」と答えている。発言の内容といいタイミングといい、実際は天皇との間で綿密なやり取りがあり、ギリギリ政治問題や憲法問題にならないラインで国民にメッセージを送ったと見るのが妥当ではないのか。

 菅首相が取るべき対応は3つある。第1に、これを西村長官の独断だと考えるなら、大御心を宮内庁長官が捏造したという大スキャンダルである。即刻、西村氏を更迭すべきだろう。第2に、西村氏の「拝察」が正しいか正しくないか判断できないと思うなら、菅首相と丸川大臣が皇居に参上し、直接、天皇の気持ちを聞いてくればよい。オリンピックの名誉総裁として開会宣言を行うことは国事行為である。天皇の国事行為については憲法で「内閣の助言と承認により、国民のために」(第7条)行うと定められているから、内閣の責任として、天皇が「やりたい」と考えているか、「やめたほうがいい」と考えているか確認することには意味がある。そして第3に、これが大御心だと認めるなら、それは国民の声と同等に尊重すべきものだから、感染拡大を招く五輪開催そのものについて、改めて検討、検証すればいい
 しかし、菅内閣はそのいずれもしないだろう。おそらく彼らの心のうちは、「西村長官は面倒なことを言いやがって」と煮えくり返っているだけだからだ。普段は「保守だ」「天皇への尊崇だ」と軽口を叩いていても、彼らの尊王の心などこんなものなのだ菅内閣と、それを支える「保守派」の誠意と良心が問われている