2021年6月26日土曜日

改ざん問題「世界に伝えて」 赤木雅子さん 外国特派員協会で会見

 森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、自殺した同省近畿財務局職員赤木俊夫さん当時54)の妻雅子さん(50)が24日、日本外国特派員協会で記者会見し、「世界に伝えてほしい」「世界から注目されることで国はもう一歩前に出てくれると期待している」と話し、改めて国に再調査するよう求めました。

 雅子さんは麻生財務相に対し、「調査される側であって、『再調査しない』と言う立場ではない」と批判。「改ざんはとても重い罪なのに、いまだに大臣が同じ席にいることを海外にも伝えてほしい」と訴えました。
 また、安倍前首相の妻昭恵氏と交わしたSNSのやりとりも紹介し「夫の遺書を公開した時には『仏前に手を合わせたい』とLINEをいただいたが、「赤木ファイルがあると分かったあとは『既読』も付かなくなった」と明かしました。
 しんぶん赤旗と東京新聞が伝えました。

 また23日には、大阪地裁で「赤木ファイル」の開示後で初めてとなる公判がありました。雅子さん側が「ファイルはこれで全てなのか」と国側に尋ねたところ、国側は「ファイルを全て交付した。これ以上の確認は必要ない」と答えました。その後、雅子さんは法廷で「改ざんの具体的経緯を明らかにしないことは国民の疑惑や不信を招くような行為だ」として、財務省内部のメールなどを提出するよう求めました。
 法廷での雅子さんの様子について、NHK記者時代に「森友事件をスクープ、その後大阪日日新聞に移り、論説委員・記者をしている相澤冬樹氏が、日刊ゲンダイに記事を載せました。
 雅子さんの発言が終わると傍聴席から拍手(規則違反)が起き一人、また一人と数人が呼応し拍手が収まると裁判長が静かに「静粛に願います」告げたことが書かれていて感動的です
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改ざん問題 世界に伝えて 赤木雅子さん 外国特派員協会で会見
                        しんぶん赤旗 2021年6月25日
 森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざん問題で、国などを提訴している赤木雅子さんが24日、都内の日本外国特派員協会で記者会見しました。近畿財務局職員だった夫の俊夫さん=当時(54)=が改ざん作業を強要され自ら命を絶った経緯や、俊夫さんが改ざんの経緯などをまとめた通称「赤木ファイル」などについて説明し、「世界に伝えてほしい」と語りました。
 赤木ファイルについて雅子さんは「郵送された封筒を開けた時、手書きの字が夫の字だとすぐにわかった。私のもとに帰ってきてくれたと感じた。苦しい立場にいた夫が残してくれたもの。涙が出そうだった」と語りました。
 「裁判の目的は、夫が死に追い込まれた原因と経緯を明らかにすること」とも語り、赤木ファイルの提出後も改ざん問題の再調査を拒む政府の姿勢を批判。「改ざん前の公文書に名前があった安倍晋三前首相や麻生太郎財務相は、『再調査しない』と言える立場ではない。調査される側の人たちだ」と指摘しました。
 改ざん発覚後も麻生氏が在任し続けていることも「世界に知ってほしい」と語りました。
 また最近、沖縄を訪れたことを紹介。遺骨を含む可能性のある土砂の米軍辺野古新基地建設への利用に反対している遺骨収集ボランティアの具志堅隆松さんを激励したと語りました。
 「具志堅さんは『不条理の横をだまって通り過ぎるわけにはいかない』と言われた。私の裁判についてもそうだと言ってくれた。感謝している」と振り返りました。


森友問題
赤木さん妻「第三者が改ざん経緯調査を」
                         東京新聞 2021年6月24日
◆「財務相は調査を受ける側」
 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざんで、自殺に追い込まれた近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻雅子さんが24日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で会見し、真相を究明するため財務省内部のメール公開や再調査を国に求めた。
 赤木さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」の写しには、赤木さんに送信されていない財務省本省内のメールなどは含まれていない。その点について、雅子さんは「第三者が(本省)内部のやりとりも再調査し、未来への教訓にすべきだ」と訴えた。
 再調査について、麻生太郎財務相は一貫して行わない姿勢を貫いている。雅子さんは「調査を受ける側が自ら再調査しないと言うのはおかしい」と批判。「夫の死から3年以上たつのに、麻生氏は仏前に手を合わせることもせず大臣を続けている。部下を思う心があるのなら、行動を起こすべきではないか」と訴えた。
 海外メディアに向けて「改ざんは重い罪なのに、麻生氏が今も大臣を務めていることをぜひ伝えてほしい」と求めた。「世界から注目されることで、国はもう一歩前に出てくれるのではと期待している」とも話した。

◆途絶えた昭恵夫人のLINE
 赤木ファイルによると、財務省は、安倍晋三前首相の妻昭恵氏に関する記述を真っ先に削除するよう赤木さんらに指示していた。昭恵氏とLINE(ライン)でやりとりをしていたという雅子さんは「夫に線香を上げ、手を合わせに行きたいというメッセージをいただいた。しかし、赤木ファイルが存在することが分かったとメッセージを送って以来、既読もつかなくなった」と明かした。
 同席した代理人の生越照幸弁護士は、赤木さんの公務災害を認定した文書の大半が黒塗りだったことに触れ、「日本の情報公開制度は行政の裁量が大きく、うまく機能していない。赤木さんの事件を通じて(改善を)真剣に議論すべきだ」と話した。(皆川剛)


