絶え間なく「緊急事態」が度重なる東京をはじめとして、酒類を提供する飲食店が通常営業できたのは昨年11月27日までさかのぼります。半年以上もマトモに商売ができない上、都からの協力金の支給率は2月以降も5割に届かず、4月以降分は5月末にようやく申請受け付けが開始されたばかりで、飲食店の運転資金はとっくに枯渇しています。
酒類の飲める飲食店に客が寄り付かないため廃業に追い込まれるケースは、ここ湯沢町を含めて全国で起きています。
菅政権はコロナ感染防止の施策は何も行わないまま、コロナ分科会と歩調を合わせてひたすら「飲食店悪玉説」を流し続け、血祭りに挙げてきました。
しかしここにきて医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が、「飲食店悪玉説は本当に正しいのか」とする記事を出しました。
上氏は、飲食店がもっとも危険だとした昨年11月の米スタンフォード大研究チームの発表は「第1波を対象としたもの」で、現状は違うとして、昨年12月、ニューヨーク州での新規感染の4分の3は私的な集まりが原因で、飲食店の寄与率は1・4%に過ぎず、4月27日のコロナ感染症対策アドバイザリーボードに提出された資料でも、4月のクラスター発生463件中、飲食関係は82例に過ぎなかったと述べています。
さらにオランダの研究者や3月30日付の科学誌「ネイチャー」は飲食店を特別視していないとして、それはコロナが濃厚接触だけでなく空気感染でうつることが分かってきたからで、英誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」は4月14日に「コロナ空気感染の再定義」を、また英誌「ランセット」は5月1日に「コロナが空気感染することを示す10の理由」という「論考」を掲載していることを紹介しました。
そして分科会の尾身会長が「マイクロ飛沫で感染が起こることは間違いない」と強調したことに対して、「マイクロ飛沫」に言及した英文論文はわずかに2つしかなく、これを国策にしている先進国はないと述べています。
日刊ゲンダイの記事「通常営業の飲食店が都内に続々 緊急事態宣言再延長で決起」を併せて紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どうする、どうなる「日本の医」
日本のコロナ対策「飲食店悪玉説」は本当に正しいのか
上昌広 日刊ゲンダイ 2021/06/01
医療ガバナンス研究所 理事長
コロナ流行が続き、飲食店への規制が続いている。妥当だろうか。
政府が根拠とするのは、昨年11月に米スタンフォード大学の研究チームが英「ネイチャー」誌で発表した論文だ。もっとも危険だったのは飲食店、ついでスポーツジム、カフェ、ホテルだったと結論づけている。
しかしながら、この研究は第1波を対象としたものだ。現状は違う。昨年12月、ニューヨーク州での新規感染の4分の3は私的な集まりが原因と報告されているし、飲食店は1.4%と報告され、4月27日のコロナ感染症対策アドバイザリーボードに提出された資料では、4月のクラスター発生463件中、飲食関係は82例に過ぎなかった。
多くの専門家が飲食店への規制について疑念を抱いている。2月26日、オランダの研究者は欧州での介入を検証した論文を「BMC公衆衛生」誌に発表し、「イベント禁止と学校閉鎖は有効だが、飲食店の閉鎖の効果は限定的」と結論づけている。3月30日「ネイチャー」は、「なぜ、屋内空間はいまだにコロナのホットスポットになるのだろう」という論文を掲載し、飲食店を特別視していない。
ところが、日本政府や専門家は「飲食店悪玉説」に固執する。尾身茂コロナ感染症対策分科会会長は「歓楽街や飲食を介しての感染拡大が原因であって、家族内や院内の感染はその結果として起こっている(昨年12月23日コロナ対策分科会)」と主張している。
現在、こんな主張をする専門家は世界にはいない。それはコロナが濃厚接触だけでなく、空気感染でうつることが分かってきたからだ。英「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」は4月14日に「コロナ空気感染の再定義」、英「ランセット」は5月1日に「コロナが空気感染することを示す10の理由」という「論考」を掲載している。
空気感染の主体はエアロゾルだ。咳やくしゃみで発生する飛沫と違い、最大で3時間程度、感染性を維持しながら空中を浮遊する。バスや航空機の中で遠く席が離れた人が感染するのは空気感染が原因と考えられている。コロナが空気感染するなら、濃厚接触者を対象としたクラスター対策でなく、広く無症状者を検査しなければならない。
このことに対しても政府は抵抗する。尾身会長はエアロゾルの中で粒子が大きいものをマイクロ飛沫と呼び、「(エアロゾルと比べて)短距離で起こる感染」で「実は3密のところで起きて(中略)いわゆる飛沫が飛ぶということで起こることは間違いない(衆院厚労委員会昨年12月9日)」と証言している。私が調べた範囲で「マイクロ飛沫」というコロナ関連の英文論文は、わずかに2つだ。こんなレベルの議論が国策になっている先進国はない。
これが日本の実態だ。飲食店が本当に危険なのか、科学的根拠に基づき見直す必要がある。
上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。
通常営業の飲食店が都内に続々 緊急事態宣言再延長で決起
日刊ゲンダイ 2021/06/02
9都道府県対象の緊急事態宣言は1日、20日まで再延長されたが、人出は増える一方だ。酒類を提供する飲食店の休業、ノンアルコールでも午後8時までの営業時間短縮要請は継続されているものの、要請破りが続出。人流抑制の大義で強行された“禁酒令”はなし崩しだ。
宣言再延長で飲食店決起
3回目の宣言発令以降、都内の繁華街では要請に応じない飲食店がポツポツ出始めた。それが延長、再延長とゴールポストを動かされるたびに増加。「まとめサイト」も連日更新される活況ぶりだ。
通りに面した1階店舗で堂々とアルコールを出すのは、もはやレアではない。看板を消す店が珍しいほど街ぐるみで“正常化”しているエリアも現れている。とはいえ、都職員らによる見回りに備える動きもある。
新サインは「換気で店に出てる」の隠語
「LINEのタイムラインやSNSに〈換気のため店に出てます。用があったら連絡下さい〉って書き込むんです。一見、要請に従って休業をしながら、新型コロナ対策にも熱心に取り組んでいるみたいでしょう? 実は〈換気のために店に出て〉というのは店を開けています、という意味。飲みに来てよ、って呼び掛けているんです。アルコール持ち込みOKは宣言延長でNGにされちゃったし、こっちもやり方を考えないとね」(歌舞伎町のバー経営者)
念には念を入れ、「こちらのお酒は売り物ではありません。飲まれた場合は1杯につき罰金500円」と張り紙をする店もあるという。
絶え間なく「緊急事態」が度重なる東京で、酒類を提供する飲食店が通常営業できたのは昨年11月27日までさかのぼる。半年以上もマトモに商売ができない上、都からの協力金の支給率は2月以降も5割に届かず、4月以降分は先月末にようやく申請受け付けが開始されたばかり。運転資金の枯渇は待ったなしだ。
新型コロナウイルス特措法に基づき、都が休業命令を出したのは42件。無視し続ければ30万円以下の過料を科される恐れがあっても、「みんなで渡れば怖くない」か。