6日の朝日新聞の投稿サイト「声」欄に作家 赤川次郎氏が一読者として投稿した「五輪中止 それしか道はない」が載りました。
「(前 略)今、日本はそれに逆行する『とんでもない国』になろうとしている。新型コロナウイルスの感染が続く緊急事態宣言下で五輪パラリンピック開催? 他の国のことなら『何てひどい国だ!』と呆れるだろう。
国の指導者の第一の任務は『人々の命を守ること』。いまだウイルスの正体が分らないのに、9万人もの人間が出入国するとしたら、どうやって感染拡大を防ぐことができるのだろうか。むしろ、ここを起点にさらに新たなパンデミックが世界を襲うかもしれない。一日も早く、五輪中止を決断するしか道はない。(後 略)」
そう書かれています。正論であり国民の6、7割がそう思っています。
それに対して竹中平蔵氏は、6日放送の「そこまで言って委員会NP」で、尾身茂・分科会会長の発言について「越権だ」と述べ、「世界に対して『やる』と言った限りはやる責任がある」「日本の国内事情を理由に中止するなどはありえない」と主張しました。
驚くべき主張で、植草一秀氏は、論理に説得力がまったくなく、幼稚園生以下のレベルだと酷評しました。
またAERAは 自民党関係者の「竹中さんは余計なことを言わないでほしい。ただでさえ逆風が吹き荒れ、自民党議員は選挙区の地元に戻った時に『五輪をやるなんてどういう神経をしているんだ』と怒りの言葉を有権者に浴びせられている。しかも『世論はしょっちゅう間違う』とか国民の神経を逆撫でする発言を繰り返している。菅政権にとってもマイナスに働きます」という嘆きを伝えました。
そしてSNS、ネット上で竹中氏に批判的なコメントが殺到していることも伝えました。
まさに乱心の体というしかありません。
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竹中氏応援で痛手の五輪強行論菅首相
植草一秀の『知られざる真実』2021年6月 6日
朝日新聞に赤川次郎氏の投稿が掲載された。
「五輪中止 それしか道はない」正論だ。
これに対して竹中平蔵氏は感染症対策分科会の尾身茂会長の発言について「越権だ」と述べ、「世界に対して『やる』と言った限りはやる責任がある」と発言。
竹中氏は、「なんでやるか、やらないか、あんな議論するか、私は分からない。
だって、オリンピックってのは、世界のイベントなんですよ。
世界のイベントをたまたま日本でやることになっているわけで、日本の国内事情で、世界に『イベント(五輪)やめます』というのは、あってはいけないと思いますよ。
世界に対して、『やる』と言った限りはやる責任があって」
「「日本の国内事情」を理由に中止するなどはありえない」と主張した。
菅内閣に媚びを売るために五輪賛成論を唱えたい気持ちは分かるが、論理に説得力がまったくないのが致命的だ。
世界のイベントでも日本で実施するのだから、日本国のトップが開催可否判断する責任を負う。それが主権国家の首相の責務。
五輪を「やる」ことになっていて、巨大な地震が日本を襲い、津波で東京が壊滅、死者が多数発生しても、
「世界に対して、『やる』と言った限りはやる責任があって」「「日本の国内事情」を理由に中止するなどはありえない」と主張するのか。
日本の国民がコロナ感染収束を最優先課題に位置付けている。日本ではワクチン接種は進捗していない。
最大の懸念要因は変異株が日本に流入し、感染拡大をもたらすこと。
コロナ変異株の特徴は、強毒化することがあり得ること、ワクチン有効性を引き下げる可能性があること。
海外から9万人もの外国人が流入すれば、変異株が持ち込まれることは間違いない。
しかも、日本政府の検疫体制はザルそのもの。外国人の行動抑制が厳格に管理される可能性は皆無。
その外国人に多数のワクチン未接種日本人が接触する。
五輪終了後に2021年末にかけて感染再爆発が生じるリスクは大きい。
この事情を踏まえて、日本の主権者の圧倒的多数が五輪の今夏開催に反対している。
IOCが開催を強行したいのは「カネ」のため。
菅義偉氏が開催を強行したいのは「自分の政治生命」のため、
「国民の命」を犠牲にして「自分の政治生命」を優先する菅義偉氏は最低の首相。
その最低の首相に媚びを売るために、説得力のない開催強行擁護論を示す竹中平蔵氏は最低の論客。完全に贔屓の引き倒し。
