2022年7月14日木曜日

参院選出口調査 国民は改憲に“信認”与えず/民意は改憲を望んでいない

 参院選の結果、自民、公明、維新、国民などの改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2以上の議席を得たことをうけ、岸田首相は早期の改憲発議へ向けた取り組みを進めると表明しています。TVなどのメディアも、銃撃で亡くなった安倍元首相を悼む中で、憲法改正や軍備増強が彼の「悲願」であったとして、それらを達成することがあたかも供養になるかのような滅茶苦茶な論理を展開しています。恐るべき低劣さです。
 しんぶん赤旗が、参院選の出口調査やこの間の世論調査を見れば、多くの国民は改憲を求めておらず改憲への“信認”を与えたわけではないと述べています実際に時事通信の出口調査では「憲法改正」は47%で6位共同通信世論調査で「何を最も重視して投票するか」の質問に「憲法改正」と答えたのはわずか36%読売新聞の世論調査では、参院選でとくに重視したい政策や争点のうち「憲法改正」は最下位でした。
 これらの国民の声をねじ曲げて早期改憲へ突き進むことは許されません。
 
 また護憲の弁護士である澤藤統一郎氏は12日付のブログ「澤藤統一郎の憲法日記」に、参院選の選挙公報を精読した結果、改憲を公約していた候補者はごくごく少数で、例えば自民党の比例代表選挙公約には、自民党から立候補する33名の候補者「憲法改正」に触れているのはわずかに3名であり、また東京選挙区の例では自民以外の改憲派である公明・維新・国民の選挙公報には、憲法改正の4文字はないとして、この選挙結果をもって「憲法改正の機は熟した」とか、「民意は改憲を望んでいる」とか、甚だしきは「民意は改憲を叱咤激励している」というのはアンフェアフェイクも甚だしいと述べています
 しんぶん赤旗と澤藤統一郎の憲法日記の記事を紹介します。
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国民は改憲に“信認”与えず 参院選後 首相が推進表明も
                       しんぶん赤旗 2022年7月13日
 10日投開票の参院選で、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2以上の議席を得たことをうけ、岸田文雄首相は早期の改憲発議へ向けた取り組みを進めると表明しています。しかし、参院選の出口調査やこの間の世論調査を見れば、多くの国民は改憲を求めておらず、早期改憲への“信認”を与えたわけではありません
 岸田首相は参院選投開票の翌11日の記者会見で、「遊説中に卑劣な暴力により亡くなられた安倍元総理のこの国への思いや、自分たち(国民)が感じている危機感を正面から受け止めて…全力で仕事を進めよと国民のみなさんから叱咤(しった)激励をいただいた」などとして、「憲法改正に取り組む」と表明。さらに「憲法改正の議論をしっかり進めなければならない。具体的な内容について3分の2の賛成を結集しなければいけない。できる限り早く発議に至る取り組みを進めていく」と述べました。

世論は最下位も
 しかし、参院選で国民の多くは早期の改憲を求めて投票したわけではありません。
 時事通信が10日に実施した出口調査では、有権者が最も重視した政策は「景気・雇用対策」が30・2%、「年金・介護・医療」が15・7%、「子育て・少子化対策」が11・1%と続き、「憲法改正」は4・7%で6位でした。
 共同通信が8、9両日に行った電話世論調査でも、「何を最も重視して投票するか」の質問に「憲法改正」と答えたのはわずか3・6%。最も多かったのは「物価高対策・経済対策」で41・6%でした。読売新聞の世論調査(6月22、23両日実施)では、参院選でとくに重視したい政策や争点を複数回答で聞き、9項目中「憲法改正」は最下位でした。
 また、「朝日」が7月4、5両日に実施した世論調査では、岸田政権のもとでの改憲に「賛成」の36%を「反対」の38%が上回っています。

