2022年7月21日木曜日

異論の存在認めるのが民主主義(植草一秀氏)

 国民や野党議員から出ている「国葬反対」の声に対し、自民の茂木幹事長「国民から『国葬はいかがなものか』との指摘があるとは、私は認識していない」「野党の主張は聞かないとわからないが、国民の認識とはかなりずれているのではないか」などと反論しています。しかし国民の中に反対の声は多く、「私は認識していない」のであれば認識不足か情報不足でしょう。

 現実にネット上で
 <「国葬令」が廃止されたのは政教分離の観点からじゃないの。法的根拠もなく、理由
  も曖昧で「国葬」にしてはダメだろう>、
 <時の政権の勝手な思い付きで、「国葬」となれば、それこそ民主主義国家じゃない>、
 <旧民主党政権の鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦の3首相はどうなるの?もし、その時
  の政権が「国葬」って決めても岸田さんや茂木さんは何も言えないけど…>
 <認識がずれているのはあなただよ茂木幹事長>
などの声が無数に上がっています(日刊ゲンダイ)。
 植草一秀氏が「異論の存在認めるのが民主主義」という記事で、安倍晋三氏の国葬は、特定の一つの価値観、思想、哲学を、社会を構成する一人一人の人に強制することに通じ、これに反対するのは民主主義を断固として守るための戦いであることを明確に示しました。
 併せて日刊ゲンダイの記事:「自民党・茂木幹事長『国葬』への異論封殺で大炎上中! “安倍シンパ”へのスリ寄りも裏目」を紹介します。
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異論の存在認めるのが民主主義
               植草一秀の「知られざる真実」 2022年7月21日
国葬反対は民主主義を断固として守るための戦い。
日本には国葬を規定する法律が存在しない。かつて存在した国葬令は1947年末に失効した。
日本国憲法には次の条文が置かれている。
第20条 【信教の自由】
第1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
第2項 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
第3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

岸田文雄首相は7月14日の記者会見で、国葬を実施する方針を示した際、その理由として、
 1.憲政史上最長の通算8年8ヵ月にわたり首相の職責を担ったこと
 2.卓越したリーダーシップと実行力を示したこと
 3.国内外から哀悼、追悼の意が寄せられていること
を挙げた。
また、
「安倍元首相を追悼するとともに、わが国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く」ことが国葬を執り行う意義であると述べた。

安倍元首相が殺害された理由は民主主義への攻撃ではないと見られる。
山上徹也容疑者は母親が統一教会に入信し、そのために壮絶な経験に遭遇してきたと見られる。
このことから統一教会に対する憎しみが蓄積され、安倍晋三元首相が統一教会との深い関わりを有しているとの判断等から犯行に及んだと見られる。
その行為が正当化されるわけではないが、事件の全容は「民主主義への攻撃」とは程遠いと見られる。
逆に安倍晋三氏の祖父である岸信介氏の時代から岸氏が統一教会や関連団体である国際勝共連合などと深く関わりを有し、その強い関係性が安倍晋三氏の父である安倍晋太郎氏、そして、その子息である安倍晋三氏にまで連綿と継続してきたことは客観的に裏付けのある事実と言える。
その統一教会がさまざまな社会的問題を引き起こしてきたことも、これまでの訴訟事例から明らかにされており、多くの主権者は安倍氏一族と統一教会の関わり、ならびに自民党と統一教会との関わりについて、歴史的事実を明らかにする必要があると痛感している。

このような状況を踏まえたときに、安倍晋三氏の葬儀を国の儀式として執り行うことに強い異論が生じるのは当然のことだ。
岸田文雄氏が掲げる「民主主義を断固として守る」とは、どのようなことか。
民主主義を守る上で何よりも重要なことは、異なる価値観、思想、哲学の併存を認めることである。
多くの人は人の死に対して、死を悼む感情を有するだろう。
しかし、そうではない人も存在する。価値観、思想、哲学は多種多様である。

国家が民主主義を守ろうとするとき、何よりも重要なことは、特定の一つの価値観、思想、哲学を、社会を構成する一人一人の人に強制しないことだ。
岸田文雄氏が本当に民主主義を守る意思を有するなら、国葬を執り行わないことを決断することが順当である。
このことは、過去に存在した国葬がどのような意味を持ち、どのような思惑から執行されてきたかを考えても自明のこと。

