2022年7月25日月曜日

「勝共連合」改憲案 自民と うり二つ(しんぶん赤旗)

 21年12月に、1年半後に創設される「こども庁」の名称が突如として「こども家庭庁」に変更されました。手厚く保護されるべき「こども」を担当する省庁が出来ることに誰しも異存はありませんが、そこになぜ「家庭」の文言が追加されたのでしょうか。いうまでもなく家庭の安寧は「願われること」であるのですが、安易に政府が介入していいものではなく、基本的人権に関わるものなので介入すべきではありません。

 ところが同年12月21日、「国際勝共連合」の公式HPに、機関紙『世界思想』1月号を引用する形で「心有る議員・有識者の尽力によって、新しく作る組織の名称が『こども庁』から『こども家庭庁』になりました。」と、そのことを高く評価する文章が発表されました。要するにこの名称は旧統一教会の希望であり、それが自民党議員らの尽力によって採用されたということです(きっこ氏)。
 これは自民党と勝共連合=統一教会の親密な関係乃至は勝共連合が自民党に強い影響力を持っていることを示すもので、この関係は改憲における日本会議と自民党の関係に似ています。
 ところがしんぶん赤旗によると自民党の改憲案が勝共連合の改憲案と瓜二つであることが分かりました。そもそも自民党改憲案の基本的な骨格は12年4月27日に決定された「日本国憲法改正草案」ですが、それは自民党が在野中に安倍晋三氏が中心になってまとめたもので、その24条にも「家族は、互いに助け合わなければならない」という文言が付け加えられていました。 ⇒(12.5.31)自民党の憲法改正草案は非常に反動的
 しんぶん赤旗が、「勝共連合が改憲の優先課題として掲げる (1)緊急事態条項の創設 (2)家族条項の創設 (3)9条への自衛隊明記 ―は、いずれも自民党の改憲案と全く同じあるという記事を出しました
 併せて同紙の記事「旧統一協会の名称変更 下村文科相(当時)下の認証 文化庁『事前に説明』」を紹介します。
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「勝共連合」改憲案 自民とうり二つ
                       しんぶん赤旗 2022年7月24日
 旧統一協会と一体の反共謀略団体「国際勝共連合」の幹部が、独自の憲法改正案をユーチューブ上で解説しています。動画が公表されたのは2017年4月ですが、改めて注目を集めています。
 動画には、勝共連合の渡辺芳雄副会長が出演。中国の覇権主義的行動や北朝鮮の核開発や威嚇的行動、大規模な地震や原発事故、同性婚合法化の流れなど、国内外の変化をあげ、「憲法の改正がどうしても必要だ」と主張しました。
 渡辺氏は「優先順位」として、最初に「緊急事態条項」の新設に触れました。大規模な災害などを想定し、「政府の権限を強化して、所有権等を一時的に制限したり、食料や燃料の価格をしっかり規制して、守れる命を守る」と主張しています。
 また、「家族は社会の自然かつ基礎的単位」とし、「家族保護の文言」の必要性を指摘。「家族という基本的な単位が最も社会国家に必要だ」とし、「これがなければ、自然かつ基礎単位になり得ない同性婚が広がっていく」と、海外で広がる同性婚合法化の流れに危機感を示しています。
 憲法9条についても、「なぜ自衛隊が存在していいのか、根拠となる言葉が一つもない。これは現実と憲法の文言との完璧な乖離(かいり)だ」とし、「自衛軍」「国防軍」などの明記を主張しました。