<森友問題>
国提出の赤木ファイルに「欠けた部分」と妻側指摘、原本の提出を要求
                          東京新聞 2021年6月23日
 学校法人「森友学園」の国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざんで、自殺に追い込まれた近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻雅子さん(50)が国に賠償を求めた訴訟の口頭弁論が23日、大阪地裁(中尾彰裁判長)であった。赤木さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」が証拠採用された。

◆黒塗り外して裁判官だけに、と妻側
 雅子さん側の代理人弁護士は、国が提出したファイルが原本の写しで一部黒塗りされている点に触れ「赤木さんが残した資料の全てが提出された裏付けがない」として原本の提出を要求した。
 国側は個人情報が漏れる恐れを理由に拒んだが、閉廷後の協議で雅子さん側は、黒塗りを外した全ての原本を裁判官のみが確認するやり方を提案。国側は7月の次回協議までに検討するとした。

◆「別添資料」がない
 閉廷後の会見で、雅子さん側代理人の松丸正弁護士は「国が提出したファイルには『別添資料にて局長説明を行った』と書かれたメールに別添がないなど、欠けた部分がある」と指摘した。
 雅子さんは法廷で、「ファイルには(当時の佐川宣寿理財局長から)国会答弁をふまえた修正の指示があったと記載される一方、佐川氏の指示がどのように夫まで伝わったのかは明らかになっていない」と訴えた。「このままでは上司の軽率な指示で自殺に追い込まれる職員がまた出る」として、第三者による再調査を求めた。
 昨年3月に裁判が始まって1年以上、国は赤木ファイルの開示を求める雅子さんらに対し、存否すら明らかにしてこなかった。

◆ごまかし?の麻生財務相は取材拒否
 大阪地裁の要請を受け、国は5月に提出を決めたが、その際も麻生太郎財務相は「何を称して赤木ファイルというか全然分からない」「みんなで検討してこれが赤木ファイルなんだろうというものを提出する」と述べていた。麻生氏は23日、記者団からの取材要請を断った。その上で、財務省は「訴訟には真摯しんしに対応する」とコメントした。 (皆川剛、森本智之)


森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争
赤木雅子さんに傍聴席から拍手「疑惑や不信を招く行為をこれ以上続けないで」
                    相澤冬樹 日刊ゲンダイ 2021/06/25
 傍聴席で拍手が沸いた。それを耳にした赤木雅子さん(50)は涙ぐんだ。
「とっちゃん、みんな味方だよ。見ててくれるかな?」
 雅子さんの夫、赤木俊夫さん(とっちゃん)は森友学園への国有地値引きを巡り公文書を改ざんさせられ命を絶った。雅子さんは国などに裁判を起こし、夫が改ざんの詳細を記録した文書「赤木ファイル」の開示を求めた。裁判前日の22日、518ページに及ぶ赤木ファイルが開示されると、新事実が次々に読み取れた。
「佐川氏の名挙げ指示」「改ざん指示に抵抗の痕跡」
 報道各社が大きく伝えた。
 待望の赤木ファイルを見て雅子さんは法廷で何と発言するのか? それがこの日の注目点で、33席の傍聴席に214人もの希望者が詰めかけた。証言台で雅子さんが訴えたことは……。
「赤木ファイルを見て、手書きの文字が夫の字だとすぐに分かりました。夫が苦しい立場に追い込まれながら、赤木ファイルを作ってメモを残してくれたのだと思うと、涙が出そうになりました」
 実際、涙で声が詰まりそうだった。
「赤木ファイルには、私の知らない事実がたくさん記載されていました。夫が反対をしても一方的に改ざんを指示されて苦しんでいたことが分かりました。佐川さんから国会答弁を踏まえた修正を行うように指示があったという記載もありました」
 新事実が明らかになっても、麻生財務大臣は「再調査はしない」と言う。

■「第三者による再調査を」
「国が夫の代わりに、国民の皆さんに何があったのかすべてを明らかにするべきだと思います。そのためにも、赤木ファイルで明らかになった新事実をもとに、第三者による再調査を実施するべきだと思います
「財務省の皆さんが改ざんの具体的経緯を明らかにしないことは、国民の疑惑や不信を招くような行為です。疑惑や不信を招くような行為をこれ以上続けないことを、私は心から願っていますし、夫も同じように願っていると思います」
 この言葉で締めくくり、またも涙ぐんだ雅子さん。その時、傍聴席から拍手が起きた。一人、また一人と数人が呼応した。数秒して拍手が収まると裁判長が静かに告げた。
「静粛に願います」
 そこで雅子さんの胸に去来したのは……。
超うれしいです。夫への拍手でもあるし、心から応援してくれているんだと、温かい気持ちになりました
 実は前の晩から歯が痛くなって体調は万全ではなかったのだ。それを補って余りある、すてきな拍手だった。

相澤冬樹 大阪日々新聞・元NHK記者
大阪日日新聞(新日本海新聞社)論説委員・記者。1962年宮崎県生まれ。東京大学法学部卒業。1987年NHKに記者職で入局。東京社会部、大阪府警キャップ・ニュースデスクなどを経て現職。著書『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)がベストセラーとなった。