2022年7月4日月曜日

「サハリン2」接収でどうなる天然ガス供給

 29~30日にマドリードで開かれたNATO首脳会議ではウクライナ戦争の終結を目指すという論調は皆無で、逆に向こう10年間の行動指針として、ロシアを安全保障の「最大で直接的な脅威」と位置付け、即応部隊を現在の4万人から30万人に増強するなど、改めてロシアに徹底的に対抗する方針を掲げました。もともとNATOを創設した主旨はロシアを敵国視して包囲することだったのでこれは当然の成り行きでした。

 問題は、日本の首相として初めてNATO首脳会議に出席した岸田首相が、堂々とクワッドとNATOが軍事連携を強化すること、AP4がNATO理事会会合に定期的に参加すること、自衛官をNATO本部に派遣し相互の軍事演習への参加を拡充すること などを謳い上げたことでした。
 岸田氏には、いわゆる西側(欧米側)がいまや人口的にもGDP的にも少数派であるという認識はなく(西側が世界の主流であることを疑わず)、ロシアが忌避して止まないNATOにノコノコ出掛けてロシア敵視の方針に全面的に賛成し、NATOとの連携強化を熱望したのでした
 それに対してプーチン大統領30日、「サハリン2」の資産ロシア側が新たに設立する会社への移管を定めた大統領令に署名しました。そのことの正否は兎も角として、プーチンが岸田首相に対して怒りを持ったであろうことは言うまでもありません。もしも岸田氏がロシアのそうした対応を全く想定していなかったのであればあまりに子供じみています。
 いまのところロシアに代わる天然ガスの輸入先は勿論あるのですが、スポット市場での調達に追い込まれれば仕入れコストが倍増する可能性があるということです。
 日刊ゲンダイが「サハリン2接収でどうなる天然ガス供給 ~ 」という記事を出しました。
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「サハリン2」接収でどうなる天然ガス供給…ロシアの報復が岸田首相の“お膝元”直撃
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 岸田首相がNATO首脳会議に日本の首相として初参加。対ロシア制裁の強化を確認した直後、プーチン大統領から強烈な“報復措置”だ。
 日本企業も出資している液化天然ガス(LNG)開発事業について、プーチン大統領は先月30日、ロシア側が新たに設立する会社への移管を定めた大統領令に署名。同事業に参加中の三井物産や三菱商事が今後、撤退を迫られる可能性が浮上している。
 岸田政権はサハリン2を「極めて重要なプロジェクト」と位置付け、ロシアのウクライナ侵攻後も一貫して「撤退しない」と繰り返してきた。それが、いきなりプーチン大統領にハシゴを外された格好だ。NATO首脳会議でロシアを「最大かつ直接の脅威」と指摘した直後のタイミングだけに、プーチン大統領を完全に「敵」とみなした岸田政権への「報復」である。
 問題は、日本企業がサハリン2から除外されるかどうかだけではない。日本のLNG輸入の9%を占めるロシア産の供給が止まれば、値上げ続きの電気・ガス料金が、さらに高騰する恐れがある。岸田首相は「すぐに液化天然ガスが止まるものではない」と火消しに躍起だが、供給停止となれば、その悪影響をモロに受けるのが“総理のお膝元”だ。

広島ガスは年間輸入量の5割を「サハリン2」頼り
 岸田首相の選挙区・広島市に本社を置く「広島ガス」は、年間輸入量のうち約5割に当たる20万トンをサハリン2から仕入れている。万が一の場合、まずは他の契約先から供給量を増やすなどの対応を取るが、日々の価格変動の影響を受けるスポット市場での調達に追い込まれると、仕入れコストが倍増する可能性があるという。
 今年3月の参院経済産業委員会で、野党議員が「(広島ガスが)サハリン2からの調達ができなくなってしまった場合、(広島の)県民生活や県経済に大きな影響が出るのではないか」と懸念を示していた通り、供給停止のツケは消費者に回ってきかねない。すでに電力大手10社のうち8社が、燃料費の上昇分を価格転嫁できる料金制度の上限に到達。広島に本社を置く中国電力も、上限に達したうちの1社だ。
「生活必需品や光熱費の高騰は今まさに起こっている問題。前々から業界団体や県民から物価高への不安が出ていたのに、岸田首相は何ら対応できていない。サハリン2をめぐっても『対応を考える』と繰り返していますが、本当に対策を講じているのか疑問です」(広島県政関係者)
 これが「外交の岸田」の軍拡外遊三昧の“成果”だとしたら、そのツケを払う地元有権者は、浮かばれない。