声をねじ曲げて
 3分の2の議席を得たことで“改憲が信認された”かのように、国民の声をねじ曲げて早期改憲へ突き進むことは許されません。









ご通行中の皆様、この選挙結果に表れた民意は本当に改憲を望んでいるのでしょうか。
                   澤藤統一郎の憲法日記 2022年7月12日
 本郷通りの皆様、春日通りの皆様、そしてご通行中の皆様。こちらは「本郷・湯島9条の会」です。少しの間、9条と平和の訴えに、耳をお貸しください。
 参院選の開票結果が出ました。厳しいものと受けとめざるを得ません。
 この選挙を改憲勢力と護憲勢力の対決とみれば、明らかに改憲勢力の議席が増え、護憲勢力が減りました。改憲勢力とは、自民・公明・維新・国民の4党のこと。護憲勢力とは、立憲・共産・社民・れいわの4党
 平和憲法を守り抜く立場からは安閑としていられない、危うい状況と言わねばなりません。既に、岸田文生は、首相としてか総裁としてかは不明確ながら、「できるだけ早期に改憲発議」などとはしゃいで見せています。
 しかし皆さん、本当に、この選挙が憲法改正の是非を問い、民意が憲法改正を容認するものだったのでしょうか。その実感がありますか。とりわけ東京の有権者には、選挙結果が改憲に結びつくものとの認識は希薄なのではないでしょうか。
 東京選挙区の6人の当選者の内訳は、自民・自民・公明・立憲・共産・れいわです。一見、改憲派が3人、護憲派が3人と五分五分のように見えます。しかし、都民が改憲護憲で半々に割れたということには、強い違和感があります。

 候補者が正式に有権者に公約を表明した選挙公報を、あらためてよくお読みください。自民党の生稲候補、この人の公約のキーワードは「ガン」と「女性」。闘病の女性に寄り添うものです。この訴えが有権者の心情を捕らえたことは理解できますが、この人の公約には憲法も国防もまったく出て来ません朝日という候補も同じです。この人、「だれもが輝ける社会の実現」のために「社会保障の充実」を訴えていますが、改憲の訴えも防衛予算増もない。「国境警備の機能強化」の一言だけはありますが、これを自衛隊を憲法に書き込めとの主張とはとうてい読めません。公明の竹谷候補も、真面目に働く人のための経済対策を訴えて、憲法改正も国防充実もまったく触れていません
 日本維新という危険な右翼政党の海老沢候補は、6っつの重点政策を掲げ、その4番目に「防衛費増額と憲法改正」を掲げました。そのためであるかかどうかは定かではありませんが、この候補者は落選しました。

 いま、自・公・維・国を一括りに、改憲政党と言われますがけっして同じ色合いではない。そして、その全改憲政党が、選挙民に対して改憲色を押し出すことは極力避けてきたのが実際のところです。
 典型的なのが自民の二候補、芸能人であったりアスリートであったことの知名度と好感度で議席を獲得しましたが、けっして憲法改正という政策で有権者の支持を取り付けたわけではありません公明党に至っては、改憲派と言われることを迷惑としている感さえあります国民は、典型的な「よ党」と「や党」の真ん中の「ゆ党」という存在ですが、けっして積極的に改憲政党を自任している訳ではありません
 各党の比例代表・選挙公報もよく読んでみました。自民党はまず岸田総裁が総論を語っています。「決断と実行。暮らしを守る」という大見出し。何を決断するやら実行するのやら。けっして「断固改憲」と言っているわけではありません。むしろ、「様々な声に耳を傾ける」として、けっして護憲派の声にも、防衛予算増額反対の立場にも理解があるような語り口
 
 この自民党の比例代表選挙公約には、自民党から立候補する33名の候補者全員のコメントが掲載されていますが、この中で「憲法改正」に触れているのはわずかに3名だけ。右翼ないしは極右と言われる候補者です。ほかの30人は憲法改正にまったく触れていません。
 実は、自民党ですら、選挙民に改憲を呼びかけることには及び腰なのです。自信をもって改憲を訴える構えはありません。さらに、自民以外の改憲派である、公明・維新・国民の選挙公報には、憲法改正の4文字はありません。
 にもかかわらず、今になって「憲法改正の機は熟した」とか、「民意は改憲を望んでいる」とか、甚だしきは「民意は改憲を叱咤激励している」というのはアンフェアだし、フェイクも甚だしい。
 芸能活動やらスポーツやらの実績を連ねた候補者で票を取り、その票を重ねて議席を増やし、これが3分の2に達したから改憲発議だという。まるで、サクラ問題だけで国会で118回もウソを並べた元首相みたいな姿勢と言わなければなりません。

 東京選挙区で当選した、立憲・共産・れいわの3候補は、改憲発議に反対の立場です。とりわけ共産候補の弁護士は、公報でも「憲法こそ希望」と言っています。平和憲法こそ、平和の礎です。平和を望む立場からは、ぜひ改憲の阻止を。憲法9条を護れという声をご一緒にあげてください。
 私たちは、国会の審議を見守るとともに、至るところで憲法を守れという世論を大きくしていく覚悟です。皆様のご協力をお願いいたします。これをもって、「本郷・湯島9条の会」からの訴えを終わります。