2022年7月6日水曜日

サハリン2がいい例だ 誰もが気づき始めた 岸田首相の無能ぶり

 別掲の記事でも触れたように、岸田首相はNATO首脳会議に出席しNATOとの連携・連帯を進める意思を表明しました。それでプーチンは大いに怒ったのでしょう、6月30日、「サハリン2」の運営会社を事実上、国有化する大統領令に署名しまし

 これの日本に及ぼす影響は甚大で、こうなる惧れがあることは外務省と経産省は早くから認識していたのでした。そうであればそれを予定した上での首相の発言ということになるので、当然その対策も出来ていなくてはならないのですが、実際はどうなのでしょうか。
 一国のトップである以上、単なる「正義感」(←百歩譲って)だけに基いてこのような発言をすることは許されません。もしも「正義」を貫くためには、それによる不都合は耐え忍ぶべきと考えて主張したというのであれば、今こそ それを国民に説明し説得するべきでしょう。
 しかし岸田氏は口調だけは流暢ですが、そのベースにそうした緻密な思考や確固とした決断あるいは覚悟があるようにはとても見えません。単に米国に迎合したものという疑いが拭えません。
 日刊ゲンダイが「サハリン2がいい例だ 誰もが気づき始めた 岸田首相の無能ぶり」という記事を出しました。真相に迫っていると思われます。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
サハリン2がいい例だ 誰もが気づき始めた 岸田首相の無能ぶり
                        日刊ゲンダイ 2022年7月4日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
「万全の体制で国民の皆さんの暮らしを守る」
 参院選の自民党候補の応援のため、岸田首相が全国行脚だ。ドイツでのG7や、スペインでのNATOの首脳会議から帰国後の1日は沖縄、2日は福井、京都、大阪、3日は東京、北海道と駆け巡り、応援演説では必ず冒頭の決めゼリフ。しかし、この言葉には嘘がある。
 サハリン2の一件がいい例だ。ロシアのプーチン大統領6月30日、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の運営会社を事実上、国有化する大統領令に署名した。同事業には三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資。ロシアが突き付けた条件をのまなければ、日本企業の権益は「強奪」される可能性がある。

 ウクライナ侵攻後、日本は欧米と協調してロシアに厳しい制裁を科してきた。プーチンが怒り心頭に発したのは、岸田が日本の首相として初めてNATO首脳会議にまで出かけたことだろう。
 岸田は首脳会議でロシアや中国を非難し、ロシアを「最大かつ直接の脅威」と位置付けたNATOと日本との関係強化を強調。プーチンが今回の大統領令を出したのは、その直後である。
 ロシア敵視を鮮明にした以上、プーチンの報復は当然と言えば当然だが、オドロキなのは日本政府が事前に何も情報を掴んでいなかったことだ。朝日新聞(2日付)は次のように報じていた。
〈政府関係者によると、ロシア側から事前説明はなく発表で知ったという。このため政府は発表内容の精査や情報収集に追われた〉
 あまりにも、お粗末過ぎる。

見るも無残な危機管理能力と覚悟の欠如
 すでに6月にはロシア側が報復に出る予兆があった。ロシア議会で地下資源法が改正。資源開発に携わる外国企業の株式譲渡が盛り込まれた。朝日の記事によると、この動きがサハリン2などに波及する可能性もあるとし、外務省と経産省が対応などを検討していたというが、このザマだ。
 朝日は外務省幹部が漏らした本音をこう伝えていた。
〈「『やるなよ、やるなよ』と思っていたが、『やっぱり来たか』という感じだ」〉
 ダチョウ倶楽部のネタじゃあるまいし、日本政府の低レベルな危機管理能力には今さらながら、あきれるほかない。国際ジャーナリストの春名幹男氏はこう言う。
「岸田政権は米欧と足並みを揃えて対ロ制裁を科し、その上、ロシアを『敵国』とみなすNATOの首脳会談に首相が出かけ、軌を一にするとまで踏み込んだのです。ここまで外交・安保政策を大転換した以上、常に最悪の事態に備え、情報収集に努めるのが政府の役割。ましてや、サハリン2の動きは日本の重要なエネルギー源が失われかねない案件です。2年前、国家安全保障局に新たに『経済班』を設置しましたが、彼らは何をしていたのか。4月には米欧と一致して駐日ロシア大使館の外交官ら8人を国外退去させましたが、追放者を『外交官』と称したのは日本だけ。欧米各国は必ず『スパイ』として追放し、その裏付けも取っていますが、日本政府はその自信を持てるだけの確証がない。政府の情報収集能力はかくも情けない状況なのです」
 岸田政権は欧米にいい顔をして右へ倣え。強硬姿勢を示すだけで、ロシアの報復に関する戦略も情報も、そして覚悟もまるきり持ち合わせていないのだ。