 勝共連合が改憲の優先課題として掲げる (1)緊急事態条項の創設 (2)家族条項の創設 (3)9条への自衛隊明記 ―は、いずれも自民党の改憲案と全く同じです。勝共連合が、日本会議勢力と並んで、自民党の改憲路線を強く後押ししている実態が浮かび上がります。
緊急事態条項
国会の権限を内閣独占
 緊急事態条項については、勝共連合系雑誌『世界思想』2021年5月号が特集し、「緊急事態条項とは、戦争や災害などの国家的緊急事態に際して、政府が平常の統治秩序では対応できないと判断した場合に、緊急事態宣言を発令して憲法秩序を一時停止し、非常措置をとる規定」と明記しています。
 「戦争」を想定し、その場合に「憲法秩序を一時停止」=人権の停止、議会制民主主義の停止としており、まさに“戒厳令”です
 自民党の改憲4項目(18年)では「緊急事態」の例示として「大地震その他の異常かつ大規模な災害」とされ、「戦争」=軍事的緊急事態は明示されていません。「その他の異常かつ大規模な災害」に含まれる仕掛けになっており、これと比べても、非常に露骨な戦時の権力集中です。
 これに対し12年の自民党改憲草案では、「緊急事態」の例示に「わが国に対する外部からの武力攻撃」が明記され、こうした緊急事態に「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定」できるとされ、国会の権限を内閣が独占する民主主義否定の仕組みです。
家族条項
個人より公益 国家主義
 家族条項については、「家族は社会の自然かつ基礎的単位」とする12年自民党改憲草案の内容をそのまま主張しています。
 『世界思想』15年5月号では「憲法を改正し家族条項を新設することはわが国の喫緊の課題である。このままでは、行き過ぎた個人の人権が拡散し家庭と社会、さらには国が内から崩されていく」などとしています。
 ここで「行き過ぎた個人の人権」などと攻撃しているのが、同性愛・同性婚やLGBTQの主張です。徹底的に同性婚に反対し、性自認・性的指向の多様性を否定しています。
 その背景をめぐり『世界思想』21年5月号では「あらゆる人間関係のうち、男女の結合を婚姻として制度化している理由は、それが次世代を産み育てる公益性を有しているからだ」と強調。自民党の杉田水脈議員が「LGBTは生産性がない」と発言したのと全く同じ“思想”を背景に、同性婚を否定しています。個人より公益、国家を重視する国家主義がみえます。
9条改憲
改憲動機に「強い国家」
 9条をめぐっては『世界思想』15年5月号で「もとより軍の存在を認めない9条が諸悪の根源だ。他国なら当たり前の軍法会議を設けないなど国内の法整備もできないでいる」「憲法に国防義務を明示し、しかるべき軍事力を保持することを明示する」と強調しています。
 これは12年自民党改憲草案が「日本国民は国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」と国民の国防義務を定め、9条2項の戦力不保持規定を全面削除し、「国防軍を保持する」と明記しているのと同じです。
 『世界思想』20年5月号では「安倍・自民党が目指すのは自衛隊の根拠規定を憲法に明記することだ」とし、「目指す改憲が実現し、憲法上、『戦力』と『実力』が両立することで自衛隊の位置づけは整理される」としています。
 他方、「ただし、課題は残る」として、世界有数の装備を持つ自衛隊は「戦力」にあたらないのかとの指摘や、自衛権の範囲をめぐる論争も決着しないなどの問題が残るとしています。自民党が現在主張する「9条への自衛隊明記案」に同調しつつ、より“根本的”な改憲を主張しているのです。
 前出のビデオで勝共連合の渡辺芳雄副会長は、戦後一度も憲法が改正されていない理由について、「左翼勢力の世論誘導」だと指摘。「現憲法は国家としての基礎的内容を備えていない。弱い国家しかつくれない。これが左翼にとって極めて有利だ。この憲法をうまく利用して、革命の基盤をつくり出そうとしている。憲法改正に左翼が全員反対するのは、党利党略に基づくものだ」などと主張しています。
 改憲の動機に、「強い国家」をつくり、革新勢力を抑圧するという特異な思想がにじみます            (中祖寅一、目黒健太、森糸信)

国際勝共連合 国際勝共連合は、旧統一協会の教組・文鮮明が提唱し、1968年に韓国と日本で創設した反共謀略団体。初代会長は統一協会会長を務めていた久保木修己氏。名誉会長は笹川良一氏です。岸信介元首相も設立の発起人で、「自主憲法制定」運動を通じて連携していました。「勝共」とは「反共では生ぬるい」というスローガンで、「滅共」すなわち共産主義思想の存在そのものを許さないという極端な主張にいきつきます。
 霊感商法などの詐欺的集金活動や、集団結婚式などで社会的批判をあびた旧統一協会と一体で、学園や草の根で日本共産党や革新自治体への攻撃に狂奔。自民党議員などの選挙応援を買ってでて、手段を選ばない反共謀略活動を展開してきました。
 勝共連合は1990年3月に「勝共推進議員」が150人になったと発表し、その名簿を機関紙「思想新聞」に掲載。そこには安倍晋太郎、高村正彦、麻生太郎らの名前が載っています。第2次安倍政権下の2016年には、改称した教団主導の「国会議員連合」創設式に約100人の議員と秘書が出席するなど、政界とのつながりを強めていました。


徹底追及 統一協会
旧統一協会の名称変更 下村文科相(当時)下の認証 文化庁「事前に説明」
                       しんぶん赤旗 2022年7月24日
前川元事務次官「関知せずはおかしい」
 霊感商法など反社会的活動が問題になってきた旧統一協会が2015年に正式名称を「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」に変更した問題で、文化庁宗務課が下村博文・文部科学相(当時)に事前説明をしていたことが23日までに、分かりました。(統一協会取材班)
 文科省の外局である文化庁は「教義など団体の実体に変化がないと名前は変えられない」と申請を拒否してきました。安倍晋三政権下の15年になって急に態度を変え、名称変更を認証しました。
 当時文科相だった自民党の下村博文衆院議員は今月11日にメディアの質問に答える形で名称変更の「最終決裁は、当時の(文化庁)文化部長」とツイッターに投稿していました。
 これに対して立憲民主党の有田芳生参院議員が名称変更した15年に文化庁宗務課に確認したところ「大臣に事前に説明いたしました」との回答があったことを公表。この内容について日本共産党の宮本徹衆院議員が今月22日に宗務課に確認したところ、下村氏へ事前説明をしたことを認めました。
 宗務課長時代に名称変更を拒否した前川喜平元文科事務次官は、下村氏への事前説明について「通常、事前に文科相へ説明するということは、認証するかどうか指示をあおぎにいくことだ。事前に聞いておいて何も関知していないというのはおかしい」と指摘します。
 下村氏が代表の自民党東京都第11選挙区支部は、旧統一協会の開祖、文鮮明の提唱で創立された世界日報社から16年に6万円の献金を受けていました。
 下村氏に認証を指示したかどうか質問しましたが、期限までに回答はありませんでした。