別掲の窪田順生氏の記事には、
・西側諸国は世界の人口の15%しか占めていない。一方、ロシアと中国を含めたBRICS
は5カ国ながら世界人口の38%以上で世界のGDPの約24%を占めている。
・6月15~18日に、ロシアで開催された第25回サンクトペテルブルク国際経済フォー
ラムには、例年より13か国減ったものの127カ国が出席した。
ことなどが記載されています。
日本では「国際社会」というと欧米諸国しか念頭になく、その他の大多数にはあまり関心がないようです。しかしそれは明治開国以来養われてきた固定観念のようです。
その点、ロシアや中国は大いにアフリカ諸国に関心を持ち、援助もし、彼らから信頼を勝ち得ているようです。日本も従来の「米国一辺倒」や「欧米一辺倒」から早く脱するべきです。
堀田 佳男氏による記事:「アフリカ諸国はなぜウクライナを支援しようとしないのか 簡単には忘れられない植民地支配の辛い記憶とロシアの援助」を紹介します。
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アフリカ諸国はなぜウクライナを支援しようとしないのか
簡単には忘れられない植民地支配の辛い記憶とロシアの援助
堀田 佳男 JBpress 2022.6.30
ロシアによるウクライナ侵攻からすでに4カ月以上が経った。
ウクライナ東部での戦闘は収まるどころか、さらに激化するとの見通しが有力だ。首都キーウが3週間ぶりにロシア軍に攻撃されてもいる。
それに対し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6月25日のビデオ演説で、「すべての都市を奪い返す」と強気の発言をしており、ウクライナ戦争はほぼ間違いなく長期化しそうな情勢である。
そんな中、同戦争に対する興味深い見方がワールドニュースのスポットライトを浴びた。
アフリカ連合(AU)加盟国55カ国のうち、「被害国」であるはずのウクライナに加担する国がほとんどいないことが明らかになったのだ。
ロシアがウクライナに一方的に軍事侵攻したという事実は国際的に広く認知されているはずだが、それは世界中の国々で共有されている統一見解ではない。
6月20日、ゼレンスキー氏はアフリカ諸国の代表たちとビデオ会議(Zoom call)を開こうと画策していた。
ドイツとフランスも会議の開催を随分前からあと押ししたが、会議は失敗に終わる。
というのも、55カ国の国家元首のうち、参加したのは4カ国だけだったからだ(セネガル、コートジボアール、リビア、コンゴ)。
ウクライナ戦争はロシアによる不当な侵略から始まったはずだが、ほとんどのアフリカ元首はゼレンスキー氏の話に耳を傾けることを拒否しただけでなく、ウクライナが「犠牲者」であるとの捉え方もしてないのだ。
外交関係者の共通する見方として、ウクライナはいま経済的に窮地に立たされているだけでなく、軍事的にも脆弱であるため、同国がアフリカ諸国に提供できるものはないという考え方がある。
アフリカ諸国にしてみると、ウクライナを支援しても自分たちの利益にならないのなら、ロシアに追随した方がいいという思考回路である。
そのロシアはアフリカの食糧安全保障の柱として、またアフリカ大陸のテロ活動に対する防護壁として支援する価値があると捉えられている。
多くの元首たちにとって、ウクライナ戦争というのは欧米諸国とロシアによる代理戦争であり、51カ国の元首たちは、ことウクライナ戦争においては「中立を保つ」ことが賢明と判断したわけだ。
フランスの「ル・モンド」紙は、ウクライナが4月から同会議を開こうと画策していた事実を指摘。
さらにアフリカ元首の不参加については、「ゼレンスキー氏とアフリカ大陸の指導者たちの間には緊張関係があった。そのため、多くのリーダーたちは中立の立場を堅持したのだ」と記した。
さらに欧州メディア「モダン・ディプロマシー」は次のように書いている。
「米国と欧州連合は、国際社会のために行動していると主張しているが、今回のウクライナ戦争では、ウクライナ側に加わっているのは米国、欧州連合、オーストラリア、ニュージランド、韓国、日本といった同盟国だけで、世界人口でいえば15%ほどでしかない」
そして中国、インド、パキスタン、ブラジル、エチオピア、メキシコ、ベトナムといった多くの人口を抱える国は中立を保っていると記した。
逆に南アフリカ、イラン、ベネズエラ、キューバ、ニカラグアなどは、ウクライナ戦争の根源的な原因は米国を含む北大西洋条約機構(NATO)にあるとする立場をとっている。
ロシアがウクライナ侵攻の当事者であり、加害者であるにもかかわらず、ロシアへの批判が多数意見になっていないのだ。
ウクライナへの支持が集まらない理由はほかにもある。
多くのアフリカ諸国は第2次世界大戦後、植民地支配から解放された時、モスクワから支援の手を差し伸べられた。
アフリカでは、国によってはいまだに反帝国主義的な感情を抱いているところがあり、米国とロシアのどちらを選択するかと問われた時にはロシアを選ぶことが少なくない。
アフリカ内部からの声を聞くと、「平和はもちろん追求したいが、戦争の原因はNATOによる東方への軍事的な拡張のため」との見方も依然として強い。
特に、南アフリカ、ジンバブエ、アンゴラ、モザンビークなどは植民地支配や白人至上主義からの解放の途上で、ロシアから支援を受けた経緯がある。
その時にモスクワから恩恵を受けた政党がいまだに政権を保持していたりすると、あからさまなロシア批判はできない。
さらにアフリカ諸国がロシアを明白に批判できない理由がある。
それはロシアが世界有数の小麦生産国であり、アフリカ諸国の重要な食糧供給源になっていることだ。
何世紀にもわたり、多くのアフリカ諸国は欧米の植民地主義によって荒廃し、食糧不安は風土病と呼べるほどにまでなっていた。
プーチン大統領は6月3日、黒海に面した保養地ソチで、アフリカ連合の議長を務めるセネガルのサル大統領と会談している。
そこでプーチン氏は、「アフリカ諸国による植民地主義の戦いで、ロシアは常にアフリカの味方だった」と自画自賛してみせた。そしてこうも発言している。
「ロシアとアフリカ諸国との関係は新たな発展段階の途上にあり、ロシアはその関係を重視している」
「貿易額を眺めても、今年は年初からの数カ月間で34%も伸びた。人道的な関係を発展させもしている。今後は何でもするつもりだ」
ロシアのラブロフ外相もアフリカ諸国との関係強化を強調している。
「この困難な時代において、アフリカとの戦略的パートナーシップはロシア外交の優先事項になっている」
一方、こうしたロシアとアフリカ諸国の関係を、ゼレンスキー大統領は6月に行われたアフリカ連合での演説で、「ロシアはアフリカをウクライナ戦争の人質にしている」と糾弾した。
それを受けるように、セネガルのサル大統領はゼレンスキー氏の演説を称賛。
「アフリカは国際法のルールを遵守し、紛争の平和的解決を図り、貿易の自由を尊重することに尽力する」とゼレンスキー氏の主張に同意した。
単純な価値観でアフリカとロシア、さらに西側諸国との関係性は読み解けないが、少なくとも無差別でウクライナを爆撃するロシアの戦争の論理には「ノー」を突きつける必要があるはずだ。