東京五輪パラ開催に伴う新型コロナの感染拡大のリスク評価について、政府コロナ分科会の尾身茂会長など専門家有志が18日、「東京五輪パラ競技大会開催に伴う新型コロナウイルス感染拡大リスクに関する提言」をまとめ、コロナ感染症政府対策本部長とJOC会長宛に提出しました。
同日夜、記者会見した尾身会長は、「当初は開催するかどうか自体を検討してほしいという内容も考えたが、総理がG7サミットの国際的な場で開催を表明し、盛り込む意味があまり無くなったため、それよりも感染状況が悪くなれば大会の開催前でも期間中でも緊急事態宣言のような強い対策を躊躇なく取ってほしいという内容になった」と経緯を説明し、「オリンピックの開催にかかわらず変異ウイルスの影響などで感染が拡大する可能性があり、そこに大会の開催が加わることで、人の流れが増え、感染がさらに拡大し医療がひっ迫するおそれがある」と指摘し、提言をまとめた背景に感染拡大への危機感があると説明しました。
また「無観客が望ましい」と提言したことへの質問を受けて、「感染リスクを客観的に評価するのが私たち専門家の責任で、有観客か無観客か判断するのは政府や主催者の責任だ」と話しました。NHKが報じました。
またNHKは別に提言の全文を報じました。
提言には沢山のグラフ等が用いられ長文であるため、ここでは冒頭に記載された「骨子」と「1 はじめに」の部分を紹介します。全文には下記のURLからアクセスしてください。
⇒ https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210618/k10013091671000.html
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専門家有志が会見「リスクを十分認識し拡大しないよう対策を」
NHK NEWS WEB 2021年6月18日
東京オリンピック・パラリンピックに伴う新型コロナウイルスの感染拡大のリスク評価について、政府の分科会の尾身茂会長など専門家の有志は「無観客開催が望ましい」としたうえで、観客を入れるのであれば、現行の大規模イベントの開催基準より厳しい基準を採用すべきなどとした提言を提出しました。
専門家の有志は18日夜、東京 千代田区の日本記者クラブで記者会見を開きこの中で尾身会長は「オリンピックの開催にかかわらず変異ウイルスの影響などで感染が拡大する可能性があり、そこに大会の開催が加わることで、人の流れが増え、感染がさらに拡大し医療がひっ迫するおそれがある」と指摘し、提言をまとめた背景に感染拡大への危機感があると説明しました。
尾身会長は、提言の中で「無観客開催が望ましい」としたことについて、「当初は開催するかどうか自体を検討してほしいという内容も考えたが、総理がG7サミットの国際的な場で開催を表明し、盛り込む意味があまり無くなったため、それよりも感染状況が悪くなれば大会の開催前でも期間中でも緊急事態宣言のような強い対策をちゅうちょなく取ってほしいという内容になった」と経緯を説明しました。
そのうえで尾身会長は「大会を開催することで、感染が拡大するリスクは間違いなくある。開催を決定した以上は、このリスクを十分認識し、拡大しないよう対策をして開催してほしい」と述べ、国や大会の主催者に対し、感染対策の徹底を求めました。
「パンデミックの中での新しい応援や観戦モデルを」
また、パンデミックの中でオリンピックを開催する意義について、「日本が国際社会にオリンピックを開催するとみずから約束した中で、約束をしっかり守ることはあってしかるべきだ。また、選手は一生に一度あるかないかのオリンピックに心身を集中して努力していた。その思いを一市民としてかなえられればという思いはあった。ただ、このような状況なので大会の規模を縮小し、会場にいなくても感動を発信するパンデミックの中での新しい応援や観戦のモデルを日本として示してほしい」と述べました。
「有観客か無観客か判断するのは政府や主催者の責任」
また尾身会長は、無観客が望ましいと提言したことについて質問を受けて、「感染リスクを客観的に評価するのが私たち専門家の責任で、有観客か無観客か判断するのは政府や主催者の責任だ」と話しました。
国立感染症研究所 脇田所長「分析評価 政府に伝える」
提言を出した専門家の有志の1人で国立感染症研究所の脇田所長は会見で、「私たちは厚生労働省のアドバイザリーボードとして日本の感染状況のリスク評価を行ってきている。大会中も、大会のあとも分析評価を続け、感染状況の悪化や医療提供体制に負荷がかかると予想される場合は、政府に伝えていく」と述べました。
日本医師会 釜萢常任理事「国全体の感染状況が重要」
提言を出した専門家の有志の1人で会見に出席した日本医師会の釜萢敏常任理事は、「注視しなければいけないのは、わが国全体の感染状況だ。オリンピックの開催は複雑な条件がいろいろとあると思うが、ワクチンを接種し終わるまでに感染拡大をどのようにして下げることができるかを考え、感染のリスクを示したいという趣旨で提言した」と述べました。
大東文化大学 中島教授「リバウンド可能性高い」
提言を出した専門家有志の1人で大東文化大学の中島一敏教授は「東京ではいつリバウンドが起きてもおかしくないと考えている。今後の感染状況や変異ウイルスの動きなどを慎重にみながら対策を考える必要がある」と述べました。
京都大学 西浦教授「下げ止まりというよりこれから上昇傾向」
