2022年7月16日土曜日

この国の闇 自民党政権と不気味な宗教団体の怪しい関係(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイが、旧統一教会(現「世界平和統一家庭連合」、以下「旧統一教会」)の実態と自民党政権との密接な関係について、3つの記事 ー「そこにはこの国の闇がある 自民党政権と不気味な宗教団体の怪しい関係」、「安倍元首相銃撃で見えた 統一教会の実態 旧統一教会・田中会長「虚偽説明」の数々 ~ 」、「惨劇は避けられた…安倍晋三氏は16年前、UPFをめぐる弁護団の公開質問状をスルーしていた」を出しました。

 山上容疑者による安倍元首相銃撃事件について日本のマスコミは、「卑劣なテロ」であり、「民主主義への挑戦」であり、「言論封殺の暴力」であり、「民主主義の根幹を壊す暴挙」であるとして徹底的に非難しました。それはまさにその通りです。
 しかしながらそれに留まることなく、旧統一教会が信者を相手にした「言語に絶する献金収奪組織」であり、そうした組織と安倍元首相を中心とする自民党政権との密接な関係が暴かれる方向に進みつつあるのは、事件の本質に迫るものであり喜ばしいことです。
 因みに「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(以下「連絡会」)によれば、旧統一教会の収奪ぶりは、「必ず支払わなければならない義務献金が650万円あり、それが終わると愛国献金が300万円、聖本献金が3000万円と続郷路征記弁護士)というありさまで、「連絡会は安倍氏への公開質問状のなかで、「統一協会は、今日もなお、きわめて多数の善良な市民に対し、先祖因縁による脅迫を行い、その資産の全部を奪い取る反社会的活動を継続している」と述べています。
 以下に日刊ゲンダイの3つの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そこにはこの国の闇がある 自民党政権と不気味な宗教団体の怪しい関係
                         日刊ゲンダイ 2022/07/14
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 安倍元首相が銃撃されて亡くなった事件は「民主主義への挑戦」ではなく、宗教にまつわる恨みだったことが明らかになり、政治と宗教の関係がくしくもクローズアップされている。
 奈良市内で演説中の安倍を殺害した容疑で逮捕された山上徹也容疑者は、母親が旧統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)に入信して多額の寄付をしたことで家庭が崩壊。旧統一教会と関係が深い安倍を狙ったと供述している。
 事件の引き金になったのは、安倍が昨年9月に旧統一教会の関連団体である天宙平和連合(UPF)のイベントにビデオメッセージを送ったことだとされる。UPFは、旧統一教会創始者の文鮮明(故人)と、その妻で現在の旧統一教会トップ韓鶴子が創設した団体だ。
 動画で安倍は「世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」と話していた。
 これを見て、「絶対に殺さなければいけないと確信した」というのだ。

 11日に会見を開いた旧統一教会の田中富広会長は「友好団体との区別がついていなかったのではないか」とトボケていたが、それに反論する形で、旧統一教会による霊感商法被害の救済と根絶を目的に結成された「全国霊感商法対策弁護士連絡会(連絡会)」が12日に会見。安倍の動画について連絡会が問題視し、安倍事務所に「旧統一教会やその正体を隠した各種イベントに参加したり、賛同メッセージを送らないでください」と公開抗議文を送付していたことを明かした。

