櫻井ジャーナルが「米国に従う日本は露国や中国と戦争状態にあり、サハリン2の問題は序の口」という記事を出しました。
いま米国の主導の下、欧米を中心にロシアに対してありとあらゆる経済制裁を科しています。ロシアがウクライナに侵攻したのは厳しく批判されるべきことですが、こうした制裁のあり方が正しいと言いきれるのかは疑問です。特にロシアの侵攻を熱心に煽った米国が行えるのかという点で、そうです。
いわゆる欧米勢力の一員と自覚している日本は制裁のすべてに賛成しているのですから、ロシアから見れば「非友好国」であるのは議論の余地がありません。ロシアは欧米を中心とする数十か国を相手にしているのですから必死にならざるを得ず、「サハリン2」の事業主体をロシア政府が新たに設立する企業に変更するというのは、対抗措置としてあり得ることでした。櫻井ジャーナルはこれは序の口と覚悟すべきだとしています。
日本は米国に追従して,中国に対してもいまや明確に敵対国になっています。
それにしても対中、対韓、対露という近隣諸国との関係において、日本は敵対行為を行っていることの自覚はあるのでしょうか。
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米国に従う日本は露国や中国と戦争状態にあり、サハリン2の問題は序の口
櫻井ジャーナル 2022.07.03
ウラジミル・プーチン露大統領が6月30日に署名した大統領令によって、ロシアのサハリンで石油や天然ガスを開発するプロジェクト「サハリン2」の事業主体をロシア政府が新たに設立する企業に変更、その資産を新会社に無償で譲渡することになったようだ。アメリカのジョー・バイデン政権が始めたロシアに対する経済戦争に対する反撃のひとつだと言えるだろう。
アメリカ政府は影響下にあるロシアの金や外貨を凍結、エネルギー資源をはじめとする貿易を制限し、SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシア排除も決めた。この経済戦争で日本やEUはアメリカに加担、ロシア政府から「非友好国」と見做されるようになった。
この経済戦争は短期的に見ると、2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用して行ったクーデターから始まっている。このクーデターでウクライナの東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除、ヤヌコビッチを支持していた国民はクーデター政権を拒否した。
クーデターの背後にアメリカが存在していることからクリミアの住民は住民投票を経てロシアとの統合を選んだ。ドネツクは自治を、ルガンスクは独立をそれぞれ住民投票で決めたのだが、クーデター政権が送り込んだ部隊と戦闘になる。この時にロシアは目立った動きをせず、ドンバス(ドネツクとルガンスク)で戦争が続くことになった。
その後、アメリカ/NATOはクーデター体制に兵器を供給、兵士に対する軍事訓練を続けてきた。特殊部隊が実際の戦闘にも参加しているとみられている。
そして今年2月19日、ウクライナの政治家であるオレグ・ツァロフは緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らした。
そのアピールによると、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧しようとしているとされていた。ドンバスを制圧し、キエフ体制に従わない住民(ロシア語系住民)を「浄化」、SBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行することにもなっていたという。
後にロシア軍が回収した文書によると、ゼレンスキーが1月18日に出した指示に基づいて親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日に攻撃の指令書へ署名、ドンバスを攻撃する準備が始まった。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。この情報が正しいなら、その直前にロシア軍がウクライナを攻撃し始めたことになる。その反撃を口実にして、バイデン政権はロシアに対する「制裁」を始めたわけだ。
日本はアメリカの経済戦争に参加しているが、それだけでなく軍事的な同盟関係を強化している。アメリカ軍は2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ作り替え、日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側(⇒インド洋側?)の拠点、そしてインドネシアを両海域をつなぐ場所だとしたものの、インドとインドネシアはアメリカと一線を画している。明確に従属しているのは日本だけ。
日本はアメリカ、オーストラリア、そしてインドと「クアッド」と呼ばれる軍事同盟を結んだが、インドは腰が引けているので、アメリカとしては信頼できないだろう。そこでアメリカ、イギリス、オーストラリのアングロ・サクソン系3カ国は2021年9月に「AUKUS」という軍事同盟を結んだ。この同盟に日本は接近、その日本の総理大臣である岸田文雄は6月29日から30日にかけてスペインで開かれる予定のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議に出席した。
アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」は今年、アメリカのGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する戦略について分析している。
インド・太平洋地域でそうしたミサイルの配備はオーストラリアも嫌がっているようで、結局、ミサイル配備を容認する国は日本しかないという結論に達したようだ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力するという案をRANDは提示している。
こうした日米の軍事的な連携は1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」が発表されてから強化されている。この報告の基盤になったのが1992年2月に国防総省で「DPG草案」という形で作成された世界制覇プランだ。このプランがポール・ウォフロウィッツ国防次官を中心に書き上げられたことから「ウォフロウィッツ・ドクトン」とも呼ばれている。国連中心主義を掲げていた細川護熙政権にナイ・レポートは突きつけられた。アメリカに従えば良いという通告でもある。
この時、最初に動いたのはマイケル・グリーンとパトリック・クローニンのふたり。カート・キャンベルを説得して国防次官補だったジョセイフ・ナイに接触し、ナイは1995年2月に報告を発表したのだ。現在、キャンベルはアメリカの東アジア政策を指揮している。
ウクライナだけでなく、東アジアもネオコンに支配されていると言えるだろうが、駐日アメリカ大使を見てもそれは推測できる。昨年12月に就任、3月に着任したラーム・エマニュエルは筋金入りのネオコン/シオニストで、「ランボー」と呼ばれるほどの人物だ。イスラエル軍の軍人だったことがあるともいう。日本は中国やロシアに対して敵対的な姿勢を維持するよう、アメリカに強いられているはずだ。日本の政治家や官僚もエマニュエルに脅されている可能性がある。
すでにアングロ・サクソンは中露と戦争状態にある。プーチンは穏やかに収束させようとしていたが、米英を増長させただけだった。こうした状態の中、アメリカへの従属を隠していない日本はロシアから「非友好国」だと見做されている。サハリン2の問題は序の口だろう。