2022年7月20日水曜日

20- 元首相銃殺事件で批判を封じる大メディア/旧統一教会とカネを授受した政治家

 元外交官の孫崎享氏が、日刊ゲンダイ「日本外交と政治の正体」のコラムに「安倍元首相銃殺事件で批判を封じる大手メディアの異常さ」という記事を出しました。
 日本の大手紙が重大な政治的記事で横一列の同じ見出しで報じる異常さを取り上げたものです。なんとも大メディアの行いは異常というしかありません。記事はまた立憲民主党代表の発言も取り上げていますが、これもまたなんとも情けない心根の持ち主のようです。
 短い記事ですが印象深いものです。
 併せて日刊ゲンダイの記事、旧統一教会とカネのやりとり政治家15人の名前 下村元文科相は献金受け取り、会費も支出」を紹介します。
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日本外交と政治の正体 孫崎享
安倍元首相銃殺事件で批判を封じる大手メディアの異常さ
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 安倍晋三元首相が8日、銃撃され死亡した。この事件は今日の日本社会の特異性を示している。主要メディアの報道は①哀悼の意を強く出すこと②安倍への賛美はいいが批判をしないこと③メディア間で一体性を持つこと──である。
 大手5紙(読売、朝日、毎日、産経、日経)は、9日付の1面で「安倍元首相 撃たれ死亡」と全く同じ見出しで報じている。一つの事件で同じ見出しが出るのは異常な現象だ。
 これだけではない。8日夜のデジタルなどの報道で、朝日、産経、共同、日経、読売は「政治信条への恨みではない」と同じ見出しで報じている。産経は「政治信条への恨みではない」と報じるとともに「県警は認否を明らかにしていない」としている。
 おかしいではないか。「認否を明らかにしない」の状況下、なぜ容疑者が即、「政治信条への恨みではない」だけ述べるのか。政権を忖度する警察誘導の報道だろう
 日経新聞は「安保関連法・アベノミクスで功績」と前向き評価をしている。こうした報道に、今は哀悼だけを述べる時で、評価をするべきではないという声はない。

 では、批判した時はどうなるか。立憲民主党の小沢一郎衆院議員が、岩手県で行った参院選の応援演説の際、安倍元首相銃撃事件について、こう話したという。
大変残念だ。お悔やみ申し上げる」「安倍さんの個人的な批判をするものではないが、自民党の長期政権が社会をゆがめ、格差を拡大し、国民の政治不信を招いた。その政治不信の中から、過激な者が銃撃暗殺に走った」「日本の戦前の歴史も、世界の歴史でも、社会が不安定になると、血なまぐさい事件が必ず起きる。自民党の長期政権が招いた事件だと言わざるを得ない
 これに対して、自民、公明が批判するならともかく、党首である泉健太代表が「元総理の命が失われ、背景や全容はいまだ不明です。その状況で、事件と長期政権など何かを不用意に関連付けるべきではない。党としても注意いたしました」とツイッターに投稿した。
「自民党の長期政権が社会をゆがめ、格差を拡大し、国民の政治不信を招いた」のも、容疑者の生活困窮が犯罪に結びついたのも事実だ。
 自民と対決を避ける、その姿勢では選挙で負けるのは当然だ。

孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。


旧統一教会とカネのやりとり「政治家15人」の名前 下村元文科相は献金受け取り、会費も支出
                          日刊ゲンダイ 2022/07/19
 安倍元首相の暗殺事件を機に、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党の“親密”関係がクローズアップされている。
 日刊ゲンダイが18日付で、ジャーナリスト・鈴木エイト氏の調査に基づく、教団と関係のある国会議員リストを報じたところ、話題沸騰。改めて100人超のリストから、過去に教団側とカネのやりとりがあった議員をピックアップする
 旧統一教会に関係する個人や団体から、関連政治団体が献金を受け取っていた国会議員は<表>の計5人。特に下村博文元文科相の場合、代表を務める政党支部が「授受」の双方に関わっていた。12年には旧統一教会の関連団体「世界女性平和連合」に会費として1万5000円を支出。逆に16年は教団の機関紙を発行する「世界日報社」から6万円の献金を受け取った。下村氏本人は13、14年に世界日報のインタビュー記事に登場していた。



 自民党の閣僚級では萩生田光一経産相、井上信治前万博担当相、加藤勝信前官房長官が、ほかにも小田原潔氏、大岡敏孝氏、高木啓氏、高鳥修一氏、奥野信亮氏の各衆院議員と上野通子氏参院議員が、それぞれ関連する政治団体から「会費」などの名目で旧統一協会の関連団体に1万~5万円を支出。立憲民主党の松木謙公衆院議員の関連政治団体も13年に世界女性平和連合に会費1万5000円を支払っていた。
 国会議員と旧統一教会とのカネのやりとりに、どんな意図があるのか。鈴木エイト氏に聞いた。
「金額の多寡はそこまで大きくないかもしれませんが、統一教会としては、多くの国会議員と金銭上の関係があることのメリットは大きい。信者が献金ノルマや教団の社会的な評判に疑問を抱いたとしても『国会議員の先生とつながりがあるのだから信用できる』と思わせることができます。国会議員側は、会費名目などのお金を支払っておくことで団体への信用を与える見返りに選挙の際に運動員を派遣してもらえる可能性もあります。資金のやりとりは双方共にメリットがあるのです」
 政権を担う自民党が反社会的な特定の宗教団体と“ウィンウィン”の関係なら、世も末だ。