京都大学の西浦博教授は「今の時点は、下げ止まりというよりもこれから上昇傾向に移行する可能性が極めて高い。6月20日で緊急事態宣言が東京都などでは解除されるが、インドで確認された変異ウイルスのデルタ株が今後、優位になることは間違いないと考えている。実際に感染者数が増える状況を可能なかぎり起こさないようにすることが大切だ」と述べました。
東京 北区保健所 前田所長「これ以上 下がらないのでは」
専門家有志の1人で会見に出席した東京 北区保健所の前田秀雄所長は、「現場の保健所ではり患率が上がってきていて、人流を反映しやすい20代30代の感染者数は急カーブで上昇している。保健所の肌感覚からすれば、東京の新規感染者の数は、これ以上、下がらないのではと感じている。このままだと東京の『まん延防止等重点措置』は、五輪が終了するまで解除できないのではないか」と話しました。
五輪・パラ 感染拡大リスクに関する専門家の提言
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210618/k10013091671000.html
NHK NEWS WEB 2021年6月18日
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2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴う新型コロナウイルス感染拡大リスクに関する提言
2021年6月18日
阿南英明 今村顕史 太田圭洋 大曲貴夫 小坂健 岡部信彦 押谷仁 尾身茂 釜萢敏 河岡義裕 川名明彦 鈴木基 清古愛弓 高山義浩 舘田一博 谷口清州 朝野和典 中澤よう子 中島一敏 西浦博 長谷川秀樹 古瀬祐気 前田秀雄 吉田正樹 脇田隆字 和田耕治 (五十音順)
骨 子
1. 多くの地域で緊急事態宣言が解除される6月20日以降、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、本大会)期間中を含め、ワクチンの効果で重症者の抑制が期待できるようになるまでの間、感染拡大及び医療逼迫を招かないようにする必要がある。ワクチン接種が順調に進んだとしても、7月から8月にかけて感染者および重症者の再増加がみられる可能性がある。また、変異株の影響も想定する必要がある。
2. 本大会は、その規模や社会的注目度が通常のスポーツイベントとは別格であるうえに、開催期間が夏休みやお盆と重なるため、大会開催を契機とした、全国各地での人流・接触機会の増大による感染拡大や医療逼迫のリスクがある。
3. 観客の収容方法等によっては、テレビ等で観戦する全国の人々にとって、「感染対策を緩めても良い」という矛盾したメッセージになるリスクが発生する。大会主催者におかれては、このことを十分に考慮して、観客数等を決定して頂きたい。
4. 無観客開催は、会場内の感染拡大リスクが最も低いので、望ましいと考える。もし観客を収容するのであれば、以下の3つの点を考慮いただきたい。
(イ)観客数について、現行の大規模イベント開催基準よりも厳しい基準の採用
(ロ)観客は、都道府県を越えた人々の人流・接触機会を抑制するために、開催地の人に限
ること、さらに移動経路を含めて感染対策ができるような人々に限ること
(ハ)感染拡大・医療逼迫の予兆が探知される場合には、事態が深刻化しないように時機を
しないで無観客とすること
5. 大会主催者は行政機関とも連携し、不特定多数が集まる応援イベント等の中止と飲食店等での大人数の応援自粛の要請と同時に、様々な最新技術を駆使した「パンデミック下のスポーツ観戦と応援のスタイル」を日本から提唱して頂きたい。
6. 政府は、感染拡大や医療の逼迫の予兆が察知された場合には、たとえ開催中であっても、躊躇せずに必要な対策(緊急事態宣言の発出等)を取れるように準備し、タイミングを逃さずに7. 大会主催者及び政府は、これまで述べてきたリスクをどう認識し、いかに軽減するのか、そして、どのような状況になれば強い措置を講じるのか等に関する考え方を、早急に市民に知らせ、納得を得るようにして頂きたい。
8. 大会主催者は、本見解の内容をIOC(国際オリンピック委員会)にも伝えて頂きたい。
1 はじめに
・私たちは、2020年当初から政府や都道府県等に対し、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の対策について助言してきた専門家の有志です。
・私たちは、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、本大会)の開催の有無やそのあり方について、判断・決定する立場にありません。
・しかし、国内で既に存在している感染拡大・医療逼迫のリスクに加え、本大会が開催されれば、国内の医療にさらなる負荷がかかる可能性があります。このため、本大会に関連するリスクの評価及びそのリスクの最小化に向けた私たちの考えを述べることが責務だと考え、提言をとりまとめました。
・この提言の目的は、2つあります。まず、多くの地域で緊急事態宣言が解除される6月月20日以降、本大会期間中を含め、ワクチンの効果等により重症者数の抑制が期待できるようになるまでの間、感染拡大及び医療逼迫を招かないための提言をすることです。そして、本大会に関連して大会主催者や関係者に適切な判断をして頂くため、直接的および間接的なリスクを評価することです。
(長文のため以下省略)