暮らしを守る決意などこれっぽっちもない
 仮にサハリン2からの液化天然ガス(LNG)供給がストップすれば家計には大ダメージだ。
 日本は輸入LNG全体の8.8%をロシアに依存。その大半をサハリン2が占めており、発電用の燃料や都市ガスの原料に用いられている。
 国内の電力・ガス会社はサハリン2と15年程度の長期契約を結び、市場価格の4分の1から10分の1程度とされる安価でLNGを購入してきた。LNGは石炭や石油と違って増産の余地が少なく、代わりの調達先を見つけるのは困難だ。
 代替先を時々の需給に応じて売買する「スポット市場」に頼れば、輸入量や為替相場などから追加の調達コストは年間1兆円とも2兆円ともいわれている。ただでさえ、高騰続きの電気やガスの料金はさらなる値上げとなりかねない。
 食料品の値上げラッシュと重なり、庶民生活はいよいよ、火の車だ。プーチン報復の家計直撃は、NATOとの一体化に前のめりな岸田の外交姿勢がもたらした「人災」でもある。
「日本政府の外交下手を考えれば、ロシア政府に何も言えず、いや応なしにサハリン2の権益を失うことになりそうです。本来なら、対ロ制裁で凍結した個人や団体の資産を没収する手続きを始めるなど具体的な対抗手段を示すべきですが、岸田首相は選挙にかまけて、ロシアにやられっぱなし。1973年に第4次中東戦争の勃発で第1次石油危機が日本を襲った際、当時の田中角栄首相は中東政策を転換。イスラエルを支援してきた米国の逆鱗に触れることを恐れず、原油確保のため、アラブ諸国支持にカジを切りました。すべては国民生活を考えての行動で、岸田首相からは角栄氏並みの覚悟が、みじんも感じられません」(春名幹男氏=前出)
 サハリン2の供給が止まれば電力供給も一段と逼迫する。LNG火力発電所は日本の発電量の4割弱を占める主力電源だ。LNG不足で発電できない事態となれば電力不足がさらに深刻化し、「計画停電」の可能性も出てくる。
 今年の酷暑を考えれば、計画停電の実施は熱中症による死者多発と同義語だ。猛暑の電力不足は国民の命にかかわる一大事だが、実は政権内でも、今年4月には事前に注意喚起されていたのだ。

有事の課題にお手上げ状態
 経産省が4月12日に開催した「第47回電力・ガス基本政策小委員会」。この審議会が公表した電力需給見通しによると、今夏が10年に1度の猛暑となった場合、7月には東北、東京、中部各電力管内の予備率は3.1%まで下がると明言してある。
 サハリン2からの調達に支障が出ていないことを前提とした推計でも、3.1%は安定供給に必要な3%をギリギリ上回る水準だ。既存の発電所でトラブルが起きたり、送電網に問題が生じれば最悪の場合、いきなり「ブラックアウト」(大停電)になってもおかしくない。
 これだけ明確に政権内で警鐘が鳴らされていたのに、岸田がこの間やったことといえば、節電に協力した世帯に2000円相当のポイントを付与するという「天下の愚策」を打ち出しただけ。
 早すぎる梅雨明けで、いざ酷暑が到来すると、7年ぶりとなる全国的な節電要請を出し、休止中の発電所の再稼働で電力不足を乗り切ろうとするドタバタぶりだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
「岸田首相は『聞く力』を売りにしていますが、実体は『聞き流す力』。ウクライナ戦争の当事国でもないのに、軽率にも日本の安保・外交を根本的に転換させ、物価高やその要因でもある異常な円安に関わる金融・経済対策には『何もしない』で無為無策です。何もしなければ敵をつくらないと言わんばかりで、日本が直面している『有事』の喫緊の課題に対し、お手上げ状態です。いま何もできない首相が、選挙が終われば変わるわけもない。この参院選で国民は1票の力で『これじゃダメだ』とハッキリと分からせ、目を覚まさせるしかありません」

 もはや岸田の無能ぶりに誰もが気づき始めたのではないか。国民生活を救う決意などこれっぽっちもないクセに「暮らしを守る」なんてエラソーな演説は嘘っぱち。もはや自虐ギャグにもなりやしない。