2022年7月23日土曜日

腐敗五輪に今ごろメス この国の検察の動きは極めて怪しい(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイが掲題の記事を出しました。
 読売新聞が特報し、目下マスコミ各社が一斉に後追いしている五輪絡みの贈収賄案件は、紳士服大手AOKIが、「スポーツマフィア」とも評される大会組織委の高橋治之元理事代表を務めるコンサルタント会社「コモンズ17年9月にコンサル契約を締結し、大会閉幕ごろまで月100万円総額で少なくとも4500万円超を支払った疑いがあるというものです(AOKIは18年10月に大会スポンサーに)。

 それがこの時期に明らかにされたのは東京地検特捜部が読売新聞にリークしたからです。
 特捜部任意の事情聴取に対して、AOKI創業者の青木拡憲前会長資金提供を認め、「高橋さんの人としての力に期待した」などと説明しているということです。一方の高橋氏もマスコミ各社の取材に対して、カネのやりとりを認めているものの旧知の間柄だった青木氏から経営に関する相談を受け、コモンズとして対応していたと説明しています。
 なお東京五輪・パラ特別措置法理事はみなし公務員と規定されているので、違反すれば刑法の収賄罪に抵触する恐れがあります

 しかし東京五輪に今ごろメスを入れるという検察の動き極めて怪しいと言え、内閣の了解がないと動けないという弱点を示しています。この時期に検察リークするのは、裏金の立証が壁にぶち当たり、青木会長の身柄を取るのは難しいと判断したからでは、そして高橋氏が余裕の対応をしているのもAOKI側がしっかりと手を打っているからでは、という見方があります。
 その一方で、検察の本丸は別にありアドバルーン効果を狙った側面もあるという見方があります。

 高橋氏は、スポーツビジネス界で知らぬ人間はいない実力者であり、五輪には招致段階から関わり、招致委からコモンズに対して総額89億円もの巨額マネーが流れています。これはAOKI問題とは別物ロイター通信が特報しました。
 高橋氏は受領を認め、招致推進のための飲食やマーケティング経費に充てたと説明していますが、それは10億円近い巨額に見合う内容のものなのでしょうか
 日刊ゲンダイは、一刻も早く詰めなければこれまた闇に葬られかねないとしています
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腐敗五輪に今ごろメス この国の検察の動きは極めて怪しい
                        日刊ゲンダイ 2022/07/23日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 コロナ禍で世論の賛否が分かれる中、半ば強行的に昨年開催された東京五輪・パラリンピックをめぐり、新たな金銭疑惑が浮上した。大会組織委員会の理事と大会スポンサーが多額のカネをやりとりしていたのである。東京地検特捜部が捜査を進めている。案の定、露呈した利権まみれの黒い五輪。読売新聞が特報し、マスコミ各社が一斉に後追いしている。
 新たな疑惑の中心人物は大会組織委の高橋治之元理事(78)と、紳士服大手AOKIホールディングス(横浜市)の創業者の青木拡憲前会長(83)。AOKIは大会スポンサーとしては最下位の「オフィシャルサポーター」だった。AOKIは高橋氏が代表を務める会社との間でコンサル契約を結び、総額で少なくとも4500万円超を支払った疑いがもたれている。契約締結は高橋氏が理事に就任して以降。AOKIはその後、大会スポンサーとなり、五輪エンブレム入りの一般向けスーツやジャケットといった公式ライセンス商品などを販売し、3万着以上を売り上げた。
 コトの経緯はこうだ。2013年9月に東京五輪の開催が決定。14年1月に組織委が設立されると、「スポーツマフィア」とも評される電通元専務の高橋氏が6月に理事に就任した。高橋氏が代表を務めるコンサルタント会社「コモンズ」(東京都)は17年9月にAOKIとコンサル契約を締結し、大会閉幕ごろまで月100万円を受領したという。AOKIは18年10月に大会スポンサーとなった。

「人として期待」で資金提供
 特捜部は青木氏を含むAOKI幹部を聴取。任意聴取に応じた青木氏は資金提供を認め、「高橋さんの人としての力に期待した」などと説明しているという。物は言いようだが、平たく言えば、便宜供与をあてにしたということなのだろう。労力の発生しない対価などあり得ない。コモンズとの契約締結前後、青木氏が部下に対し、高橋氏への依頼の整理を指示し、部下が「五輪関連で力を借りたい」とメールで報告したとも報じられている。
 一方、資金提供を受けた高橋氏もマスコミ各社の取材にカネのやりとりを認めているものの、「コンサル契約は五輪とは関係ない」などと主張。旧知の間柄だった青木氏から経営に関する相談を受け、コモンズとして対応していたと説明している。東京五輪・パラリンピック特別措置法28条では、理事はみなし公務員と規定され、職務に関して金品の受領を禁止されている。違反すれば、刑法の収賄罪に抵触する恐れがある。