新型コロナ感染症対策分科会における専門家の役割は、
「政府の案に対して専門的な知見に基づいて意見すること」
「感染症について分析した結果をもとに感染予防策の案を出すこと」。
五輪開催は新型コロナ感染症の感染拡大に重大な影響を与えるイベント。分科会の専門家が意見を提示することは越権でも何でもない。
菅内閣がコロナ感染抑制を政府の最重要課題に位置付けるなら、コロナ感染拡大下での五輪開催可否を慎重に検討するべきことは当然。
菅義偉氏自身が「五輪よりも国民の命が重要」と明言している。五輪開催が国民の命に与える影響を十分に考察し、検討した上で、五輪開催可否を判断するのが当然の手順だ。
「『やる』と言ったからやるのが責任」という論理は幼稚園生以下のレベル。
菅義偉応援団がこのレベルであることは菅氏にとって大きな痛手だ。
(以下は有料ブログのため非公開)
五輪強行派の竹中平蔵氏「世論は間違ってる」に対し、「余計なこと言うな」と政府筋が嘆き節
AERA dot.. 2021.6.7
東京五輪まで1カ月半に迫ったが、新型コロナウイルスの感染が完全に収束していない中で開催反対を主張する意見は依然として多い。その中で、慶応大学名誉教授でパソナ会長の竹中平蔵氏が6日、読売テレビで放送された「そこまで言って委員会NP」に生出演した際の発言が大きな波紋を呼んでいる。
竹中氏は東京五輪・パラリンピックについて、「世界に対して『やる』と言った限りはやる責任がある」と力説。その理由について、「なんでやるか、やらないか、あんな議論するか、私は分からない。だって、オリンピックは世界のイベントなんですよ。世界のイベントをたまたま日本でやることになっているわけで、日本の国内事情で世界に『イベント(五輪)やめます』というのはあってはいけないと思いますよ。世界に対して、『やる』と言った限りはやる責任がある」と熱弁した。
この主張に対し、落語家の立川志らくが「世論の6、7割が(五輪は)中止だと言っている。世論が間違っているってこと?」と質問すると、「世論は間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違ってますから」と返答。
ジャーナリストの須田慎一郎氏が「世論をまったく無視していいの? 間違いと決めつけて突っ走るのは違うと思う」と異を唱えると、竹中氏は「間違いはキツいかもしれないけど、世論は移ろいやすい」と表現を弱めたが、世論を尊重する考えに疑問を呈するスタンスは変わらなかった。
五輪開催を目指す政府にとって、竹中氏の発言は援護射撃のようにも感じるが実情は違うという。自民党関係者がこう頭を抱える。
「竹中さんは余計なことを言わないでほしい。ただでさえ逆風が吹き荒れ、自民党議員は選挙区の地元に戻った時に『五輪をやるなんてどういう神経をしているんだ』と怒りの言葉を有権者に浴びせられている。しかも、五輪開催に反対だけでなく、『世論はしょっちゅう間違う』とか国民の神経を逆撫でする発言を繰り返している。竹中さんは小泉内閣で総務大臣だった時、菅義偉首相が副大臣で現在も距離が近い。菅政権にとってもマイナスに働きますよ」
おまけに竹中氏が会長を務めるパソナは五輪スポンサー企業だ。SNS、ネット上では竹中氏に批判的なコメントが殺到している。
「新型コロナの流行を日本国内の事情としてコメントしているが、全世界的に新型コロナは流行しているし、ワクチンの接種もされているはず。日本国内の事情だけを理由に中止と言っているわけでは無いのでは? 世論はしょっちゅう間違っていると言っていますが、決定権を持っている偉い人も間違うし、偉い人の間違いの方が影響は大きい」
「日本政府が日本人の生命と健康に責任を負うのは当然でしょう? 五輪に参加する各国やIOCが責任もってくれるのでしょうか。現在は戦時と同等なのですよ。それは国連事務総長も認めています。現実に多くの国民が毎日のように亡くなっています。また、国内世論だけでなく、複数の外国も東京五輪は中止すべきだと国内世論より激しい論調で迫っています。竹中氏は菅総理とお親しいので政権の肩を持ちたいお気持ちはわかりますが、もう少し民主主義について勉強し直しされたらいかがかと思います」
東京五輪開催に反対している割合が多いのは日本国民だけではない。世界中の人達が不安視している現実を頭に入れて、発言すべきではないだろうか。(牧忠則)