2022年7月1日金曜日

参院選の争点は「アベノミクスの罪」だ 政府も日銀も死に体(金子勝氏)

 世界各国の中央銀行が一斉に利上げに転じた中で、日銀だけはそれが出来ません。「しない」のではなく「出来ない」のです。それは国債残高1000兆円に対して金利を1%上げれば利息分(国債費)は年額10兆円になるので財政的にとても賄い切れないし、日銀は526兆円を保有しているので、利上げをすれば債務超過(破綻)に陥ります。中央銀行を破綻させれば文字通り破綻国家となります。

 すべては10年近く続いたアベノミクスの放漫財政が招来したものです。
 異次元緩和をやめた途端に株価が暴落し日銀が債務超過になるので、アベノミクスを軟着陸させることが出来ないという指摘は当初からありました。それ以前の問題として既に抜き差しならない状態に陥っているのでした。
 このまま世界の趨勢に追随できない状態が続けば日本は猛烈なインフレに直面すると言われ、終戦直後のハイパーインフレに似た状態になるということです。
 つくづくアベノミクスは日本を滅茶苦茶にしました。このことは間違いなく歴史に残ることでしょう。
 日刊ゲンダイの記事:「金子勝の『天下の逆襲』ー参院選の争点は『アベノミクスの罪』だ 政府も日銀も死に体、絶対にだまされるな」を紹介します。
末尾で、金子教授が解説する動画(24分)が紹介されています。
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金子勝の「天下の逆襲」
参院選の争点は「アベノミクスの罪」だ 政府も日銀も死に体、絶対にだまされるな
                         日刊ゲンダイ 2022/06/29
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 参院選(7月10日投開票)が公示され、円安物価高を前面に押し出す野党がようやくいい戦いをし始めた。10年近く続くアベノミクスがこの国の経済をどれほどむしばんできたか。この争点をしっかり問えるかが勝負の分かれ目になるだろう。岸田自民党は金利を引き上げたら中小企業や家計が苦しむと主張しているが、ちょっと待て。金利を見直せなくなるほど経済をおかしくしたのはアベノミクスなのではないか。
 2021年末の普通国債残高は1000兆円に迫る水準だ。金利が1%上昇すれば、単純計算で国債費は10兆円増える。防衛予算のおよそ2年分だ。この間、政府はマイナス金利の短期債と中期債を発行し、やりくりしてきた。平たく言えば、日銀が額面価格より高く買い取り、政府にカネを差し出すということ。政府は利払い不要で臨時収入を手にしてきたわけだ。日銀が金利を引き上げたら政府はその手を使えなくなる上、たちまち財政危機に陥ることになる。
 金利が上昇すれば、国債価格は下落する。ブルームバーグの計算によると、526兆円の国債を保有する日銀は金利引き上げで29兆円の含み損を抱えるという。日銀の自己資本は10兆円超だから、潜在的な債務超過状態になってしまう。だから日銀は国債を売り払えず、永久に抱えざるを得ない。身動きが取れない懐事情を見透かされ、それがまた円安を加速させる。 

 新型コロナ対策として中小企業などにバラまいた実質無利子・無担保融資は40兆円を突破した。金利上昇に耐えられず倒産が相次ぎ、住宅バブルが崩壊すれば、日銀は大量の不良債権を抱えることにもなる。中央銀行である日銀はすでに青息吐息の死に体。こうした事実を知っておかなければならない

 都合の悪い現実をヒタ隠す岸田政権と黒田日銀の逃げ切りを許せば、究極の日本売りを引き起こすだろう。主要国の中銀が次々に利上げを実施する中、日本だけ取り残され、円安は進行する一方だろう。
 1ドル=140円台に突入すれば、アジア通貨危機が再来するリスクも高まる。岸田自民は防衛費の「5年以内にGDP比2%以上」の実現に向けてシャカリキになり、安倍元首相は「財源は国債で対応していけばいい」なんて無責任なことを言っている。戦時財政でハイパーインフレを引き起こし、政府の借金をインフレで棒引きするつもりか。
 安全保障の不安をあおり、憲法改正を争点化し、国民が生活できなくなる危機を国家存続の危機にすり替えるのが岸田自民の路線。目くらましに絶対にだまされてはいけない。

*番外編を【動画】でご覧いただけます。

金子勝 立教大学大学院特任教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。