立民党代表の枝野幸男氏は、上滑り的な弁舌の巧みさはあるものの、そこには深みや論理の一貫性がないので結局何を考えているのかが良く分かりません。
最近何か書を著わしたようですが、その書について女性記者が疑問点を尋ねたところ、「著書に書いているのでよく読んでください」と答えました。納得できない記者が別の角度から聞き直してもまったく同じ答えでした。それで会見後に克明に読み直したもののやはり答えは書かれていなかったということでした。
いずれにしても問われたことに答えるのはごく当たり前のことで、枝野氏の態度は傲慢の一語に尽きます。当人は書いたつもりでいたのかも知れませんが、もしもそうでないのに「良く読んでくれ」と述べたのであれば、まさに不誠実・狡猾さを絵に画いたものです。
かつて小沢一郎氏が鳩山由紀夫氏と共に民主党政権を打ち立てた時に、党内で小沢氏排斥運動の中心になっていたのが枝野氏でその策動は成功しましたが、そのことが最終的に民主党政権の退場につながりました。要するに彼には自分本位の考えしかなく大所高所の視点がなかったのでした。
今日(安倍・)菅政権がどれほど日本の将来を危うくする政権であるかが明らかになっても、一向に枝野氏が率いる(あるいはかつて民主党政権を破綻させた連中の一部によって運営されている)立民党に国民の支持が集まらないのは、その挙句の民主党政治が国民の願うものでなかったということで、彼(ら)の政治家としての未熟さあるいはに人間性に問題があると見るべきでしょう。
世に倦む日々氏は最近のブログ「千載一遇の好機を潰した枝野幸男 - ラーメンとカラオケと乃木坂以外何もなし」で、「この男の最近1か月間の動きが全く理解できない」、「とんでもない政治音痴」と評し、ツイッターでは「自己陶酔している」と酷評しました。いつか政権が転がり込んでくると夢想しているという訳で、誇大妄想狂とでも言うべきです。
枝野氏は15日、連合会長のところに出向いて「共産党とは、理念に違っている部分があるので連立政権は考えていない」と誓い、記者会見でもそう明言しました。
⇒(6月19日)枝野は党首を下りるべき(晴天とら日和)/小泉元首相らも公開質問状
憲法学者の小林節教授が、日刊ゲンダイの「ここがおかしい 小林節が斬る!」のコーナーで、2回にわたって「枝野代表には説明責任がある」とする記事を出しました。
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ここがおかしい 小林節が斬る!
枝野代表には説明責任がある <上> 共産とは「理念」のどこが違う?
日刊ゲンダイ 2021/06/26
17日、立憲民主党の枝野代表は、総選挙で勝っても、共産党とは、「理念に違っている部分があるので連立政権は考えていない」と記者たちに明言した。
立民が総選挙で自公を過半数以下に抑え込んだとしても、準与党と言える維新が存在する以上、立民と国民で過半数を得ることは不可能で、共産を加えなければ過半数は取れないと考えるのが、今の情勢では常識的なところであろう。それに、枝野氏自身が言及しているように、共産党との候補者一本化(つまり選挙協力)なしに今の立民が大きく議席を伸ばすことなど考えられない状況である。
だから、端的に言ってしまえば、枝野氏は、「共産党の協力を得て選挙で勝利したいが、その結果として政権を奪取できても、共産党は入閣させない。それは、共産党とは基本的な考え方で一部に違いがあるからだ」と言っているに等しい。
しかし、そんな虫のいい(つまりずうずうしい)話があるだろうか?
小選挙区を中心とする今の選挙制度の下では、自公の与党連合に対して野党全体が一つにならない限り政権交代が起こり難いことは自明である。
2012年に改憲草案を党議決定し明治憲法への回帰を指向する自民党と、明治憲法体制に歯向かって初代会長が獄死した創価学会の政治部として始まった公明党は、基本的な「理念」が異なり長年対立していた。それが今では臆面もなく選挙協力して政権を共有している。その結果が腐敗した権力の私物化である。
だから、今、多方面から、政権交代に向けた野党共闘が求められている。
それに対して、野党第1党の党首が、総選挙を前にして、「共産党には選挙協力を求めるが、その結果、総選挙で勝っても共産党は政権に入れない」と発言するとは、共産党に対して極めて非礼な話である。
だから、枝野氏は、排除の根拠として自らが指摘した「理念が違っている」とは、何がどう違っているのか? 自らの言葉で有権者に説明すべき責任がある。
その上で、共産党からの率直な反論もぜひ聞きたい。=つづく
ここがおかしい 小林節が斬る!
枝野代表には説明責任がある <下> 共産と連立すると「国会が止まる」のか?
日刊ゲンダイ 2021/06/27
18日、立憲民主党の枝野代表は、ラジオ番組で、「(共産は)『天皇制や自衛隊や日米安保は棚上げする』と言っているが、(共産と連立した)政権はすぐ倒れる」「(共産が)『党の考えを(連立)内閣に持ち込まない』と言っても、そんな言行不一致はないと、野党自民党はとことんやる。国会は全機能が止まる」と語った。これが、次の総選挙で共産党の協力を得て政権を奪取しても同党を閣内に入れない実際の理由のようである。
しかし、野党自民党が何をできるのか? まず、予算委員会で、共産党の閣僚に対して、「天皇制」「自衛隊」「日米安保」に対する個人的見解と内閣の方針の違いを浮き上がらせようとするだろう。それに対して、共産党の大臣が次のように答えることは今から分かっている。①天皇制については、明治憲法下の「国権の総攬者」たる天皇と現憲法下の「主権者国民の総意に基づく象徴天皇」は別異のものと認識しており、それは、現内閣の方針というよりも日本国の方針であるはずだ。②自衛隊と日米安保については、そのようなものが不要な世界の到来を日本国憲法も共産党も理想として求めてはいるが、それは、今は無理で将来の国際情勢とその時の主権者国民が決めるものと心得ている。
これに対して、自民党が、「納得できない」と言って、審議を拒否したり参議院の過半数で問責決議を乱発したところで、世論は同調するだろうか? 世論が同調しないサボタージュをして野党自民党が得をすることなどない。だから、老練な自民党がそんな理由で国会の全機能を止めようとするはずもない。
となると、聡明な弁護士でもあり既にベテランの域に達した政治家の枝野氏が何を言いたいのか? 私には全く腑に落ちない。
今はっきりしていることは、枝野氏が「総選挙に勝利するために共産党の選挙協力は得たいが、その結果、勝利して政権を奪取しても共産党は入閣させない」という意思を持っていることだけである。しかし、同氏は、こんな失礼なことを公言して実のある選挙協力が得られると思っているのであろうか?
枝野氏はもう少し勉強すべきであるが、共産党も少しおとなしすぎるのではないか。
小林節・慶応大名誉教授
1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)