ジャパンライフと構図は同じ
 マルチ商法で多数の被害者を出し、詐欺罪に問われたジャパンライフは、安倍主催の「桜を見る会」の招待状を信用創出に利用し、荒稼ぎをしていたが、UPFへのメッセージも構図は同じだ。元首相がお墨付きを与えたことで被害者が増える可能性は容易に想像できる。しかも、旧統一教会系の「世界戦略総合研究所」など、同団体関係者も2013年から16年にかけて「桜を見る会」に招かれていた。
「統一教会とUPFが一体なのは周知の事実だし、そもそも、安倍元首相が率いた清和会(安倍派)と統一教会の関係が深いことは、政治記者ならみんな知っているはずです。統一教会の日本国内での組織化にあたっては、安倍元首相が敬愛してやまない岸信介氏が後ろ盾になった。当時は“反・共産主義”で一致していたからです。それ以降も、自民党の清和会の議員事務所を中心に、統一教会から秘書が送り込まれてきた。秘書として訓練されていて無償で働いてくれるから重宝されたのですが、彼らには明確な目的があった。まずは秘書になり、中枢の情報を入手して議員の弱みを握り、あわよくば自分も議員になるという組織的な戦略です。統一教会は霊感商法や合同結婚式などで日本で社会問題になった団体なのに、冷戦終結以降もその関係は維持されてきたということが、今回の事件で白日の下にさらされた。これは極めて重大な問題です」(政治評論家・本澤二郎氏)

 連絡会の調査によれば、百数十人の旧統一教会信者が公設を含めて国会議員の秘書になっていたこともあるという。給料は議員からもらわず、旧統一教会の関連団体である「勝共連合」から出ているケースが少なくない。
 そして、その関係性は第2次安倍政権が発足してから露骨になった。連絡会の山口広弁護士は会見でこう言っていた。
 統一教会と近い政治家は、安倍政権で大臣や副大臣、政務官に登用される傾向が顕著になった。統一教会と仲良くし、協力関係にあった方が早く出世できるという認識が浸透し始めた。これはマズいということで、全国会議員に反社会的団体である統一教会にエールを送るような行為はやめていただきたいと繰り返し要望してきた。安倍さんが統一教会と仲良くすることに開き直り、憂慮していました
 その流れの中で起きた銃撃事件だったのである。

「タカ派」で嫌韓を煽りながら裏ではズブズブ
 「安倍元首相は、表の外交面では韓国に強硬策を取って反韓感情を煽り、岩盤保守層の支持を得てきましたが、裏では韓国の宗教とズブズブだったわけです。本来なら“韓国第一主義”の統一教会とは相いれないはずなのに、選挙の集票や動員、献金などで世話になり、見返りにイベント出席など国会議員側からの協力でカルト宗教にお墨付きを与えてきた。安倍元首相を保守政治家と信じてきた人にとってはショックな事実かもしれませんが、タカ派と言われる議員ほど、統一教会と縁が深いことを直視すべきです。暗殺によってパンドラの箱があいてしまった。統一教会は海外ではカルト認定されている。カルトと手を切れるのか、自民党の体質が問われています」(本澤二郎氏=前出)
 日刊ゲンダイは以前から、安倍政権と宗教団体の怪しい関係を指摘してきた。それは旧統一教会にかぎらない。神社本庁と一体化した神道政治連盟(神政連)や、日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)が安倍政権で存在感を高めていたからだ。「安倍新内閣は“カルト内閣”だった」(19年9月18日付)では、党4役を含めると第4次安倍再改造内閣には日本会議議連の幹部が12人、旧統一教会と関係が深い議員も12人いることを報じた。