 それにしても、東京五輪のドス黒さといったらない。13年9月に開かれたIOC(国際オリンピック委員会)の総会で当時の安倍首相が「福島原発はアンダーコントロール」と大嘘をついたことに始まり、国立競技場の白紙撤回、公式エンブレムの盗作。五輪につきもののカネにまつわる疑惑も当時から火を噴いていた。仏検察当局が選定プロセスの汚職捜査に乗り出し、JOC(日本オリンピック委員会)の竹田恒和前会長(招致委員会理事)を贈賄の疑いで聴取。約2.3億円の裏金を使い、票の取りまとめを依頼した疑いだ。当初の開催が1年後に迫る中、立役者であったはずの竹田は19年にIOCとJOCの役職を辞任した。

官邸がゴーサインを出さなければ手が出ない
 腐敗五輪に今ごろメス。この国の検察の動きも極めて怪しい。組織委は6月末、総額1兆4238億円に上る大会経費を最終報告。招致活動段階の立候補ファイルで示した7340億円からほぼ倍増だったが、経費の全体像は不明のまま解散した。残務を担う清算人に武藤敏郎専務理事、布村幸彦常務理事、佐藤広、山本隆の両副事務総長ら4人が選ばれてはいるものの、五輪運営に責任を負う組織はないに等しい。

「特捜部は今春以降、AOKI幹部らに対し、一連の資金提供などの事情聴取を行っていましたが、表に出るのは秋ごろとみられていた。この手の案件は通常、聴取に手間取る夏休み時期を避けるためです。検察リークのタイミングが早まったのは、青木会長の身柄を取るのは難しいと判断したからでしょう。高齢なのもありますが、コモンズとの契約内容が緻密に構築され、裏金の立証が壁にぶち当たったのではないか。有能な弁護団も控えているでしょう。高橋氏が余裕の対応をしているのも、AOKI側がしっかりと手を打っているからではないかとみています。一方で、検察の本丸は別にあり、アドバルーン効果を狙った側面もあるようです」(司法担当記者)

 それにしてものタイミングではある。銃撃事件の発生からおよそ2週間。コロナ禍による延期を2年から1年にしてまで、首相在任中の五輪開催にこだわった安倍は鬼籍に入った。検察庁法を改正してまで“官邸の守護神”の検事総長ねじ込みを企み、検察支配をもくろんだ脅威は消え去った。
「検察が五輪に切り込めば、自民党は間違いなく傷を負う。利権に関わっていたのは、失言問題などで組織委会長を辞任した森喜朗元首相、安倍元首相ら清和会(安倍派)の面々、そして菅前首相らビッグネームぞろい。官邸がゴーサインを出さなければ、うかつに手を出せない案件です」(与党関係者)

統一教会と五輪利権のWパンチ
 良くも悪くもお公家集団の宏池会出身の岸田首相は、五輪には基本的にノータッチ。銃撃事件で明るみに出た「政治と宗教」をめぐっても関わりが薄い。統一教会(現・世界平和統一家庭連合)とのズブズブの関係が掘り起こされ、火ダルマになっているのは主に清和会の議員だ。つまり、五輪利権と統一教会のダブルパンチで尻に火がついているのは、安倍と近かった連中ばかりということになる。憲政史上最長政権を率いた故人を国葬で丁重に弔うと言いながら、安倍シンパに壊滅的打撃を与えようというのなら、それはそれで見上げたものだ。
 巨悪を眠らせて久しい検察には破廉恥漢くらいは一網打尽にしてほしいものだが、安倍死去からの風雲急、あれだけ五輪でバカ騒ぎを演じたスポンサー側の大メディアが検察リークで踊る様のアホらしさといったらない。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「確固とした五輪利権というものが存在し、五輪に乗じて儲ける輩が相当いる。東京五輪のスポンサーだった大手メディアが『五輪とカネ』にこれまで積極的な姿勢を見せなかったのは、自分で自分の首を絞めることになるから。思考停止は鮮明です。2030年開催予定の冬季五輪招致に札幌市長は前のめりですが、ただでさえ市民の意見は割れる中、東京五輪をめぐる疑惑が渦巻いている状況下で札幌五輪なんてバカを言うな、という流れが強まるでしょう。検察の動き次第では、決して開けてはいけないパンドラの箱が開くかもしれません」

 高橋氏といえば、スポーツビジネス界で知らぬ人間はいない実力者であり、いわくつきの人物だ。91年の世界陸上や02年のサッカー日韓W杯の実現に大きく貢献。五輪には招致段階から関わり、招致委からコモンズに対して総額89億円もの巨額マネーが流れている。AOKI問題とは全く別物だ。特報したロイター通信に対し、高橋氏は受領を認め、招致推進のための飲食やマーケティング経費に充てたと説明。使途を説明する義務はないとし、「いつか死ぬ前に、話してやろう」と応じたという。明日はわからない。一刻も早く詰めなければ、これまた闇に葬られかねない