国葬の歴史に詳しい中央大の宮間純一教授は、
「政府が関わって、『国家に特別な功績があった』とされる人を弔う葬儀はいずれも政治的な意図を持って行われてきた」と指摘する。https://bit.ly/3yOhlm3 

宮間教授は、
「国葬の始まりは、明治11年(1978年)に士族たちによって暗殺された大久保利通の国葬に準ずる葬儀。
当時は反政府勢力が国内に多くおり、盤石な政府ではなかった頃で、天皇の名の下に、国家を挙げて大久保という人物に対し哀悼の意を示すことで、反対派の動きを封じ込めるという政治的な目的があった。
国として一つのまとまりを作っていくために執り行われた。」
と指摘する。

多種多様な価値観、思想、哲学が存在するなかで、特定の価値観、思想、哲学を強要する側面を強く有する国葬執行を強行することが「民主主義に対する攻撃」そのものだ。
国葬の強行は安倍晋三氏の業績に対する激しい論争を巻き起こす発火点になる。
業績に対する評価について徹底的な論争を行うことは回避するべきことでないが、このこと自体が死を悼むことに逆行する点も見落とせない。
主権者がどのように受け止めるか。国家の分断が加速、拡大する可能性が極めて高い。

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自民党・茂木幹事長「国葬」への異論封殺で大炎上中! “安倍シンパ”へのスリ寄りも裏目
                         日刊ゲンダイ 2022/07/20
「国葬は極めてふさわしい、適切なあり方だ」「国民から『いかがなものか』との声が起こっているとは認識していない」──。
 自民党の茂木幹事長が19日こう発言し、炎上している。安倍元首相の国葬について、野党が「国民から懸念の声が上がっている」と閉会中審査での審議を求めたことに反論した格好だ。茂木氏は「(野党は)国民の声、認識とかなりずれているのではないか」とまで言い放った。
 この暴言に対してさっそくSNSでは批判が続出
 《国民も反対してるんですけど》
 《認識がずれているのは自民党の方では?》
といった声が上がったことは、日刊ゲンダイDIGITALが報じたばかり。さらに、茂木氏のツイッターにも
 《国葬には反対です》
 《国葬をすることについて、いかがなものか》
 《国葬反対というと国民とは認めてもらえないということでよろしいか?》
と、批判が殺到している。

 実際、安倍氏の国葬については、国民の意見は割れている。岸田首相が14日の会見で「『国葬儀』の形式で安倍元総理の葬儀を行う」と表明して以降、ツイッターでは〈国葬賛成〉と〈国葬反対〉の2つのタグがトレンド入りしたほどだ。とてもじゃないが、国民の圧倒的多数が賛成しているとは言えない状況である。
 国葬は全ての費用を国費でまかなう特別な儀式だ。戦後、実施されたのは1967年の吉田茂元首相の1例だけ。他10人の首相経験者の葬儀は、いずれも内閣や自民党などとの合同葬で、全額、国費でまかなうことはなかった。

踏み込んだ発言の狙いはミエミエ
 直近の2020年に行われた中曽根元首相の内閣・自民党合同葬では、開催費約1億9000万円のうち、公費負担が過去最高の9600万円となり、「無駄遣い」との批判を招いた。国葬となれば、国民負担が2億、3億と膨れ上がってもおかしくない。
 いったい経費はいくらなのか。内閣府に問い合わせたが、「担当者が席を外している」「担当者は電話中」「担当者は終日不在」と次々に説明を変遷させ、答えなかった
 血税を使う国葬に対して、国民が疑問を抱くのは当然だろう。なのに、茂木氏が嘘までついて、踏み込んだ発言をした理由はミエミエだ。
「保守層からは、凶弾に倒れた安倍元総理を英雄視する声が上がっています。茂木さんは『国民は国葬を求めている』とアピールすることで、保守層の支持を得ようとしたのでしょう。もちろん、“ポスト岸田”を念頭に置いているに違いありません。しかし、発言は完全に裏目に出てしまった。茂木さんは参院選中にも、野党が消費税減税を訴えると、『消費税減税をしたら年金を3割カットすることになる』と言い放ち、大炎上している。“得点稼ぎ”のための発言がことごとく反発を招いています」(永田町関係者)
 こんな男が“次の総理総裁候補”なんて……それこそいかがなものか、というものだ。