伝統的家族観や改憲で共鳴
「自民党の中でも清和会はとりわけ新興宗教との関係が深い。森喜朗元首相から小泉元首相、安倍元首相と清和系の政権が続く中で、宗教団体の影響力が増したことは否めません。安倍元首相の悲願とされた憲法改正は、自民党を支援する神政連や日本会議も強力に後押ししており、第2次安倍政権になってからは、神社に改憲啓蒙ポスターが張られるほど改憲運動は一体化しています」(自民党関係者)
 自民党が昨年、「憲法改正推進本部」を改称して発足させた「憲法改正実現本部」の役員にも日本会議議連の中枢メンバーが顔をそろえている。本部長に就任した古屋圭司政調会長代行は日本会議議連の会長、事務総長の新藤義孝元総務相は副会長だ。最高顧問は安倍と麻生副総裁。特別顧問は議連幹事長の衛藤晟一元沖縄・北方担当相である。
 もちろん、誰にでも信仰の自由がある。宗教が政治団体をつくることも違法ではない。しかし、特定の宗教の教義が与党の政策に影響を与えているとしたら問題だろう。
 自民党の憲法改正草案を読むと、「人権の過剰を是正し義務を示す」「9条を改め軍事力を明記する」「家族条項を盛る」など、安倍と近しい団体の主張と一体化していることが気になる。
 参院選の最中、神政連の合合で配られた冊子に「同性愛は精神障害で依存症」などとLGBTに対する差別的な内容が書かれていたことが発覚し、問題になったが、この会合で講師役を務めたのは韓国人のキリスト教学者だったという。
 「かつては、統一教会などのイベントに国会議員が参加しても名前は伏せていたものですが、第2次安倍政権以降、双方とも隠さなくなった。国会議員が『統一教会系の組織が後援会をつくってくれた』と自らSNSでアピールしていたこともあるくらいです。しかも、統一教会と日本会議、神政連は家父長制という伝統的な家族観を重視している点で一致している。思想を自民党議員と共有し、共鳴し合っているということは間違いないでしょう。安倍元首相の不幸な事件は、大メディアが宗教との癒着をきちんと批判してこなかったツケという一面もあるかもしれません」(ジャーナリスト・藤倉善郎氏)
 安倍を取り巻く宗教は、こぞって個人の人権よりも「家庭」を重視する家父長制の信奉者であり、夫婦別姓や同性婚には反対している。そうなると、自民党政権の「こども庁」が急に「こども家庭庁」に変わったことにも因果関係を感じてしまう。政権与党の政策が特定の宗教団体、それもカルトに左右されるなんて、国民は本当にそれでいいのか?
 安倍襲撃事件は、宗教的な逆恨みで片づけず、これを機に自民党と不気味な宗教団体の癒着について、徹底解明すべきだ。


安倍元首相銃撃で見えた 統一教会の実態
旧統一教会・田中会長「虚偽説明」の数々 霊感商法弁護団の指摘に協会の見解を求めると…
                          日刊ゲンダイ 2022/07/15
「私たちが一番許せないのは、山上さんのお母さんが2002年に自己破産していることです。これは明らかに統一教会に対する過度の献金のためですよ。それ以外、考えられません。それを統一教会は記者会見であたかも他人事のように言った上で、『その後の献金はありません』と。統一教会は借金させてまで献金させています。カードで借金をしたために自己破産した信者はたくさんいます」
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が12日に行った記者会見で、連絡会代表の山口広弁護士はこう語気を強めた。
 旧統一教会が社会問題になったのは、過度な献金のために家庭が崩壊するケースが続出したからだ。

■被害総額は35年間で約1237億円も「氷山の一角」
 安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者(41)の母親も旧統一教会にのめり込み、自己破産し、家庭が崩壊している。旧統一教会の献金の実態はどうなっているのか。
 昨年までの35年間で消費生活センターなどが受けた旧統一教会に関する相談は3万4537件、被害額は約1237億円に上る。しかし、弁護団によるとそれも「氷山の一角」だという。

「借りられるだけ借りてこい」
 「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)日本教会会長の田中富広氏は前日11日の会見で、「山上さんが破綻された立場で、さらに献金を要求することはありません」と発言。これに対し、渡辺博弁護士はこう指摘した。
「統一教会にとって資産がある信者が一番ありがたい。<資産は全て捧げなさい>という教えです。資産がなくなれば『借りられるだけ借りてこい』と言われ、借金で献金をさせられます。弁済できないと、自己破産するしかありません。教会長は破産申立書、破産に至った理由書の書き方を信者に教えます。『弟が病気でお金を使いました』と書くよう指示し、まるで自己破産を奨励しているかのようです」
 田中会長は旧統一教会の献金について、「献金は本人任せで、ノルマはありません」と断言したが、郷路征記弁護士はこう反論した。
札幌の裁判で分かったことは、必ず支払わなければならない義務献金が650万円あり、それが終わると愛国献金が300万円、聖本献金が3000万円と続きます
 旧統一教会側の言い分と弁護士連絡会側の見解は、まったく食い違っている。真相はどうなのか。
 田中会長は11日の会見で「当法人に関する記事を書く場合は、事前に直接取材して情報を得るようにお願いしたい。取材には誠意を持って対応する」と説明した。そのため日刊ゲンダイは13日、旧統一教会広報部に取材を申し込んだが、締め切りまでに連絡はなかった


惨劇は避けられた…安倍晋三氏は16年前、UPFをめぐる弁護団の公開質問状をスルーしていた
                          日刊ゲンダイ 2022/07/15
 安倍晋三元首相の銃撃事件で、殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)。奈良県警などの取り調べに対し、安倍氏が出ていた「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の友好団体「天宙平和連合(UPF)」のビデオメッセージを見て「殺すしかないと思った」と供述したという。
 安倍氏は昨年9月、UPFの大規模集会にビデオメッセージを寄せ、「各地の紛争の解決に努力してきた(統一教会教祖の)ハン・ハクチャ総裁をはじめ皆さまに敬意を表します」とあいさつしていた。
 供述内容が報じられると、テレビのワイドショーなどでは出演者が、「秘書がきちんと対応していれば事件は起きなかった」、「安倍さんはUPFについて、よく知らないまま、メッセージを出したのだろう」などとコメントしていたが、果たしてそうだろうか。

 旧統一教会による被害者の救済活動を展開する「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は今から16年前の2006年6月、当時は内閣官房長官だった安倍氏に公開質問状を出している。安倍氏が、この年の5月13日にマリンメッセ福岡で開かれたUPFの「祖国郷土還元日本大会」に対し、「内閣官房長官」の肩書きで祝電を送ったことに懸念を示したのだ。
 質問状では、①どのような事情で祝電を送ったのか ②UPFが統一協会系であることを知っていたのか ③今後も統一協会の組織活動について同様の対応をする考えがあるのか  だった。しかし、安倍氏側は何ら回答せず、メディア取材に対して「私人としての立場で地元事務所から『官房長官』の肩書で祝電を送付したとの報告を受けている。誤解を招きかねない対応であるので、担当者にはよく注意した」とのコメントを出しただけだったという。

弁護団の抗議や申し入れを真摯に受け止め、適切に対応していれば…
 連絡会はこうした安倍氏側の対応を批判し、さらなる公開質問状を送付している。内容はこうだ。
〈貴殿が統一協会の集会に祝電を送るということは、貴殿が統一協会の活動に賛同し、これを激励している趣旨であることは、誤解されようのない事実です。統一協会は、今日もなお、きわめて多数の善良な市民に対し、先祖因縁による脅迫を行い、その資産の全部を奪い取る反社会的活動を継続しています
〈本来、貴殿は、内閣官房長官として、統一協会のこうした反社会的な活動に対し、善良な市民を守るために適切な施策を講じる責任を負っているはずです。そうした役割を期待されている貴殿が、今回の行動により、逆に統一協会の反社会的な活動にお墨付きを与え、これを援助、助長していることについては、法律上も多大な問題を有すると指摘せざるを得ません〉
〈当連絡会は、貴殿に対し、反社会的な活動を行っている統一協会とのこれまでの関係をきちんと明らかにし、今後は統一協会との関係を絶つよう求めます〉
 この経緯を振り返る限り、安倍氏はUPF=統一教会がどのような団体なのかはハッキリと認識していただろう。政治家として、また官房長官という政府の要職にある身として、この時、弁護団の抗議や申し入れを真摯に受け止め、適切に対応していれば、少なくとも今回の惨劇が起きることはなかったのではないか。